以前のコラムでも報連相をご紹介しましたが、
今回は、報連相の相談の注意点についてご紹介したいと思います。
仕事のコミュニケーション術の大切なスキルの1つとして、報連相(報告・連絡・相談)スキルが存在しますが、 その報連相スキルの質や精度を会社全体で高めていくことが会社の生産性をつながることになるのです。
「報連相なんて、新人が学ぶものでしょ!?」で終わらせてしまうと実はもったいないことになってしまいます。 報連相は、部下の立場だけでなく、上司の立場でも気を付けないといけない点がたくさんあるからです。
みなさんが人事部や教育担当者になったら、改めて報連相スキルの向上の育成に取り組まれると良いかもしれません。
さて、今回からは、報連相の相談スキルの質を高めるべく、相談の仕方をケーススタディ形式で、部下視点、上司視点でご紹介したいと思います。
改めて、相談とは、以下のような定義が一般的です。
相談とは
相談・・・疑問や問題が生じたときに上司や先輩、お客様、意思決定に必要なことを相談(質問・確認)すること。
また同僚等からアドバイスをもらうことなども含む。
こんなとき、どうする?
今回は、上司と部下の会話をもとに報連相のポイントを考察していきたいと思います。
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【登場人物】
上司の鈴木部長:
HR系の勤怠システムや給与計算ソフトを製作、販売している会社の営業部長
部下の田中くん:
鈴木部長の下で働く入社2年目の若手営業マン
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①自分からの主体的な姿勢で、必要な情報を取りにいくべし
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鈴木部長:
「田中、A社様のシステムの件で、大幅なバージョンアップ依頼の案件があったんだけど、提案書の作成をお願いできる?依頼の案件定義書は事前に作っておいたから、それ見<てもらえば、作れると思う!頼むぞ」
田中くん:
「部長、任してください!いつまでに完成させればいいですか?」
鈴木部長
「来週末に提案だから、来週の水曜日の17時までにはほしいな」
田中くん
「承知しました。作っておきます」
〜翌週水曜日17時〜
田中くん
「鈴木部長、お願いされた資料の件、できあがりました。
ご確認いただけますか?」
鈴木部長
「ありがとう。確認するから、少し待っててくれ。」
・・・5分後
鈴木部長
「ここの箇所だけど、情報足りていないよね?調査してて、わからなかったの?」
田中くん
「すみません。調べてみて、ピックアップした内容を入れてみたんですが、足りなかったですか?」
鈴木部長
「〇〇ということが課題だから、△△という情報だけじゃなく、××という情報が必要じゃないか?」
田中くん
「あっ、なるほど。たしかにその視点が足りなかったかもしれません。」
鈴木部長
「そうだな。次回は途中で、質問してもらえれば、答えれるから、早めに方向性を確認してくれるかな」
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このように与えられた情報の中では、わからないことも出てくると思います。
こういったケースでは、部下は何に気を付けなければいけないのでしょうか?また上司の立場から、どうフィードバック(改善に向けた指摘)をするべきでしょうか?
部下が相談の仕方で気を付けなければいけない点
部下が相談において、気をつけなければいけない点としては、自分から情報を確認し、質問しに行くという姿勢です。
上司から仕事を依頼されたときでも、
お客様から仕事を依頼されたときでも、
与えられた情報がすべてではない。
という視点を持つべきです。
上司なんだから、的確に指示や依頼してくれるべき、という想いがあるかもしれませんが、上司も万能ではありません。
指示が不明瞭で、わからないところがあったら、自分からの主体的な姿勢をもって、必要な情報を取りに行くべきです。
上司が相談を受ける上で気をつけなければいけない点
これは、相談しやすい、質問をしやすい状態を作ってあげるという点がポイントです。
部下や後輩は、想像以上に、上司に声を掛けにくいものなんです。
私も以前の勤務先で感じたことがあります。
上司に相談しに行くと、上司が眉間にしわを寄せて、
「10分後でも、良い?」と言われて、相談しづら〜。
と感じたものです。
気軽に相談してね。と口では言っていっても、
表情や態度が全然、相談しづらい雰囲気であれば、意味がないですよね?
やはり言動一致できるように上司は努力するべきですね。
②答えを求めるだけではなく、自分なりの仮説を必ず用意する。
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田中くん
「鈴木部長、B社様からいただいたご質問の回答内容についてご相談があるのですが、今お時間5分ほどいただけますか?」
鈴木部長
「了解!どんなこと?」
田中くん
「実は、●●について、ご質問があったんですが、どう対処すれば良いかわからなくて、、、どうすれば良いでしょうか?」
鈴木部長
「なるほど、確かに難しい質問だね。田中くん的には、どうすれば良いと思うの?」
田中くん
「そ、それがわからないから相談してるんですけど、、、」
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部下が相談の仕方で気を付けなければいけない点
部下が相談で気を付けなければいけない点としては、
答えを単純に求めるだけではなく、自分なりの仮説としての答えを出して、
相手に判断や意見を求める必要があるという点です。
答えをくださいだけのスタンスでは、自分の考える力の成長には繋がりません。 対応方法が合っているかどうかはさておき、自分なりの仮説の答えを考えることによって、 成長につながっていきます。
また上司もすべてを把握している訳ではありませんので、 随時、与えられた情報の中で判断をしています。
なぜ上司がそういった判断をしたのか、そういった意見を持ったのか、
その理由を考える上でも、自分の仮説を考えることで、合っているのか間違っているのかを
確かめることができます。
ぜひ仮説を考えてみましょう。
上司が相談を受ける上で気をつけなければいけない点
上司が相談を受ける上で気を付けなければいけない点としては、単純に答えを与え続けるのは、得策ではないということです。
もちろん、時間は無限にあるわけではないので、 緊急性や重要性によっては答えを即時、与えても問題はありませんが、 考える癖付けをさせていかないと、部下が成長していきません。
答え(対応方法)を教えるティーチングと答えを導き出す上でのコーチング(質問)の バランスを考えて、指導をしていきましょう。
③事前に情報を整理し、相手が判断できる情報を伝える
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鈴木部長
「田中くん、半年後の来年2月に営業部で研修会を行おうと思うんだけど、
どういった研修を行うべきか、社内リサーチしてもらって、提案してもらえないかな?
外部の研修会社さんを呼んでも良いかなと思っている。ただし、部長決裁で上限30万円までと 決まっているから、その予算で情報を調べて、提案をまとめてほしいな。来月の10日までにお願いできる?」
田中くん
「外部の研修ですか??初めての試みで、面白そうですね。任せてください!」
鈴木部長
「快く受けてくれて、ありがとう。それじゃあ、任せたよ!」
・・・リサーチの途中
田中くん
「鈴木部長、先日お願いされた外部研修の件ですが、社内リサーチしてみました。
相談したいことがあるので、5分程、お時間いただけますか?」
鈴木部長
「ありがとう。じゃあ、教えてくれ」
田中くん
「はい。社内の先輩や同僚に聞いた結果、研修内容は、複数に分かれてしまいまして、、、
営業のインサイドセールスの内容についてだったり、マーケティングの内容だったり、
コミュニケーションの内容だったり、と。とにかくお客様満足度を上げるための施策や
契約率を上げるための施策が希望という意見でした。外部の研修会社さんに話も聞いたんですけど、
何か同じような印象を受けてしまい、判断に迷ってしまいまして、、、」
鈴木部長
「おいおい、社内リサーチして、その結果は具体的にどうなったんだ?
希望の研修内容がいくつか出たのはわかったが、票数でもまとめてみたら、優先順位つけられるよね?
判断できる材料があった方が決めやすいんだけど、、、」
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このように相談をしたけれど、情報がまとめきれず、うまく伝わらないというケースもあるようです。
部下が相談の仕方で気を付けなければいけない点
前述の②のケースでお伝えした通り、上司は随時、情報を聞いた上で判断をしなければいけません。
相談する前に、事前に調べた情報を整理した上で相手に伝えるべきです。
情報を整理する上で、必要な考え方がロジカルシンキングです。
以前のコラムで、ロジカルシンキングについてご紹介しておりますので、こちらもご参照ください。
コラム:ロジカルシンキングは難しい!?ロジカルシンキング研修で抑えておきたい3つのポイント
簡単に情報を整理する上で、情報の細分化と分類化して、まとめることがオススメです。
細分化
MECE的なやり方でも、セグメンテーション的なやり方でも、OKです。
例えば、営業部で行いたい研修内容を社内やネットリサーチした結果を羅列していくイメージです。
・テレアポ研修
・プレゼン研修
・コミュニケーション研修
・自己紹介の作り方研修
・飛び込み訪問研修
・提案書の作り方研修
・マーケティング研修
・ロジカルシンキング研修
・ロジカルコミュニケーション研修
・ビジネスマナー研修 etc.
分類化
これを分類化していくのですが、グルーピングという方法を使ってもOKですし、
プロセスなどのフローで分けても構いません。
例えば、営業のプロセスに分けて、考えてみると、
アポイント獲得(リード獲得)
初回訪問準備
初回訪問時(アイスブレイク→ヒアリング→案件化)
商談準備(提案書作成)
商談時(プレゼン→クロージング)
契約
という項目がでてきます。
それに先程出てきた研修内容がどこに分類されるのかをあてはめていくような形です。
マーケティング研修は、アポイント獲得に入るかな?
ロジカルシンキング研修は、商談準備(提案書作成)に入るかも。
というようにです。それを簡単な資料にまとめてみるといいでしょう。
ちなみに今回のケースの分類化では、営業プロセスだけではなく、もっと簡易にしても良いかもしれません。
●社内リサーチの結果の上位3つ
1位 マーケティング研修
2位 ロジカルシンキング研修
3位 提案書作成研修
●世の中の営業職が希望する研修の上位3つ(仮)
1位 マーケティング研修
2位 プレゼン研修
3位 ロジカルシンキング研修
その中で、自分なりの仮説をぶつけて、研修内容の判断を仰いでいけば良いのです。
上司が相談を受ける上で気をつけなければいけない点
上司が相談を受ける上で気をつけなければいけない点としては、部下が情報をまとめてきていなかった場合に、
やる気を削ぐ注意の仕方はしないようにしましょう。
で、結局どうしたいの?
で、これでどう判断すれば良いの?
こっちも時間が無限にあるわけじゃないからさぁ〜
相談する前にうまくまとめておくのが普通でしょ!
実際に私もされたことがありますし、してしまったこともあります。
じゃあ部下に対して、わざわざ気の遣う言い方しないといけないのか?と聞かれますが、半分正解で半分違います。 気を遣うというより、部下が上司に気を遣うように、対等に上司は部下に気を遣ってあげるべきだと思います。
指摘をするときの怒りの感情表現によって、伝わりやすさが変わるのも事実です。ただし相手のミスの回数や重要度によって段階的に使い分けた方が無難でしょう。 結局、部下の成長が上司の役目ですし、部下が成長してくれた方が上司も楽ちんになります。
今回のケースのように、新人さんだとまだまだ情報の整理の仕方がうまくできない方も多いです。 みなさんなりの情報の整理術をぜひ教えてあげてください。
今回は、人事や教育担当者になったら、教えておきたい報連相シリーズ②-こんなときどうする?報連相の相談編ということで、ケーススタディを交え、ご紹介していきました。
報連相は、社会人としての当たり前のスキルですが、状況によっては、とても難しいものでもあります。その点を踏まえ、極力、「こんなときはこうするべき!」といったケースを多く、新人、若手には教えるようにしていきましょう。
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「部課長ゲーム」
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。