最近改めて注目されているリーダーシップ理論とは?サーバントリーダーシップのご紹介

最近改めて注目されているリーダーシップ理論とは?サーバントリーダーシップのご紹介

最近改めて注目されているリーダーシップ理論とは?サーバントリーダーシップのご紹介

リーダーシップは組織の成否を大きく左右する要素であり、その理論は時代とともに進化・変化してきました。

今回は、主要なリーダーシップ理論について、その起源、特徴、適用の適性などを人事の観点から掘り下げていき、 最近、再注目されているサーバントリーダーシップについてご紹介していきたいと思います。

まずは著名なリーダーシップ理論を5つご紹介いたします。

リーダーシップ理論5選のご紹介

①サーバントリーダーシップ


起源:ロバート・K・グリーンリーフが1970年に提唱。
特徴:リーダーが部下に積極的に関わり、意見に耳を傾けます。そのうえで組織の進むべき方向を指し示し、奉仕することで人を導くもの
メリット:従業員の満足度が高まり、チームの連帯感が強化される。
デメリット:決断が遅れがちになることがある。
適性: 従業員の自律性が高く、組織文化が協調性を重んじる場所。

サーバントリーダーシップを象徴するような人物は?
⇒ハーブ・ケラハー(サウスウェスト航空の共同創設者)やケン・ブランチャード(経営コンサルタント、著者)などがサーバントリーダーシップの代表例とされます。彼らは従業員の成長と幸福を最優先に置き、それによって組織の成功を図りました。

②変革的リーダーシップ


起源:ジェームズ・V・ダウントンが1973年に初めて用語を用い、後にバーンズが発展させた。
特徴:組織や従業員の変革を促すために、インスピレーションを与える。
メリット: 革新的でビジョンが明確な組織変革を促進する。
デメリット: リーダーへの過度な依存を生むリスクがある。
適性: 変化を求める環境や目標達成に向けた動機づけが必要な場合。

変革的リーダーシップを象徴するような人物は?
⇒アップルの共同創設者であるスティーブ・ジョブズやマイクロソフトのビル・ゲイツは、変革的リーダーシップの良い例です。彼らはビジョンを持ち、それを追求することで、従業員やフォロワーを鼓舞し、業界を変革しました。

③カリスマ的リーダーシップ


起源: マックス・ウェーバーが概念を最初に提唱し、1970年代にロバート・ハウスが理論化。
特徴: リーダー個人の魅力や影響力によってフォロワーを動かす。
メリット: 強い影響力で困難な時期においても従業員を鼓舞する。
デメリット: リーダーが去った後の継続性の問題。
適性: 危機管理や新しいビジョンを共有する必要がある場合。

カリスマ的リーダーシップを象徴するような人物は?
⇒オプラ・ウィンフリーやマーティン・ルーサー・キング・ジュニアは、その魅力と影響力で多くの人を惹きつけ、導いたカリスマ的リーダーの例です。

④状況対応リーダーシップ


起源: ポール・ハーシーとケン・ブランチャードが1969年に提唱。
特徴: リーダーが従業員の能力や動機に応じてリーダーシップスタイルを変える。
メリット: 柔軟で、個々の従業員にカスタマイズされたアプローチ。
デメリット: 状況判断を誤ると効果が薄れる。
適性: 多様な能力やモチベーションレベルを持つ従業員がいる環境。

状況対応リーダーシップを象徴するような人物は?
⇒ジャック・ウェルチ(元ゼネラル・エレクトリックCEO)は、状況に応じてリーダーシップスタイルを変えることで知られています。彼は組織のさまざまなニーズに対応し、そのリーダーシップを効果的に適用しました。

⑤取引型リーダーシップ


起源: マックス・ウェーバーが1947年に初めて記述し、ダウントンとバーンズが発展させた。
特徴: 明確な報酬と罰を通じて従業員を動機づける。
メリット: 目標達成に対する直接的なインセンティブが明確で、短期的な成果を促進する。
デメリット: 長期的な動機づけや従業員の自己成長を無視する傾向がある。
適性: 短期的な目標や成果が明確な業務、高い構造化が求められる環境。

取引型リーダーシップを象徴するような人物は?
⇒ヴィンス・ロンバルディ(アメリカンフットボールの伝説的コーチ)は、取引型リーダーシップの典型的な例です。彼は明確な目標設定と報酬・ペナルティシステムを用いてチームを成功に導きました。

これらの理論がリーダーシップの多様性を示しているように組織の状況や文化、従業員のニーズに応じて適切なスタイルを選択することが重要なのです。人事の担当者の方は、これらの理論を理解し、組織・チームの目標達成に最も効果的なリーダーシップの発展を支援する役割を担っているのです。

それぞれのリーダーシップ理論の特徴はどういったもの?


サーバントリーダーシップは、従業員のエンゲージメントを高めるために特に有効ですが、すべての決定を下すのに時間がかかることがあります。 変革的リーダーシップは、変化に対して開かれた文化を持つ組織で特に有効ですが、リーダーに対する依存度が高くなるリスクがあります。 カリスマ的リーダーシップは、従業員を鼓舞し新たなビジョンを提供するのに有効ですが、リーダーの個人的な魅力に過度に依存すると継続性に問題が生じることがあります。

状況対応リーダーシップは、従業員一人ひとりに合わせたアプローチが可能ですが、状況の判断を誤ると効果が減少します。 取引型リーダーシップは、目標達成に向けた即効性がありますが、長期的な視点を欠くと従業員の自己成長や継続的なモチベーションを促進しづらくなります。

最終的に、どのリーダーシップスタイルも一長一短があります。人事担当者は、それぞれのリーダーシップスタイルがもたらす影響を理解し、適切なリーダーシップを開発できるプログラムを設計することで、組織にとって最適なリーダーシップを育てることが求められているのです。

最近、再注目されているサーバントリーダーシップはどういうもの?

サーバントリーダーシップのサーバント(servant)は使用人、召使いという意味です。つまり、組織に奉仕するリーダーということになります。召使いとリーダーというと、真逆の立場のような気がしますが、このサーバントリーダーこそ、これからの組織に必要とされるリーダーだと言われています。

サーバントリーダーの10の特性


傾聴 (Listening)


大事な人達の望むことを意図的に聞き出すことに強く関わる。同時に自分の内なる声にも耳を傾け、自分の存在意義をその両面から考えることができる。

共感 (Empathy)


傾聴するためには、相手の立場に立って、何をしてほしいかが共感的にわからなくてはならない。他の人々の気持ちを理解し、共感することができる。

癒し (Healing)

集団や組織を大変革し統合させる大きな力となるのは、人を癒すことを学習する事だ。欠けているもの、傷ついているところを見つけ、全体性(wholeness)を探し求める。

気づき (Awareness)


一般的に意識を高めることが大事だが、とくに自分への気づき(self-awareness)がサーバント・リーダーを強化する。自分と自部門を知ること。このことは、倫理観や価値観とも関わる。

説得 (Persuasion)


職位に付随する権限に依拠することなく、また、服従を強要することなく、他人の人々を説得できる。

概念化 (Conceptualization)


大きな夢を見る(dream great dreams)能力を育てたいと願う。日常の業務上の目標を超えて、自分の志向をストレッチして広げる。制度に対するビジョナリーな概念をもたらす。

先見力、予見力 (Foresight)


概念化の力と関わるが、今の状況がもたらす帰結をあらかじめ見ることができなくても、それを見定めようとする。それが見えたときに、はっきりと気づく。過去の教訓、現在の現実、将来のための決定のありそうな帰結を理解できる。

執事役 (Stewardship)


エンパワーメントの著作でも有名なコンサルタントのピーター・ブロック(Peter Block)の著書の書名で知られているが、執事役とは、大切な物を任せても信頼できると思われるような人を指す。より大きな社会のために、制度を、その人になら信託できること。 人々の成長に関わる (Commitment to the Growth of people)
人々には、働き手としての目に見える貢献を超えて、その存在をそのものに内在的価値があると信じる。自分の制度の中のひとりひとりの、そしてみんなの成長に深くコミットできる。

コミュニティづくり (Building community)


歴史のなかで、地域のコミュニティから大規模な制度に活動母体が移ったのは最近のことだが、同じ制度の中で仕事をする(奉仕する)人たちの間に、コミュニティを創り出す。

出典:サーバントリーダーシップ ロバート・K・グリーンリーフ (著), 金井 壽宏 (監修), ラリー・C・スピアーズ (編集), 金井壽宏 (監修), 金井 真弓 (翻訳)

サーバントリーダーシップ育成に取り組んできた企業事例


(1)株式会社サイバーエージェント


株式会社サイバーエージェントは、「21世紀を代表する会社を創る」というビジョンのもと、多様なインターネット広告事業を手がける会社です。「Abema TV」の運営もおこなっています。
同社では、「優秀な人材を活かすためにはサーバントリーダーシップが重要」と考え、人材活性化の取り組みによって、100社以上もの子会社が創出。新規事業を創出するために「スタートアップJJJ」という制度を設立したそうです。

(2)スターバックスコーヒー


スターバックスコーヒーもサーバントリーダーシップに注力する企業と言われています。元社長であるハワード・ビーハー氏は「スターバックスが世界的企業になったのは、サーバントな文化・人を大切にする文化を原動力としていたから」と語っています。そのような思いは今でも継承されており、「経営陣よりも現場で働く社員の方が大切である」という哲学を大切にしている会社です。
マネージャーを対象にした「奉仕型セミナー」を開催するなど、人と人とのつながりを大切にしたチームをつくるべく、さまざまな取り組みを行われているそうです。


まとめ


サーバントリーダーシップの理論が誕生した1970代からさらに時が経過し、現在ではVUCA時代と呼ばれるような不確実性が高い時代になってきました。 またIT技術の進化とともにビジネスのスピードも上がってきています。そうした中で、支配型のトップダウンで指示するやり方は少々非効率になってきているのです。 上司の指示に頼って業務に取り組むのではなく、自身で課題を検討し、業務を進めていける「主体性」が求められます。やらされごとで考えていてはいつまで経っても受け身のままになってしまいます。

部下が活躍できるようにリーダーが今までとは違うリーダーシップ理論を意識してマネジメントをすることも大切ですし、変化を積極的に起こしていくことが求められるリーダーにとって、サーバントリーダーシップはとても重要なのです。ぜひ参考にしてみてください。


【執筆者情報】

ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃

研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間100登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。

ビジネスゲーム検索

  • 階層

    選択してください
  • 目的/業界

    選択してください
  • 人数

    選択してください
  • 時間

    選択してください