新卒採用のグループ選考で使えるビジネスゲーム7選 ~面接やSPIでは見抜けない“真の力”を見極める~

新卒採用のグループ選考で使えるビジネスゲーム7選   ~面接やSPIでは見抜けない“真の力”を見極める~

新卒採用のグループ選考で使えるビジネスゲーム7選 ~面接やSPIでは見抜けない“真の力”を見極める~

近年の新卒採用市場では、「学歴」や「筆記試験の点数」だけでは学生の“本質的な力”を測ることができないという課題が、多くの企業で認識されつつあります。特に、VUCA時代と呼ばれる変化の激しい現代においては、与えられた課題に対応するだけでなく、「自ら課題を発見し、他者と協力して解決に向かう力」が、社会人に求められる最重要スキルになってきました。

しかしながら、従来の面接やグループディスカッション、SPIのような適性検査だけでは、以下のような本質的な力は可視化しづらいというのが現実です。

•初対面のメンバーとどのように協力できるのか?
•リーダーシップとフォロワーシップのバランス感覚はあるか?
•複数の情報を整理・統合して論理的に結論を導けるか?
•プレッシャー下で感情的にならず冷静に判断できるか?

■ 従来の選考手法が抱える限界
たとえば、面接では“準備された答え”が評価されやすく、学生の「本当の行動特性」や「協働スタイル」は見えづらい傾向にあります。SPIなどの筆記試験も、あくまで“座学的な地頭力”を測るツールにすぎず、実務における“チームでのふるまい”や“柔軟な対応力”は測定できません。

一方で、グループディスカッションは協働性を観察できる貴重な手段ですが、「議論がうまい学生」や「発言の多い学生」が有利になる傾向があり、内向的な学生や深く考えてから発言するタイプの学生が評価されにくいという声も少なくありません。

■ ビジネスゲームが注目される理由
そうした中で、新たな選考手段として注目されているのが「ビジネスゲーム」です。ビジネスゲームとは、特定のルールや目標が設定された“模擬的なビジネス状況”の中で、参加者がチームで戦略を考え、行動し、結果を出す形式の体験型ワークです。

たとえば、「仮想の商社になって原材料を仕入れ、製品を作って販売する」といったシナリオや、「宇宙空間での遭難を想定して生き残るためのアイテムを順位づけする」といった設定の中で、参加者は自らの知恵とチーム力を駆使して課題に挑みます。

このようなゲームの中では、以下のような力が自然に現れます。

•状況判断力(瞬時に考え、最適な判断をする力)
•コミュニケーション能力(自分の考えを他者に伝える力、他者の話を理解する力)
•チームワーク(他者と役割分担し、協力して目的を達成する力)
•主体性(指示を待たず、能動的に動く力)
•論理的思考(意見の根拠を明確に説明できる力)

■ “地頭”や“本音”が見える選考へ
ビジネスゲームの最大の特徴は、「素の行動がそのまま出る」点にあります。学生たちはゲームに夢中になる中で、つい普段の思考やコミュニケーションのクセを露呈してしまいます。面接では話さないような口調や行動が出ることもあり、評価者から見ると“生の人間力”を見極める絶好の機会となるのです。

また、「発言量」だけで評価されがちなグループディスカッションと異なり、ビジネスゲームでは「観察力」「分析力」「サポート役としての貢献」など、さまざまな角度からの評価が可能です。これにより、評価の多様性・公平性も高まります。

以上の理由からもビジネスゲームを採用選考で取り入れる会社が増えてきているのです。そこで、本コラムでは新卒採用のグループ選考で使えるビジネスゲームをご紹介していきたいと思います。


ビジネスゲームを選考に導入するメリット


企業が新卒採用の選考にビジネスゲームを導入する理由は、単なる「目新しさ」や「盛り上がるから」ではありません。むしろ、“実務に直結する力”を選考時点で把握し、入社後のミスマッチを防ぐという明確な意図があります。本章では、ビジネスゲームが持つ選考手法としてのメリットを4つの観点から解説します。

1. 行動特性とチーム内での役割が「見える化」される

多くの企業が重視するのは、「知識やスキルそのもの」よりも「実際の職場でどう動くか」です。ビジネスゲームは、参加者がある課題に対してどう動き、どう関わり、どのように価値を生むかという「プロセス」に焦点が当たるため、学生の“行動特性”を見える化するのに最適です。

たとえば、

•積極的に全体をまとめるリーダータイプ
•他者の意見を整理し、補足するフォロワータイプ
•観察力や分析力に優れた参謀タイプ
•沈黙しがちだが要所で鋭い視点を投げかけるブレーンタイプ

といったように、ゲームの中では自然と各自の立ち回りが表面化します。評価者は“役職や見た目”に惑わされることなく、本質的な役割適性を観察できるのです。

2. 本音や素の姿が出やすく、面接では見えない部分が評価可能

面接の場では、「緊張」や「模範解答意識」などが作用し、学生が本来の姿を見せないことが少なくありません。特に、「聞かれたことに答える」形式では、準備された内容に留まりがちで、反射的な思考力や感情の動きまでは見えてこないのが実情です。

ビジネスゲームでは、制限時間や競争・協働のプレッシャーの中でタスクに取り組むため、意図せず“素の反応”が出やすくなります。

•予想外のトラブルにどう対応するか
•自分の主張が通らなかったときの態度
•他者のアイデアにどうリアクションするか
•自分のミスをどう認め、どうリカバリーするか

こうした“リアルな人間性”が露出するからこそ、選考担当者は「この人と働きたいかどうか」をより直感的かつ合理的に判断できます。

3. グループワークとの違い:目的・ルール・達成構造の明確さ

ビジネスゲームと混同されやすいのが、従来から行われている「グループディスカッション(GD)」です。確かにどちらも“チームで議論し、答えを出す”形式には違いありませんが、明確な違いがいくつか存在します。

                      

項目

グループディスカッション

ビジネスゲーム

目的の明確さあいまい(賛否の討論など)明確(ゲームクリアや得点)
ルール自由度が高く抽象的明文化されたルールあり
評価のしやすさ主観的(印象評価)客観的(行動・結果で判断)
楽しさ・熱中度 やや緊張感が強いゲーム性が高く熱中しやすい

こうした構造的な違いがあるからこそ、ビジネスゲームは「選考されている」という意識が緩和され、学生がリラックスして取り組みやすくなるメリットもあります。これは、学生側の“企業への好感度”にもつながりやすく、結果的に選考体験の質も高まります。

4. 評価の客観性が高まる(観察・採点シートの活用)

選考の現場では、いかに公平かつ納得感のある評価を行うかが常に課題です。その点、ビジネスゲームでは観察者が評価項目に基づいて行動を記録するスタイルが取られるため、評価の“軸”がブレにくくなりま。

たとえば、以下のような評価シートを使用することで、

•主体性(指示を待たずに動いた回数)
•協調性(他者に共感・同調した発言回数)
•論理性(理由や根拠を添えた発言の有無)
•全体貢献(議論の流れを調整した働き)

など、実際の行動に基づいた「定量的」な評価が可能になります。また、複数の評価者でクロスチェックを行うことで、バイアスの排除や再現性の高い判断も実現できます。

ビジネスゲームは、学生の潜在的な能力や人間性を引き出す“装置”であり、企業にとってはミスマッチのない採用を実現する“選考手段”です。評価の精度を高め、学生との相互理解も深めることができるこのツールは、まさに「これからの時代の選考手法」と言えるでしょう。

選考にビジネスゲームを取り入れる際のポイント


ビジネスゲームを選考に導入する際には、「ゲームの面白さ」や「目新しさ」だけに頼ってはいけません。採用活動の目的はあくまでも“自社にフィットする人材”の見極めであり、ビジネスゲームはそのための「観察ツール」に過ぎません。その力を最大限に引き出すには、事前の設計や評価体制の整備が欠かせません。

ここでは、導入時に押さえておきたい4つの実務的なポイントを紹介します。

1. 評価項目の明確化が成功のカギ


ビジネスゲームの効果を最大限に活かすには、「どの能力を測りたいのか?」を明確にする必要があります。

たとえば…

•自社の風土に合う“協調性”を見たいのか •将来的にリーダーシップを発揮する“統率力”を重視するのか •論理的思考力や分析力などの“地頭”を見たいのか

これらの目的によって、選ぶべきゲームも評価の観点も変わります。たとえば「判断力と冷静さ」を見るなら“雪山遭難シミュレーション”、“他者への共感力”を重視するなら“クレーム対応ゲーム”が有効です。

                   

職種

評価したい能力

ゲーム例

営業職傾聴力、交渉力、コミュニケーション力商談の達人、The商社、NASAゲーム
技術職論理的思考、問題解決力7人の人事異動当てゲーム、サッカーのポジション当てゲーム
総合職リーダーシップ、PDCA、コンセンサス鉄塔ゲーム、雪山遭難シミュレーションゲーム

※上記をベースに、評価シートもカスタマイズするとさらに効果的です。

2. 所要時間と難易度のバランスに注意


ビジネスゲームの選定において、時間と難易度のバランスも非常に重要です。学生は初めて体験することが多いため、「ルールが難しすぎて理解できない」「プレイ時間が長すぎて疲れてしまう」といったトラブルが発生しやすいのです。

①理想の所要時間
•30〜60分程度で完結できるものがベスト
•1回の選考で2〜3ゲームを組み合わせる場合もこの枠内で調整

②ルールの難易度
•「考え方は奥深いが、ルールはシンプル」が理想
•初見の学生でも10分程度の説明で理解できる内容に設計

※事前に社内で“模擬プレイ”を行い、理解度や所要時間を確認しておくことを推奨します。

3. 運営側の観察・フィードバック体制を整える


どれだけ優れたゲームであっても、観察と評価の精度が低ければ意味がありません。以下のような運営体制を整えることで、ビジネスゲームの導入効果を最大化できます。

①進行役(ファシリテーター)の役割
•ルール説明、時間管理、場の空気づくりを担う
•中立的な立場で進行し、学生の力を引き出すことに注力

②観察者(評価者)の配置
•各チームに1人以上配置
•予め「評価ポイントリスト」や「行動観察シート」を共有しておく

③フィードバックタイムの確保
•ゲーム終了後に学生に簡単な振り返りをしてもらう
•「自分の強み・改善点」を言語化させることで、自己理解と納得感が高まる

例:「今回のゲームで、どんな場面でチームに貢献できたと感じましたか?」
このように、選考の中に“学び”の要素を組み込むことで、学生からの評価も向上します。

4. 応募者の納得感・満足感も向上する設計に


優れた採用活動とは、企業が学生を評価するだけでなく、「学生が企業を評価する機会」でもあります。その意味で、ビジネスゲーム型の選考は「楽しかった」「自然体でいられた」「会社の雰囲気が伝わった」といったポジティブな印象を学生に与えることができます。

実際に導入企業のアンケート結果では、

•「話すのが苦手でも、行動でアピールできたのが良かった」
•「ゲーム中のやり取りから、社員の雰囲気がわかって安心した」
•「自分の特性を知るきっかけになった」

といった声が多く寄せられています。

また、ゲーム型選考は他社との差別化にもなり、「この会社は自分をよく見てくれる」と学生に感じさせることで、内定辞退率の低下や入社意欲の向上にもつながります。

まとめ:設計・運営・評価の3点セットが成功のカギ

ビジネスゲームの導入においては、

①何を見たいのか(評価設計)
②どう進めるのか(運営体制)
③どう判断するのか(評価体制)

の3点を明確にし、ゲームの面白さだけに頼らない“設計力”が求められます。学生の力を最大限に引き出し、自社とのマッチングを高めるためにも、丁寧な導入準備を行いましょう。


ゲームにご興味ある方はお問い合わせください。

【厳選】新卒採用に使えるビジネスゲーム7選


ここでは、新卒採用のグループ選考に実際に使えるビジネスゲームを厳選して7つご紹介します。いずれも、チームでの協働や思考力、コミュニケーション力など、社会人として必要なスキルが観察できる設計となっています。ゲームの概要、評価できる観点、そして実施上のポイントをそれぞれ解説します。

① 雪山遭難シミュレーション


【評価対象】判断力、合意形成、危機対応力、リーダーシップ

■概要
雪山に不時着し、10個のアイテムの中から生存に必要な優先順位をつけるというシミュレーションゲームです。まずは個人で順位をつけ、その後グループで議論し、最終的な“チームの合意”を形成します。

■見える行動
•他者の意見をどう受け入れるか
•少数意見をどう扱うか
•意見の対立をどう乗り越えるか
•リーダーが自然に生まれるかどうか

■運営ポイント
専門家の模範解答があるため、正解と比較して「論理性」「説得力」の評価もしやすいゲームです。議論の進行速度が観察できるため、時間配分も重要な評価要素になります。

② NASAゲーム


【評価対象】論理的思考力、説得力、チームバランス感覚 ■概要
月面に不時着し、母船への帰還を目指すという設定。15個のアイテムの重要度を個人→チームで順位付けします。各アイテムの重要性はNASAの基準に基づいており、答えが明確にあります。

■見える行動
•根拠を持って意見を伝えられるか
•他人の視点に立って考えられるか
•話し合いを整理し、まとめる力があるか

■運営ポイント
学生の発言内容が評価に直結するため、記録を取りながら観察すると効果的です。論理力や説明力の“質”が問われるため、発言量だけでなく「発言の中身」に注目しましょう。

③ 商談の達人


【評価対象】交渉力、チーム戦略、主体性、意思決定力

■概要
参加者は自動車メーカーの経営者となり、カードやコインを使って資源を仕入れ、製品をつくり、他チームと交渉しながら販売して利益を競います。

■見える行動
•チームの利益のために交渉に挑む姿勢
•他チームとの関係性づくり
•状況に応じた柔軟な戦略変更
•行動のスピード感とタイムマネジメント

■運営ポイント
個々の役割(調達・製造・営業など)を分けて実施すると、それぞれの特性がより明確に見えます。競争要素が強いため、ビジネス感覚や数字への意識が強い学生に光る場面が生まれやすいです。

④ クレーム対応ゲーム


【評価対象】対人対応力、共感力、感情コントロール、冷静な判断力

■概要
顧客クレームに対応するロールプレイング型ゲームです。チームでクレームの原因を分析し、対応方針を決定した後、ロールプレイで実演します。

■見える行動
•相手の感情を汲み取る力
•感情的な状況下でも冷静でいられるか
•チーム内で意見を調整するコミュニケーション能力

■運営ポイント
実際のビジネス現場を再現しているため、社会人基礎力の中でも“対人スキル”にフォーカスした観察が可能です。事後の振り返りタイムで、本人の気づきや改善点を引き出すとより学習効果が高まります。

⑤ 鉄塔ゲーム


【評価対象】計画力、全体把握力、チームマネジメント、リーダーシップ

■概要
建設会社の工事チームになり、複数のタスクを“限られた時間とリソース”の中で計画・実行するプロジェクト型ゲーム。工程表の作成やコスト管理など、現場さながらの設定です。

■見える行動
•全体を俯瞰して優先順位をつけられるか
•チームの進行管理ができるか
•トラブル発生時の対応力

■運営ポイント
リーダーを任命せずにゲームを開始することで、「自然にリーダーシップを発揮する人」が現れるかを観察できます。工期・コスト・品質といった“プロジェクト三要素”を使って評価することも可能です。

鉄塔ゲーム プロジェクトマネジメント

⑥ 7人の人事異動当てゲーム


【評価対象】情報共有力、論理的思考、観察力、分析力

■概要
各メンバーに与えられた情報は断片的。全体で共有し、チームとして“ある数字”を当てる推理ゲームです。情報交換の中で、チームがどのように知識を構築するかがカギになります。

■見える行動
•自分の情報を正確に伝える力
•他人の情報を整理する力
•推理力と仮説構築能力

■運営ポイント
発言量が少ない学生も、“観察力”や“聞く力”で高評価を得やすいのが特徴です。情報が偏るよう設計すると、協力せざるを得ない構造が生まれ、自然な会話が引き出されます。

⑦ ヒーローインタビューゲーム


【評価対象】傾聴力、他者理解、共感力、自己表現力

■概要
ペアになってインタビューし合い、相手の魅力を引き出して“ヒーロー”として紹介するゲーム。最後に全体の前でプレゼンを行います。

■見える行動
•相手の良さを言語化する力
•丁寧な聞き方・質問の質
•緊張下でのプレゼン力

■運営ポイント
「他者をどう理解するか」に重きを置くこのゲームは、コミュニケーションスキルの本質を見るのに最適です。ペアワーク後の発表タイムが自己表現の場にもなるため、多面的な評価が可能です。

【目的に応じたゲームの選定がカギ】

一口に「ビジネスゲーム」と言っても、その特性や評価できる力は大きく異なります。大切なのは、「自社がどんな人物を求めているか」に応じて、適切なゲームを選定することです。

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ゲーム実施時のよくある失敗とその対処法


どれほど優れたビジネスゲームであっても、運営方法を誤れば「評価ができない」「学生の印象が悪くなる」「成果につながらない」といった事態を招きます。実際の現場では、ビジネスゲームの選考活用がうまくいかず、形骸化してしまうケースも少なくありません。

この章では、ビジネスゲームを新卒選考に導入する際に起こりがちな“よくある失敗例”と、それに対する具体的な対処法を紹介します。


1. ゲームに熱中しすぎて評価がしにくくなる


■失敗事例
学生がゲームに没頭するあまり、観察者が見たい行動が出なかったり、学生が“ゲームクリア”ばかりを意識してしまうケースがあります。「勝つこと」に集中しすぎると、協調性や思考のプロセスが見えづらくなることがあります。


■対処法
•事前に「評価観点」を学生に伝える
 例:「このゲームでは、チームでどう協力できるかを見ています」
•単なる勝敗よりも“話し合いの過程”を重視する構成にする
•途中に観察者が“問いかけ”を挟む場面を用意する(例:「今、どのような意図で動いていますか?」)

【ポイント】勝ち負けよりも「行動とコミュニケーションの質」にフォーカスさせることで、評価しやすくなります。

2. 進行がうまくいかず、予定通り終わらない


■失敗事例 ゲームの時間配分が適切でなかったり、学生がルールを理解できていなかったりして、予定のスケジュールが押してしまうことがあります。また、進行役が指示を出しきれずに、全体が混乱する場面も見られます。

■対処法
•事前に社内リハーサルを行い、所要時間を明確にする
•進行役には進行スクリプト(台本)を用意し、指示内容を明文化
•ゲーム本編の前に「プレゲーム(ルール確認ミニワーク)」を入れる

特に初見のゲームでは、想定以上に「ルール理解」に時間がかかるため、事前説明に時間を割くことが成功のカギとなります。

3. 学生がルールを理解しないままプレイしてしまう


■失敗事例
特に複雑なゲームでは、「ルールを理解したふり」をしてゲームを始めてしまい、結果として誤った行動や不自然な流れになるケースがあります。結果として評価がブレたり、学生が不満を感じたりする原因になります。

■対処法
•口頭説明+紙のルールブックを併用
•代表者1人に理解を確認するだけでなく、チーム全員に確認の時間を設ける
•“わからなければすぐ質問してOK”という心理的安全性を明示する

また、ルール説明の際は「例え話」や「プレイ映像の一部紹介」があると、より理解が深まります。

4. 評価が“発言量の多さ”だけに偏ってしまう


■失敗事例
評価者が「たくさん話している学生=優秀」と捉えてしまい、裏方としてチームを支えていたり、的確なタイミングで一言だけ発言した学生が過小評価されるケースがあります。

■対処法
•評価観点に「貢献の質」や「調整力」など、行動の多様性を入れる
•複数の評価者で観察し、視点の偏りを補正する
•議論の記録(メモや録音)を活用して、後から検証できるようにする

発言量だけでなく「発言のタイミング」「場づくり」「傾聴の姿勢」などを重視することで、よりバランスの取れた評価が可能になります。

5. 学生の満足度が低く「意味が分からなかった」と言われる

■失敗事例
ゲーム後に学生から「何を見られていたのかわからなかった」「選考に使う意味が不明」といったフィードバックが寄せられ、企業側の意図が伝わっていないケースがあります。

■対処法
•ゲーム終了後に振り返りタイムを設ける(例:KPT方式で自分の行動を内省)
•「このゲームでは〇〇を見るために行いました」と企業側から説明する
•“選考であると同時に成長の機会”であることを明示

ゲームを「企業が評価する場」ではなく「学生が自分を知る機会」として位置づけることで、学生の納得感が大きく向上します。

まとめ:事前準備と“伝え方”が、ゲーム活用の成否を分ける


ビジネスゲーム型選考の導入は、確かに魅力的で効果的な手法ですが、導入の成否は「設計」よりも「運営と伝え方」によって大きく左右されます。準備不足や説明の甘さがあると、逆効果になるリスクすらあるのです。

成功のカギは、

✓学生に目的とルールを正しく伝える
✓評価者が観察に集中できる環境を整える
✓学生が「納得」できる体験設計をする

この3点を意識することで、選考としての精度も学生の満足度も飛躍的に向上するはずでしょう。


選考結果との相関イメージ事例(合格者と非合格者の違い)


ビジネスゲームはあくまで“手段”です。重要なのは、「ゲーム中に観察した行動が、選考結果や将来の活躍とどう結びつくのか」という点です。本章では、実際の採用現場で得られた相関事例を紹介しながら、ビジネスゲームによって見えた“合格者と不合格者の違い”を検証していきます。

■事例1:商談の達人ゲームでわかった「周囲を巻き込む力」の差(BtoBメーカー)

背景:あるBtoBメーカーでは、チームごとに交渉・調達・製造・販売を行う商社ゲームをグループ選考に導入。営業志望の学生のコミュニケーション力や交渉力を見る目的で実施された。

合格者の特徴
・積極的に他チームとの関係構築を図り、交渉に臨む
・単なる自己主張ではなく「相手の利益」も考えた提案ができていた
・チーム内での情報共有を怠らず、意思決定に貢献していた

不合格者の特徴
・交渉を他のメンバーに任せて静観していた
・自分の役割に固執し、状況に応じた行動ができなかった
・数字の管理など細部には強かったが、全体を見た行動が取れなかった

【考察】
選考担当者は「商談に必要なのは“押しの強さ”よりも“相手視点を持った調整力”だと再認識した」と語っている。結果的に、ゲーム中に“人と関係をつくる力”を発揮した学生が内定につながった。

■事例2:鉄塔ゲームにおけるリーダー不在時の行動観察(インフラ企業)

背景:あるインフラ企業では、計画立案型の鉄塔建設ゲームを選考に導入。誰にもリーダーを指定せず、自然発生的なリーダーシップを観察。

合格者の特徴
・誰に言われるでもなく、工程表の作成に着手
・他メンバーの意見を聞きながら、柔らかく進行を促す
・問題発生時にも冷静に全体を見て再計画を提案できた

不合格者の特徴
・指示を待つ姿勢が強く、自ら動こうとしなかった
・役割が不明瞭な場面で「自分のタスクではない」と受け身の対応
・混乱時に焦ってしまい、無計画に行動しがちだった

【考察】
この企業では「実務で求められるのは“静かなリーダーシップ”」であるという方針があり、ゲームの中でもその資質が明確に現れた。プレッシャー下での振る舞いこそ、選考の重要な判断材料になる。

■事例3:ヒーローインタビューで見えた“他者志向性”の違い(サービス業)

背景:サービス業界の企業で、ヒーローインタビューゲームを導入。学生同士がインタビューし合い、相手の魅力をプレゼンするスタイルで、“傾聴力”と“共感力”を評価。

合格者の特徴
・相手の話を深掘りし、「その経験はなぜ印象に残っているのか?」などの質問を重ねた
・自分ではなく“相手をいかに輝かせるか”に主眼を置いたプレゼンができていた
・緊張している相手を気遣い、場の空気を和らげる配慮があった

不合格者の特徴
・質問が表面的で、インタビューというより「項目チェック」になっていた
・プレゼンが自己アピールになっており、相手の紹介が二の次になっていた
・最後まで相手に関心を持っている様子が見られなかった

【考察】
「サービス業では、自己表現よりも“他者を見て動ける力”が必要だと再確認した」という企業側のコメントが印象的。採用後もこのタイプの学生は顧客対応で高評価を得ているという。

ゲームと選考結果の相関における3つの視点

1.単なる“結果”ではなく、“プロセス”を見ることが重要
→ 勝敗や得点よりも、そこに至るまでの行動や思考が評価対象

2.複数ゲームで“行動傾向の一貫性”を見る
→ どの場面でも“チーム全体を俯瞰できる人”“人の意見を活かせる人”は信頼されやすい

3.観察データを面接に“つなぐ”活用法も有効
→「ゲーム中にこんな場面がありましたが、どう考えていましたか?」と面接で聞くことで、学生の内省を促す効果も

ビジネスゲームでの行動は、「企業が求める人物像と合致しているかどうか」を可視化する強力な手段です。面接や筆記では得られない行動の“深層データ”は、入社後の活躍まで見据えた人材の見極めに貢献します。


まとめ

これからの選考に求められる“体験”と“納得”

新卒採用の現場では、ここ数年で「選考の在り方」に対する考え方が大きく変化しています。少子化・採用難・早期離職といった課題が表面化する中、企業にとって重要なのは、“内定を出すこと”ではなく、“入社後に活躍する人材を見極め、惹きつけること”になってきています。

その意味で、ビジネスゲームを活用したグループ選考は、単なる「面白い採用手法」ではなく、“これからの選考スタンダード”として確かな地位を築きつつあります。

ビジネスゲームが選考で注目される最大の理由は、「評価」だけでなく「学生の体験価値」も高められる点にあります。

•面接では緊張して本領を発揮できない学生も、ゲーム中では素の自分を出せる
•一方的な評価ではなく、「自分の行動から何が見えていたか」を内省するきっかけになる
•企業にとっても、履歴書や筆記試験では見抜けない“職場適応力”や“対人感覚”が見える

こうした双方向型の選考手法は、企業と学生の相互理解を促進し、結果的にミスマッチを減らすことにもつながります。

また、どのゲームを使うかは「何を評価したいか」によって変わります。大切なのは、自社の求める人物像を具体化し、その特性が自然に表れるゲームを選ぶことです。

•主体性・判断力 → 雪山遭難、鉄塔ゲーム
•共感力・傾聴力 → ヒーローインタビュー、クレーム対応
•交渉力・戦略思考 → 商社ゲーム
•論理的思考・情報整理 → NASAゲーム、数字当てゲーム

ゲームを通じ、「この会社の選考は、自分をきちんと見てくれている」、「ただの評価じゃなくて、成長の機会として向き合ってくれた」、という 学生のポジティブな体験は、内定承諾率の向上、入社後のエンゲージメントにも直結します。今や学生は企業を“試す”目を持っています。だからこそ、企業側も「試されている」という意識を持ち、評価だけでなく“納得感のある選考体験”を提供することが求められるのです。

本コラムでご紹介したビジネスゲームは、どれも「観察」「評価」「納得」の3つを同時に実現できる優れた選考ツールです。導入の手間は多少かかりますが、その分得られる“採用の質”は大きく向上します。

新卒採用の成功は、優秀な人材を獲得すること以上に、“未来の仲間を本質的に理解し、引き寄せる力”を高めることにあります。ぜひ、貴社の採用活動にもビジネスゲームを取り入れ、これからの時代にふさわしい選考体験を設計してみてください。


【執筆者情報】

ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃

研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間100登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。


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