以前のコラムでも報連相をご紹介しましたが、
今回は、報連相の連絡の注意点についてご紹介したいと思います。
仕事のコミュニケーション術の大切なスキルの1つとして、報連相(報告・連絡・相談)スキルが存在しますが、その報連相スキルの質や精度を会社全体で高めていくことが会社の生産性をつながることになるのです。
「報連相なんて、新人が学ぶものでしょ!?」で終わらせてしまうと実はもったいないことになってしまいます。報連相は、部下の立場だけでなく、上司の立場でも気を付けないといけない点がたくさんあるからです。
みなさんが人事部や教育担当者になったら、改めて報連相スキルの向上の育成に取り組まれると良いかもしれません。
さて、今回からは、報連相の連絡スキルの質を高めるべく、連絡の仕方をケーススタディ形式で、部下視点、上司視点でご紹介したいと思います。 改めて、連絡とは、以下のような定義が一般的です。
連絡とは
連絡・・・
自分の意見を付け加えず、簡単な事実情報を関係者に知らせること
こんなとき、どうする?
今回は、上司と部下の会話をもとに報連相のポイントを考察していきたいと思います。
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【登場人物】
上司の鈴木部長:
HR系の勤怠システムや給与計算ソフトを製作、販売している会社の営業部長
部下の田中くん:
鈴木部長の下で働く入社2年目の若手営業マン
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①重要な連絡事項は、どうするべき?なシチュエーション
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上司の鈴木部長:
「もうすぐ11時かぁ。確か11時からZOOMで営業一課と開発部との新商品開発のオンライン会議だったなぁ。準備して行くか。
あれ?誰も入って来ないじゃないか!?どうなっているんだ?田中に電話で聞くか。」
トゥルルル
「お疲れ様。鈴木だけど、今日の開発部とのオンライン会議って、11時からだよな?」
部下の田中くん:
「部長、お疲れ様です。田中です。いえ、今日の会議は、16時に変更になりました。」
上司の鈴木部長:
「うそ、本当か?いつ変更になったんだ?連絡来たか?」
部下の田中くん:
「昨日の18時ごろに開発部の部長から変更依頼の連絡が入りまして、昨日の夜にメールで送っていますよ。」
上司の鈴木部長:
「メール来ていたかなぁ?直前なら電話でも教えてくれれば良かったのに…」
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このように連絡する上で、行き違いが起こる可能性もあります。
こういったケースでは、部下は何に気を付けなければいけないのでしょうか?また上司の立場から、どうフィードバック(改善に向けた指摘)をするべきでしょうか?
部下が連絡の仕方で気を付けなければいけない点
「こちら側から連絡したのに、連絡した内容を見ない相手がいけないんじゃないか?」と思うのは、人間の心理としては当然、あり得えます。
連絡で注意すべき点は、「伝えるのと伝わる」の違いです。
伝えるのは、ただ単に、自分の考えや物事を、一方的に他方へ受け渡す行為のこと。主語は自分で、聞き手はその情報を知っただけの状態です。一方的なコミュニケーションであるため、相手がそれを受け取ったかどうかは関係ありません。
一方で、「伝わる」とは、自分の伝えたい事がきちんと相手に理解を得られている状態のことです。また、その理解は自分の理解とイコールでなければなりません。「伝わる」の主語は「相手」にあり、相手の目線や思考に合わせて伝えることが大事になってきます。
伝えただけでは、ダメで、相手がきちんと理解してくれ、伝わったかどうかを意識する必要があります。
上司がフィードバックで、意識しなければいけない点
部下のポイントで、お伝えしたように、 連絡は、伝えるのと伝わるのでは、大きな違いがあることをきちんと伝えましょう。
また情報共有のための連絡が伝わってなかった場合に起こり得るリスクを説明することで、事の重大さを認識してもらうことも大切です。
例えば、社内会議の時間が変更になって、伝わってなかった場合は、そこまで影響範囲は狭くてすみますが、お客様や取引先様との会議で、時間変更の連絡が伝わってなかった場合、信頼関係がなくなり、新規取引がなくなってしまう可能性もあるわけです。
改めて、伝わってなかった場合のリスクをしっかり教えていきましょう。
②クイックレスポンスを心掛けるべきシチュエーション
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上司の鈴木部長;
「あれ、、、? 田中のやつ、お客様になりそうな企業様を紹介してくれたA社の宮崎課長に御礼メール送っていないじゃないか。紹介の連絡もらってから3日も経っているのに。宮崎さんからその後、どうなりましたか?って連絡来てしまったじゃないか」
・・・
「おい、田中、A社の宮崎課長に御礼とその後の進捗状況の連絡は入れたのか?」
部下の田中くん;
「部長、申し訳ありません。別件で対応しなければいけないことがあって、まだ連絡入れられていません。」
上司の鈴木部長;
「おいおい、わざわざ時間を作ってもらって、紹介していただいたんだぞ。」
部下の田中くん:
「申し訳ありません、、、すぐに対応します。」
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このように連絡せずに放置してしまった結果、問題が発生してしまう可能性もあります。 こういったケースでは、部下は何に気を付けなければいけないのでしょうか?また上司の立場から、どうフィードバック(改善に向けた指摘)をするべきでしょうか?
部下が連絡の仕方で気を付けなければいけない点
このようなケースのときに、気を付けなければいけない点として、連絡を後回しにしていると、だんだん連絡しづらくなっていってしまいます。業務量が多くなってくると、レスポンス(返信)をしなければいけないと思っていても、業務が次々に舞い込んできて、対応が遅れてしまうという可能性もあります。レスポンスを後回しにしていると、そのあとにお客様や取引先様から連絡が来てしまって、御礼を伝えそびれてしまったり、進捗状況についての連絡を入れそびれてしまったりして、信頼関係にヒビが入ってしまう可能性も出てきます。
社外の方からの連絡は特に、クイックレスポンス(特急返信)を心掛けましょう。
私は前職時代に、代表から、「連絡が来たら、2時間以内で何かしらの返信をするように!」と教わりました。連絡を受け取る相手も、何かしらの返信があれば、とりあえずは安心できます。みなさんも連絡を受け取る側であれば、そう思いますよね?
例えば、「○○については、現在、社内調整中ですので、少々お待ちください。今週中には再度、ご連絡します。」のように、今すぐに回答が難しい場合でも、連絡を入れることで、安心してもらうことができます。
ちなみに、前述の代表から教わった2時間以内についてですが、当時はこう思いました。
「2時間以内って、、、打ち合わせ中やコンサルティング中だったら返せないじゃないか!?」と。
2時間以内に返せるなら返そうという、あくまでもその時間は目安で、目標を持って行動(返信の対応)した方が、より意識することもできるということです。
上司がフィードバックで、意識しなければいけない点
部下のポイントで、お伝えしたように、クイックレスポンスをした方が良い理由をきちんと教えていきましょう。
クイックレスポンスをした方が良い理由は、下記のようなものが挙げられます。
-
・相手に安心感を与えることができ、信頼関係を築くことができる。
・返信の抜け漏れがなくなり、仕事の抜け漏れがなくなっていく。
・仕事のスピードが速いと認識してもらいやすくなる。
やはり、仕事はスピードが命です。クイックレスポンスをすることで、相手に与える印象が良くなっていくはずです。
最近、私が活用しているのは、スマホなどの音声入力の機能です。
iPhoneなどの『音声入力』でいうと、変換能力がかなり高いと思います。
「。」や「、」、「改行」と音声で言えば、実際に入力してくれますし、改行もしてくれます。
パソコンでもGmailの音声入力ができますが、正直、iPhoneよりも精度は下がる印象です。
パソコンの場合は、もしかしたら、打った方が速いかもしれません。
メールを打つのに、かかる平均時間は、1通あたり6分だとされています。中には10分かかる人も。
たった5~6分とは言え、業務に集中していると、この5分を捻出するのが億劫になるものですよね。音声入力機能を活用することで、それが短縮できるのであれば、気にせずにレスを返すことができて、連絡が遅れることはなくなるかもしれませんね。
報連相に限らずですが、いかに上司として、業務効率になりそうなツールを紹介してあげられるのも1つのマネジメント能力ではないでしょうか?
③代理で受けたら責任を持つべきなシチュエーション
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上司の鈴木部長:
「はい、お世話になっております。鈴木です。」
B社の山田様:
「お世話になっております。B社の山田です。午前中にお電話した件ですが、その後、折り返しいただいていなかったので、先に電話させてもらいました。あの件、どうなりそうでしょうか?」
上司の鈴木部長:
「大変申し訳ございません。伝言をまだ言付け受けていない状況でして、、、申し訳ございませんが、あの件とは、どんな内容でしたでしょうか?」
B社の山田様:
「そうだったんですね。田中さまに急ぎの用件と伝言を入れさせてもらっていたのですがね。
今、利用させてもらっているシステムの新機能の使い方の件で、質問があったのですが、、、」
・・・電話終了
鈴木部長:
「田中、B社の山田様から私宛に連絡きたのか?」
部下の田中くん:
「はい、外出されていたので、30分前にチャットでメッセージで送っていたのですが、、」
鈴木部長:
「山田様から急ぎの用件だった、と、今、電話で連絡来たぞ。チャットで送ったからと言って、それで済ませるんじゃなくて、戻ってきたときに、『チャットに送りました』って言ってくれればいいじゃないか」
部下の田中くん:
「申し訳ありませんでした。急ぎだったのですね。聞き逃してしまったかもしれません。」
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このように連絡を代理で受けた場合に連絡がうまく共有できずにいた場合、お客様からの信頼が失われてしまう可能性もあります。 こういったケースでは、部下は何に気を付けなければいけないのでしょうか?また上司の立場から、どうフィードバック(改善に向けた指摘)をするべきでしょうか?
部下が連絡の仕方で気を付けなければいけない点
部下の立場の方が意識しなければいけない点は、「代理で受け取った伝言も、受け取った人が責任を持つ」ということです。仮に「戻ってきたら、折り返しの電話がほしい」という伝言を受け取った場合は、その通りに伝言を、本人に伝える義務を負うことになります。
本人に代わって、伝言を受け取った以上は、最後まで責任を持ち、メッセージがきちんと本人に伝わったかどうか、そして、本人が行動してくれたかどうかを見届ける必要があります。
正直、「そこまでしてられてないよー」と思われるときもあるかもしれませんが、連絡をしてきた社外の人たちにとって、伝えた用件が実行しなければ困ってしまうことになります。迷惑にならないように、伝えられた用件をしっかりと共有するようにしましょう。
また、代理で伝言を受け取るときに気を付けたいこととして、内容を省略せずに、言われた通りに共有しなければいけません。伝言を受け取るときは、5W3H(いつ(orいつまでに)、だれが、何を、なぜ、どこで、どうやって、いくつ、いくらで)の視点で、相違が出ないように、少ししつこくなってしまっても、確認を取るようにしましょう。
上司がフィードバックで、意識しなければいけない点
こういったケース(部下が代理で伝言を受け取り、少しミスをしてしまった)で、上司がフィードバックする上で、意識しなければいけない点としては、伝言を受け取る側の要望・リクエストをきちんと伝えるということです。
お客様や取引先様からの連絡を1番多くもらうのは、上司や先輩社員たちです。
「5W3Hの視点は必ず入れてほしい!」や「急ぎなのか、急ぎではないのか、いつまでに連絡すれば良いのか」など、伝言を受け取る側としての欲しい情報を部下たちに確認するように、指導するべきです。
また、伝言を受け取る際に、こちら側から何かアクションを起こさなければいけないときは、上司や先輩社員たちの『1日の動き』を把握した上で、相手の方へ、いつ頃に連絡できそうかを伝えられるように指導をしていきましょう。
相手の立場から考えても、用件を伝えたときに、いつ頃連絡が来そうか、少し時間が掛かるのか、すぐに連絡してもらえそうなのかを把握できていた方が安心できて、嬉しいはずです。相手の立場に立って、相手が安心できるような姿勢で、伝言を受け取るように指示をしていきましょう。
今回は、人事や教育担当者になったら、教えておきたい報連相シリーズ②-こんなときどうする?報連相の連絡編ということで、ケーススタディを交え、ご紹介していきました。
報連相は、社会人としての当たり前のスキルですが、状況によっては、とても難しいものでもあります。その点を踏まえ、極力、「こんなときはこうするべき!」といったケースを多く、新人、若手には教えるようにしていきましょう。
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ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。