• 立場に依存して物事が決まる
• 「とりあえず多数決」になる
• 会議が“落とし所探し”で終わってしまう といった“機能不全”が起こっています。
こうした問題の根本にあるのが、合意形成のプロセスが組織文化として共有されていないことです。 そこで、今回注目したいのが「コンセンサスゲーム」を活用した体験型研修です。NASAゲームや砂漠からの脱出ゲームなどに代表されるこの手法は、 1. 与えられた課題に対して、まず個人で考え、
2. 次にチームで話し合いながら合意形成し、
3. 最後に模範解答と照らし合わせて自らの思考を振り返る というシンプルかつ奥深い3ステップで、“個”と“チーム”の違い、意思決定のバイアス、情報共有の難しさを一度に体験できます。 さらに、これを単なるゲームに終わらせず、**「ゲーム理論」**の考え方と組み合わせることで、チーム内の行動原理や意思決定パターンを理論的にひも解くことが可能になります。ゲーム理論とは、経済学や政治学、戦略論などでも活用されている「他者と関わる中での合理的選択の分析手法」であり、ビジネスにおけるあらゆる意思決定の裏側を説明できる強力なフレームです。 本コラムでは、この〈コンセンサスゲーム×ゲーム理論〉という組み合わせを研修に活用することで、どのような学習効果が得られるのか、どのように設計すれば最大効果を発揮できるのかを詳しく解説していきます。

コンセンサスゲームとは何か?
“体験を通じてチームの意思決定を可視化する”学習ツール
1. コンセンサスゲームの定義と成り立ち
コンセンサスゲームとは、参加者が個人での判断とチームでの話し合いによる合意形成を通して、意思決定力やコミュニケーション力、リーダーシップ、協働姿勢などを体験的に学ぶことができる、教育効果の高いアクティブラーニング型研修プログラムです。 この手法は、1980年代のアメリカで宇宙飛行士やエンジニアの教育用に開発された「NASAゲーム」が起源とされており、 “正解のある状況で、個人とチームの判断がどう異なるか”を測定する目的で設計されました。 その後、教育現場や企業研修においてこの手法が広まり、現在ではさまざまなシナリオ(遭難、事故、危機管理など)をもとにした10種類以上のバリエーションが開発されています。 最大の特徴は、“ゲームの形式を取りながらも、意思決定に必要な要素(情報整理・価値基準の明確化・他者理解・合意形成など)を自然に体験させられる”ことにあります。2. ゲームの流れと基本構造(3ステップ)
どのシナリオにも共通するコンセンサスゲームの基本構造は以下の3段階です。 ①個人で考える(Individual Thinking)まずは、プレイヤーそれぞれが自分一人の判断で問題に答えるフェーズです。例えば「15個のアイテムを、重要だと思う順に並べる」などのタスクを制限時間内で行います。
→この段階では、個々の論理性・価値判断の基準が浮き彫りになります。 ②チームで合意を形成する(Group Consensus)
次に、グループに分かれ、個人意見を持ち寄って1つのチームとして意思決定するフェーズです。 全員が納得できる“チームとしての答え”をまとめるため、合意形成・説得・対話・妥協などのスキルが必要となります。
→ここでは、チーム内の力関係、発言スタイル、ファシリテーションの有無などが結果に影響します。 ③模範解との比較・振り返り(Scoring & Reflection)
最後に、事前に用意された専門家による模範解答と自分たちの回答を照らし合わせ、スコア化します。 個人の判断とチームの判断のどちらが模範解に近かったか、どこで認識のズレが起こったかを可視化し、振り返り(デブリーフィング)を行います。
→この段階で、自分の強み・チームとしての特性・改善点が言語化され、学びが定着します。
3. 代表的なシナリオ例と学べること
ゲーム名 | シナリオ内容 | 主な学習テーマ |
NASAゲーム | 月面で遭難。15アイテムを重要順に並べる | 合意形成、ロジカルコミュニケーション |
砂漠からの脱出ゲーム | 砂漠で墜落。基地へ生還するためのサバイバル判断 | リスク評価、チームワーク、優先順位付け |
雪山遭難ゲーム | 吹雪の中で身を守る行動を決める | 危機管理、情報整理、集団意思決定 |
マリンサバイバル | 救命ボート上での限られた物資選択 | 資源管理、共通目標意識の醸成 |

4. 参加者が“自然に盛り上がる”3つの心理トリガー
■ トリガー①:得点化される「競争性」ゲーム終了後には必ずスコアが出るため、結果が明確です。個人とチームのスコアが比較され、「個人で考えた方が良かったのか? チームで決めた方が正しかったのか?」という気づきが生まれます。 ■ トリガー②:制限時間による「集中状態」
議論には制限時間(20~30分程度)が設けられており、時間が進むにつれて参加者の集中力が高まります。 “今ここ”に全員の思考を集約させる“ゲーム特有の集中感”が生まれます。 ■ トリガー③:全員が“当事者”になる「共有リスク」
全員で決めた順位が“正解”と照らして点数化されるため、「誰が責任者か」ではなく“全員が結果に責任を持つ”構造になっています。 この構造が、自然と参加者のエンゲージメントを高めます。

5. なぜ、コンセンサスゲームはチーム研修に向いているのか?
チームビルディングを目的とした研修では、「役割意識」「相互理解」「協働姿勢」を育てることが重要ですが、これらを一度に体験させるのは難しいのが現実です。 コンセンサスゲームは、あえて非日常の状況において、 • 自分の価値観を言語化する• 他者の意見を尊重する
• チームとして1つの判断にたどり着く という職場でも必要な能力を“疑似体験”させることができるため、 「ゲーム感覚の中で、学びが腹落ちする」ことが最大の特長です。

ゲーム理論の基礎とチーム学習
チームの「行動原理」を理解し、協調性を戦略的に育てる コンセンサスゲームを単なる“おもしろい体験”にとどめず、実務に直結する学びに昇華させるためには、裏側にある「ゲーム理論」という考え方を理解しておくことが有効です。 ゲーム理論とは、もともと経済学の分野から発展してきた意思決定の理論であり、個人や組織が“他者との相互作用の中でどのように行動すべきか”を数学的に分析するためのフレームワークです。 現代では、経営戦略・交渉術・政治・軍事・心理学など、さまざまな分野に応用されており、チームビルディングや組織行動の理解にも非常に有効なツールとされています。
1. 超速レビュー:3つのゲーム理論キーワード
ここでは、コンセンサスゲームの理解を深めるうえで特に役立つ3つの概念を取り上げ、研修での活用例を交えて紹介します。 囚人のジレンマ(Prisoner’s Dilemma) • 定義:「協力した方が全体にとっては得だが、自分だけ裏切るともっと得をする」というジレンマ構造。• 研修での再現:「チームで話し合うといい結果になる」とわかっていても、「自分の答えが正しい」と思った人が自分の意見を強く主張し、チーム内での衝突が起こる状況に似ている。
• 気づきポイント:「自分の正しさ」より「全体最適」に目を向ける難しさと重要性。 協調ゲーム(Cooperative Game)
• 定義:プレイヤー同士が協力し、合意形成によって最大利益を目指すタイプのゲーム。
• 研修での再現:意見の違いを乗り越えてチームとしての結論を出せた時、それが個人の点数を上回ることが多い。
• 気づきポイント:「合意形成」はスキルであり、協力が戦略的に“得”を生むことを体感できる。 ナッシュ均衡(Nash Equilibrium)
• 定義:すべてのプレイヤーが、自分の選択を変えても損をするため、誰も戦略を変えない状態。
• 研修での再現:グループ内で、全員が「この順位で納得しよう」という安定した合意が取れる状態。
• 気づきポイント:安定した合意が“ベストな結果”とは限らないこともある。より高い成果を目指すには、時にはリスクを取った再提案が必要。

2. 利得行列で行動を“見える化”する
ゲーム理論の最大の魅力は、「行動の結果」を数値化して比較できる点にあります。 たとえば、次のような**利得行列(ペイオフマトリクス)**を使って、チーム内の選択と結果を可視化することができます。 ★ 利得行列の例(NASAゲーム)他のメンバー:チーム案に従う | 他のメンバー:自分の案を押す | |
自分:チーム案に従う | (8, 8) → 相互協力の高得点 | (2, 10) → 利他的損失/利己的得 |
自分:自分の案を押す | (10, 2) → 利己的得/他者の損失 | (4, 4) → 双方が自己主張して不完全合意 |
②最悪の結果(4,4):お互いが主張を譲らず、均衡は取れているが、成果としては中途半端。 このように、研修後にチームの行動を利得行列にマッピングして議論することで、 • なぜその判断をしたのか?
• どうすればもっと高い得点を取れたのか?
• 「譲る」「まとめる」「説得する」とはどういう行為だったのか? といった内省と再構築が生まれます。これは、ただ“楽しかった”で終わらせないための極めて有効な手法です。
3. ゲーム理論的思考がチームにもたらす3つの効用
①「戦略的協力」を学ぶコンセンサスゲームでは、意見を出す・聞く・まとめるといった行動のどれを取っても、相手の出方によって結果が変わるという「相互依存性」が存在します。 この状況において、単なる“仲良し協力”ではなく、戦略的に協力する=チーム全体の最適解を導くための行動をどう選ぶかを体感できます。 ② 自分の判断を“他者目線”で捉え直す
ゲーム理論のフレームを使って振り返ると、「あのときなぜ私は意見を押し通したのか」「なぜ反対しなかったのか」といった、自分の選択の背景やクセに気づくことができるようになります。 これは“自己理解”の第一歩であり、マネジメント層の研修では特に価値が高い部分です。 ③ 共通言語としての“協調戦略”が育つ
チームで学んだ「協力するとお互い得をする」という体験は、その後の業務において**“共通認識”として浸透しやすい**です。 例えば、「これは今“囚人のジレンマ”に陥ってない?」といった会話ができるようになれば、冷静にチームの意思決定を俯瞰する力が育ちます。
チームビルディングに効く3つの学習効果
“気づき”から“行動”へ――チームの変化を実感できる瞬間とは?
前章では、ゲーム理論の視点から「なぜコンセンサスゲームが学びにつながるのか」を理論的に解説しました。 ここからはより実務に近づけて、「このゲームを研修に導入すると、どのようなチーム変化が起こるのか?」という視点で、3つの代表的な学習効果をご紹介します。
効果①:コミュニケーションの“質”が向上する
■ 単なる「発言量」ではなく「伝え方」が変わるコンセンサスゲームでは、自分の主張を通すにはただ発言するだけでなく、“なぜそれが重要か”という理由や背景を筋道立てて説明する力が求められます。つまり、ロジカルな説明+共感的な伝え方=納得感がセットで必要になるのです。 例:「酸素ボンベが1番だと思います」
→「なぜなら人間はまず生存が最優先だからです。酸素がなければ、他のアイテムも使えませんよね。」 こうした発言が増えると、会議や日常業務でも •「○○だと思います」だけでなく
•「なぜそう考えるのか」「他にどんな選択肢があるのか」
といった議論の深度が上がるようになります。 ■ 受け身→発信型コミュニケーションへの変化
また、普段は発言が少ないメンバーでも、「今ここで発言しなければチームの成果に影響する」という文脈の中では、自然と発言するようになります。 これによって、“参加者の役割認識”が変わり、研修後も主体的に発言するマインドを持続しやすくなるのです。
効果②:心理的安全性と相互信頼が育まれる
■ 個人の“失敗”が学びに転換される場コンセンサスゲームでは、最終的に「個人スコア」「チームスコア」「模範解答スコア」が比較されます。個人スコアが極端に低かった参加者が、 「私はこの順位にしてしまったんですが…」と打ち明けたとき、 他のメンバーが「なるほど、そういう考え方もあるね」と受け止めることで、“失敗しても安心して共有できる空気”が醸成されていきます。 これは、まさに組織にとって必要な心理的安全性(Psychological Safety)の土台となる体験です。 ■ “全員が責任を持つ”構造が信頼を生む
さらに、最終スコアは**「チームとしての答え」**に対して評価されるため、 •誰かの責任にする
•発言しないで責任逃れする
といった行動がしづらくなります。この“運命共同体感”が自然と生まれる仕組みが、メンバー間の信頼関係を築く重要な一歩になるのです。
効果③:合意形成プロセスの“型”がインストールされる
■ 合意形成は“属人的”ではなく“スキル”であると理解する 多くの現場では、•会議で結論が出ない
•意見が衝突して収集がつかない
•声の大きい人の意見に流される
といった、非効率な合意形成の問題が起こっています。 コンセンサスゲームでは、時間内に全員が納得できる結論を導かなければならないため、 • 議論の焦点を明確にする
• 評価基準を最初に共有する
• 重要度の優先順位を擦り合わせる といった“合意形成のための行動パターン”を半強制的に学ぶ構造になっています。 これは言い換えると、“意見をどうまとめれば合意形成ができるのか”という“型”を体得するプロセスです。 ■ この“型”は、明日からの会議で即使える
研修後に最もよく聞かれるコメントが、 「今までの会議では、なんとなく“空気で決まる”ことが多かった。でも、今日やったみたいに“評価基準をはじめに共有する”だけで、話し合いがスムーズになることに気づきました。」 という声です。 このように、体験から得た合意形成の“共通言語”が、職場の日常のミーティングや意思決定の場に持ち込まれやすくなります。これが「職場への“学びの転移”」を強力に後押してくれるはずです。
研修設計ガイド!実施前・当日・後日の3フェーズ
ゲームを“学び”に昇華するための設計とは?
コンセンサスゲームは、単に「楽しく盛り上がるアクティビティ」として終わらせることもできますが、研修として最大限の学習効果を引き出すには、設計が命です。 ここでは、「事前」「当日」「後日」という3つのフェーズに分けて、研修設計のポイントを解説します。 “1回きりのレクリエーション”ではなく、“継続的な組織学習の起点”として機能させるためのヒントをお伝えします。
【フェーズ①】事前:目的設定と環境準備がすべてを左右する
■ 研修の“ねらい”を明確にするまず最初に考えるべきは、研修を通してどのような変化・成長を期待するのかという「ねらい」です。目的が曖昧なまま進めると、評価も改善も難しくなります。
目的の例 | 適したゲームテーマ |
コミュニケーション改善 | NASAゲーム、マリンサバイバルゲーム |
合意形成力の向上 | 砂漠脱出、雪山遭難 |
リーダーシップの育成 | チーム内役割分担型ゲーム |
成果を可視化するために、定量・定性のKPIを設定しておくことが重要です。
指標カテゴリ | 例 |
定量KPI | ・会議時間短縮率(前後比較)・話し合いでの発言回数・個人スコアとチームスコアの差分 |
定性KPI | ・チーム内の満足度評価・“気づき”の質(アンケート記述内容)・行動観察シートでの変化点 |
• 人数:4~6名/1チームがベスト(話し合いの活発さと制御のバランス)
• 時間:基本は90分~120分(準備・実施・振り返り含む)
• 備品:ゲームシート、ワークシート、タイマー、模範解答スライドなど
• 座席配置:丸テーブルや対話がしやすい島型レイアウトがおすすめ
【フェーズ②】当日:ゲーム進行とデブリーフィングが学びの要
■ プログラム構成(例:90分)時間帯 | 内容 |
0:00 | 研修の目的・実施背景 |
0:10 | ルール説明・個人ワーク(20分) |
0:30 | チームワーク(20~30分) |
1:00 | 正解発表・スコア計算(10分) |
1:10 | チームワーク(20~30分) |
1:30 | デブリーフィング(振り返り)(20分) |
1:50 | 最後のまとめ(10分) |
1. ルールはシンプルに、曖昧さは残さない
→ ゲームの本質は“内容の曖昧さ”であって、ルールの不明瞭さではありません。 2.タイムマネジメントを明確に
→ 残り時間のカウントダウンをプロジェクターなどで表示し、緊張感を演出。 3. 観察者(サブファシリ)による行動記録
→ 誰が発言していたか/誰が巻き込まれていなかったかを記録することで、後の振り返りに活用。
【フェーズ③】後日:フォローアップで“行動定着”へ
■ アンケートによる定量・定性フィードバック • 「最も印象に残った場面は?」• 「実務で生かせそうだと思ったことは?」
• 「チーム内での自分の役割をどう認識したか?」 といった質問を入れることで、研修の“気づき”が内省につながります。 ■ 振り返りワークシートやチェックリストの配布
1週間以内に以下のような簡易ツールを配布することで、学びの転移を促します。 例:「合意形成チェックリスト」抜粋
□ 相手の意見の背景まで聴き取ったか?
□ チームで評価基準を共有できたか?
□ 結論が出ない時に収束案を提案できたか? ■ 実務への橋渡しを促す施策
• OJT先との連携:上司に「本人が研修でこういう学びを得た」というフィードバックを共有
• フォローアップミニ研修:1ヶ月後にミニゲーム(別シナリオ)で再確認することで“忘却曲線”を補う
• Slack等で週1回のリマインダー配信:合意形成Tipsを配信することで学びを習慣化
成功に導くためのポイントと落とし穴
“ただ楽しい”で終わらせないために――研修運営の注意点と改善策
コンセンサスゲーム研修は、多くの組織で「参加者一番盛り上がったセッション」として評価されます。 しかし裏を返せば、運営方法や設計を誤ると、学習効果が限定的になってしまうリスクもあるということです。 この章では、研修の現場で実際に起こりやすい“落とし穴”と、それを回避し効果を最大化するための5つの成功ポイントを具体的にご紹介します。成功ポイント①:“気づき”を中心に据える評価設計
● 落とし穴:「勝った・負けた」で終わるゲーム化 ゲームにスコアがあると、「チームAが勝った」「うちのチームは失敗だった」と勝敗の結果にばかり目が向き、本来の学びである“合意形成のプロセス”や“思考の深さ”が置き去りにされることがあります。 ✔ 対策:「スコアは“気づき”の入口にすぎない」と明言する
研修冒頭やデブリーフィングで、「スコアはあくまで振り返りの材料であり、目的は議論の質を高めること」と講師がしっかり伝えることが重要です。
成功ポイント②:発言の偏りを防ぐ仕組みを用意する
● 落とし穴:声の大きい人が議論を支配
リーダータイプの参加者が自分の正しさを主張しすぎると、他のメンバーが発言しづらくなり、“名ばかり合意”が形成される恐れがあります。 ✔ 対策1:「1人1意見ルール」「発言カード」の導入
•発言カード(1人3枚)を配り、使い切るまで発言できるルールを導入
•「誰の意見も1回は聞く」などのルールをあらかじめ合意する ✔ 対策2:観察者の配置
ファシリテーターや観察者が「発言量・傾聴のバランス」を観察しておき、デブリーフィング時にフィードバックすると、チームの構造的な癖に気づけるようになります。
成功ポイント③:「評価基準の共有」に注目させる
● 落とし穴:議論が“意見の押し合い”になる
ゲームに慣れていない参加者ほど、「私はこう思う」「いや、それは違う」と自分の価値観だけで意見を出し合い、議論が空中分解することが多いです。 ✔ 対策:「チーム内で“何を基準に判断するか”を最初に決める」ワークを入れるたとえば、「酸素=生命維持」「通信機=救助可能性」といった評価軸を全員で定義してから話し合うと、議論が論理的になり、無駄な対立が減ります。
成功ポイント④:ゲームと実務の橋渡しを意識する
● 落とし穴:「楽しかった」で終わってしまう
非常に多いのが、「思っていた以上に盛り上がったけれど、明日から何が変わるのか分からない」という感想で終わってしまうケースです。 ✔ 対策:実務シーンに応用するワークをセットで実施例:「明日の会議で“意見をまとめる場面”があれば、どんなプロセスで進めるか?」という問いを与え、参加者に“研修→現場”の架け橋を具体的に想像させることがポイントです。
成功ポイント⑤:難易度・人数・時間の“黄金バランス”を守る
● 落とし穴:時間が足りず結論が出ない or 議論が浅くなる
✓項目数が多すぎる(例:20個以上)✓1チームの人数が多すぎて全員が発言できない(例:7名以上)
✓残り5分でまだ結論が出ていないが焦って無理に決める このような状態では、学習効果が大きく損なわれます。
ワンポイント:失敗談を学びに変える方法
とある企業では、「合意が取れないまま無理に順番を決めてしまい、全員がモヤモヤした」というフィードバックがありました。 しかし、この“失敗感”をデブリーフィングで以下のように活用したことで、学びの質がむしろ深まりました。 •「なぜ合意が取れなかったのか?」•「どのタイミングで“評価基準”をすり合わせるべきだったか?」
•「今後の業務で、同じような場面があったとき、どうする?」 このように失敗すらも教材に変えられるのが、コンセンサスゲームの奥深さです。

まとめ
現代の職場においては、「誰かが決めてくれる」ではなく、チームでより良い“納得解”を導く力が求められるようになりました。複雑で正解が一つではない時代において、メンバー全員が対話を通じて意思決定に参加する――このプロセスが、組織のレジリエンス(変化対応力)を育てる基盤となります。 本コラムでは、その実践的な手段として、〈コンセンサスゲーム×ゲーム理論〉を組み合わせた研修手法をご紹介してきました。 ✅コンセンサスゲームとは
NASAゲームや砂漠脱出など、架空の危機状況をもとに「個人判断 → チーム合意 → 振り返り」を行う体験型学習。
→ 楽しみながらも、合意形成・コミュニケーション・リーダーシップが育つ構造。 ✅ゲーム理論との融合で学びが深化
「囚人のジレンマ」「ナッシュ均衡」などの理論で、チーム行動を可視化・言語化できる。
→ 感覚的な“気づき”を理論で補強し、実務に活かせる理解へ昇華。 ✅チームビルディングへの3大効果
1.発言力と傾聴力が両立する“質の高い対話”が生まれる
2.心理的安全性と相互信頼が醸成される
3.合意形成の「型」が共有され、会議や業務に転移されやすくなる ✅設計の工夫とフォローアップが学びを定着させる
•目的・KPI設計
•適切な難易度とタイムマネジメント
•デブリーフィング+ミニ学習のセット設計
•Slack配信やマイクロラーニングで“学びを習慣化” 今、求められるのは“合意形成の文化”
コンセンサスゲームは、一度実施すれば終わるものではありません。 研修をきっかけに、
•会議で「どう決めるか?」を考えるようになり、
•意見の違いを“対立”ではなく“多様性”と捉え、
•誰か任せの意思決定から「みんなでつくる結論」へと変わっていく
―そうした文化の芽が、確かに生まれていきます。 だからこそ、ゲームは“遊び”ではなく、組織文化をつくる教育装置として位置づけるべきです。 これから導入を検討する方へ:3つのステップ
1.小規模チームでのパイロット実施
→ 成果と反応をデータで収集。成功事例化。
2.社内ファシリテーターの育成
→ 実施コストを抑えつつ、研修内製化を推進。
3.階層別・テーマ別への展開
→ 若手:コミュニケーション/中堅:リーダーシップ/管理職:意思決定支援 などテーマ別に展開。
✓内定者フォローアップ研修として
✓部門横断型プロジェクトのチームビルディング
✓新入社員研修での主体性・協働性強化
✓地域イベント・異業種交流会でのアイスブレイク ご希望に応じて、人数や時間、業種、目的に最適化したカスタマイズ提案も可能です。また、ファシリテーター派遣や運営サポートも行っておりますので、「初めてで不安…」という方も安心してご相談いただけます。 「楽しいだけで終わらせない。行動変容につながる“学びのレクリエーション”へ」
イベントの価値をワンランク引き上げたい方は、ぜひビジネスゲーム研究所までお気軽にご相談ください。資料請求や導入事例などもご用意しております。ぜひ参考にしてみてください。
【執筆者情報】
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間100登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。