カリスマ性だけでは人は付いてこない!?従来型とは一線を画す「オーセンティックリーダーシップ」とは

カリスマ性だけでは人は付いてこない!?従来型とは一線を画す「オーセンティックリーダーシップ」とは

カリスマ性だけでは人は付いてこない!?従来型とは一線を画す「オーセンティックリーダーシップ」とは

みなさんはオーセンティックリーダーシップという言葉をご存知でしょうか? オーセンティック(authentic)とは「本物の」「真正の」「正真正銘の」という意味を持つ単語で、オーセンティックリーダーシップとは、その名の通り「本物のリーダーシップ」を意味します。

オーセンティックリーダーシップを提唱したのは、ハーバード・ビジネススクールの教授であるウィリアム・W・ジョージ氏です。 ジョージ氏が2003年に出版した『Authentic Leadership』の中で提唱されたのがオーセンティックリーダーシップで、ジョージ氏は「自分に固有のリーダーシップのスタイルを開発すべきである」と語っているのです。

オーセンティックリーダーシップ倫理観を持ち、自分自身の考えや価値観に基づいてリーダーシップを発揮するスタイルです。このリーダーシップの形は、従来のトップダウン型リーダーシップとは一線を画し、個々の自己表現と倫理を重んじたものだといえます。

なぜ今、オーセンティックリーダーシップが求められるのか?


時代は変わり、企業や組織内の多様性が以前にも増して重要視されています。トップから一方的に指示を出すスタイルでは、多様なニーズや価値観を持つ現代の社会や市場に対応することが難しくなってきていますし、さらに情報量が膨大になってきている現代においては、リーダー一人だけの力では情報を適切に処理し、適切な判断を下すことがますます困難になってきているのです。 オーセンティックリーダーシップが特に求められるようになった背景にはいくつか要因があり、従来のリーダーシップスタイルに対する課題と限界を明らかにし、新たなアプローチの必要性を浮き彫りにしました。

1. 社会の多様化と複雑化


現代社会は急速に多様化し、複雑化しています。人々の価値観、文化的背景、期待が多様であり、これに対応するためには、従来のトップダウン式のリーダーシップだけでは対応が難しいという課題があります。

2. 倫理的・道徳的価値の重視


2000年代初頭のエンロン事件や2008年の世界金融危機など、大規模な企業の不祥事が発覚したことで、企業の倫理性や透明性が強く問われるようになりました。これらの事件は、リーダーシップにおける倫理観の欠如が大きな問題を引き起こすことを示し、真正性や倫理的な振る舞いを重視するオーセンティックリーダーシップが注目されるようになりました。

3. 従業員のエンゲージメントと幸福感の追求


従業員の満足度やエンゲージメントが組織のパフォーマンスに大きな影響を与えることが明らかになるにつれて、リーダーには従業員との関係構築や、彼らの幸福感を高める能力が求められるようになりました。オーセンティックリーダーシップでは、リーダーが自身の価値観を明確にし、真心を持って従業員に接することで、より強い信頼関係と高いエンゲージメントを実現可能なのです。

4. 情報技術の発展と透明性の要求


インターネットとソーシャルメディアの普及により、情報は瞬時に広まるようになり、企業やリーダーの行動は以前にも増して公の目にさらされるようになりました。このため、リーダーは一貫性と誠実さを持って行動する必要があり、それを体現するオーセンティックリーダーシップが求められるようになりました。

5. 持続可能な経営と社会的責任の強調


持続可能な経営や企業の社会的責任(CSR)への関心が高まる中、企業はただ利益を追求するだけでなく、社会的な価値を提供する必要があります。オーセンティックリーダーシップは、これらの価値を組織の運営に取り入れ、社会全体に対してポジティブな影響を与えるリーダーシップを展開することが求められるようになりました。

これらの要因により、オーセンティックリーダーシップは現代のリーダーシップとして注目されるようになり、個々が自らの強みを生かし、それぞれがリーダーシップを発揮できる環境が求められるようになってきたのです。

オーセンティックリーダーシップは、透明性と誠実さを基本とし、これによって組織内の信頼を築くことができます。リーダーが自己の弱点を認め、オープンにすることで、他のメンバーも自らの意見やアイデアを自由に表現しやすくなります。 個々のリーダーが真摯に自己を見つめ、透明性と倫理的責任を持って行動することが、組織や社会に対して大きな価値をもたらすとされています。

オーセンティックリーダーが持つべき5つの特性


オーセンティックリーダーシップを発揮するためには、下記の5つの特性を知ることが非常に重要とされています。

①情熱を持って目的を追求する


情熱を持って目標に向かうことは、リーダーシップの重要な要素です。自身の理想のリーダーシップ像や将来の姿を明確にし、それに向かって情熱を持って行動することが必要です。しかし、リーダーである以上、常にモチベーションを維持することは容易ではありません。そのためには、強い情熱が不可欠です。日々の忙しさの中でも、情熱を持って目標に向かって行動することで、モチベーションを長期間維持できるでしょう。

②自分なりの価値観に基づいて行動する


自身の価値観に基づいて行動することも重要です。自分の考えや価値観、倫理観を大切にし、それに忠実に行動することが求められます。自分の考えや価値観がないリーダーは、他人の影響を受けやすく、安定した意見を持つことが難しいでしょう。自身の価値観を尊重し、倫理的な行動を取ることで、部下やメンバーからの信頼を得ることができます。

③真心を持ってリードする


真心を持ってリーダーシップを発揮することも重要です。自身の考えや価値観を率直に伝え、メンバーと真摯に向き合うことが必要です。リーダーであっても、自身の考えがメンバーに伝わらなければ、組織を効果的にリードすることは難しいでしょう。メンバーとの率直なコミュニケーションを通じて、信頼関係を築くことが重要です。

④継続的に人間関係を構築する


継続的な人間関係の構築も重要です。メンバーとのコミュニケーションを積極的に行い、信頼関係を築くことが求められます。コミュニケーションが不足していると、信頼関係を築くことが難しくなります。信頼関係はリーダーシップの基盤であり、積極的なコミュニケーションが不可欠です。

⑤セルフマネジメント


セルフマネジメント能力も重要です。リーダーは自己を管理し、自身の価値観や倫理観を守る必要があります。他者との意見の違いを認識し、自己を律する能力が必要です。また、厳しく自己を律することで、他者からの信頼を得ることができます。リーダーシップを発揮するためには、セルフマネジメント能力を高めることが重要です。

現代に求められているリーダーシップにおいては、指示や命令、カリスマ性だけではなく、リーダー自身が示す真摯な行動や姿勢がメンバーに大きな影響を与えることが明らかになってきています。 オーセンティックリーダーシップは、それぞれのリーダーが自己の価値観を生かし、個々のメンバーが持つ力を引き出すことで、より強く、たくましい組織を築いていくための鍵となるでしょう。

オーセンティックリーダーシップを実践するための具体的なヒント


オーセンティックリーダーシップを実践するには何が必要なのでしょうか?
オーセンティックリーダーシップを効果的に実践するためには、自己認識を高め、継続的な成長を目指す必要があります。ここでは、具体的なヒントをいくつかご紹介します。

1. 自己反省の習慣を身につける


自己反省は自己認識を高めるための重要なツールです。定期的に時間を設け、自分の行動、決断、そしてその背後にある動機を振り返ります。日記をつける、メンタリングを受ける、あるいは信頼できる同僚とのディスカッションを通じて、自分自身のリーダーシップスタイルの強みと弱点を評価しましょう。

2. 価値観を明確にする


自分自身の核となる価値観を特定し、それらがどのように日々の行動や決断に影響を与えているかを理解します。価値観が明確であればあるほど、状況が変わっても一貫したリーダーシップを発揮しやすくなります。価値観を定期的に見直し、それが自分の行動や組織の目標と一致しているかを確認しましょう。

3. 感情の管理方法を学ぶ


リーダーとしての自制心は非常に重要です。自分自身の感情を適切に管理し、感情が判断や行動に影響を与えすぎないようにすることが求められます。ストレスマネジメントのテクニックを学び、冷静さを保つ方法を身につけることが大切です。

4. アクティブリスニングを実践する


メンバーの意見や感情を真摯に受け止めるためには、アクティブリスニングが不可欠です。会話中に相手の話を注意深く聞き、質問を投げかけて理解を深めることで、信頼関係を築くことができます。また、異なる視点や新たなアイデアを受け入れることで、組織全体の革新を促進することが可能です。

5. 継続的な学びと適応


リーダーとしての成長は、継続的な学びから得られます。新しいリーダーシップの理論を学び、異なる業界の事例に目を向け、新たな知識を組織に取り入れることが重要です。また、変化する環境に対応するためには、柔軟性を持って自己のアプローチを適応させる必要があります。

6. フィードバックを積極的に求める


自己の成長を助けるためには、周囲からのフィードバックが欠かせません。部下、同僚、上司からのフィードバックを受け入れ、それを自己改善のための有益な情報として活用します。フィードバックを求めることは、自己認識を高め、より効果的なリーダーシップを発揮するための鍵です。

これらのヒントを実践することで、オーセンティックリーダーシップを更に深め、自己のリーダーシップスタイルを強化し、信頼されるリーダーとしての地位を築くことができるでしょう。

さらに、リーダーとしてのスキルだけでなく、人間としての深い洞察力や共感能力を育てることも、オーセンティックリーダーシップの成功には不可欠です。メンバーの感情や動機を理解し、それに対して敏感であることが、より強い関係を築く上で効果的です。


まとめ


今回はオーセンティックリーダーシップについてご紹介いたしました。

オーセンティックリーダーシップは、リーダーが自分自身と向き合い、自己認識を深めながら、自身の価値観や信念に基づいて行動することを重視するリーダーシップです。オーセンティックリーダーシップを実践することで、リーダーは部下やチームメンバーとの信頼関係を構築し、組織全体のパフォーマンスを向上させることができるはずです。今日の複雑多様なビジネス環境において、オーセンティックリーダーシップは、持続可能で進歩的に組織を築くための重要な鍵となることは間違いないです。ぜひ参考にしてみてください。


【執筆者情報】

ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃

研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間100登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。

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