営業研修の中に取り入れるべきマーケティング戦略・フレームワーク5選をご紹介

営業研修の中に取り入れるべきマーケティング戦略・フレームワーク5選をご紹介

営業研修の中に取り入れるべきマーケティング戦略・フレームワーク5選をご紹介

マーケティング戦略

「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」

という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?

これは、経営学者のドラッカーが『マネジメント』という著書の中で述べている言葉です。
営業をしている方からすると、理想的な言葉ではあると思いますが、マーケティングの考え方を持てているか持てていないかで、営業力は変わってくるはずです。

今回は、営業研修の中に取り入れるべきマーケティング戦略・フレームワークと営業研修時に取り入れる際のポイントをご紹介したいと思います。

目次
マーケティング戦略・フレームワーク”5選”
①4つの競争地位別戦略
②イノベーター理論
③フリー戦略
④BOPマーケティング
⑤AIDMAの法則とAISASの法則
営業研修で取り入れる際の2つのポイント

マーケティング戦略・フレームワーク”5選”

①4つの競争地位別戦略

まずは、競争地位別戦略と呼ばれるものです。これは、1980年にアメリカの経営学者、フィリップ・コトラーが提案した競争戦略の理論です。コトラーは企業が保持している経営資源の質と量により、業界内の各企業を、リーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーの4つに分類し、それぞれの地位に基づいた戦略があると提唱しました。

・リーダー
・チャレンジャー
・フォロワー
・ニッチャー

リーダーは、業界シェア1位の企業です。
チャレンジャーは、業界シェア2位以下でトップを狙う企業です。
フォロワーは、業界シェア3位以下の企業でトップを狙っていない企業です。
最後のニッチャーは、スタートアップなどの零細、ベンチャー企業が規模は小さいながらも業界の大手が参入しないような市場で独自の地位を築いている企業です。

マーケティング戦略

研修時に気を付けるべきポイント ここ最近では、コトラーの競争地位別戦略シェアが明確ではない場合や新しい市場(IT系など)では、4つに分類することが難しいなど問題点も指摘されているようです。

②イノベーター理論

2つ目にご紹介するものは、イノベーター理論というものです。イノベーター理論とは、新しい製品、サービスの市場への普及率を表したマーケティング理論です。スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャーズ教授が『イノベーション普及学』という著書の中で 1962年に提唱されました。 イノベーター理論では、商品やサービスの普及の過程を5つの層に分類しており、それをもとにマーケティング戦略を検討することが推奨されているのです。

普及の5つの層

イノベーター(Innovators:革新者)
冒険心にあふれ、新しいものを進んで採用する人。市場全体の2.5%。

アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用層)
流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人。他の消費層への影響力が大きく、オピニオンリーダーとも呼ばれる。市場全体の13.5%。

アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随層)
比較的慎重派な人。平均より早くに新しいものを取り入れる。ブリッジピープルとも呼ばれる。市場全体の34.0%

レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随層)
比較的懐疑的な人。周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をする。フォロワーズとも呼ばれる。市場全体の34.0%。

ラガード(Laggards:遅滞層)
最も保守的な人。流行や世の中の動きに関心が薄い。イノベーションが伝統になるまで採用しない。伝統主義者とも訳される。市場全体の16.0%。

ロジャーズ教授は、イノベーターとアーリーアダプターへの普及率を合わせた16%をどう攻略するかが、その製品、サービスが普及するかどうかの分岐点になるとし、さらにその16%を超すことの難しさから 「普及率16%の壁」として提唱しています。

マーケティング戦略

③フリー戦略の4つのモデル


3つ目は、アメリカの総合誌「WIRED」の当時の編集長のクリス・アンダーソンが紹介し、有名になった4つの無料(フリー)のビジネスモデルです。

(1)直接的内部相互補助モデル


(2)三者間市場モデル
(3)フリーミアムモデル
(4)非貨幣経済モデル

(1)直接的内部相互補助モデル


ある商品を1つ買えば、「2つ目が無料」といったケースのものです。 人は『無料』に惹かれる傾向があるため、単なる値引きよりも効果的とされています。

(2)三者間市場モデル


消費者が無料で得るために第三者(広告主)が費用を払うといったもです。 テレビやラジオ、またはGoogleなどのインターネットメディアで利用されるものです。

(3)フリーミアムモデル


無料サービスで広く顧客を集めて、その一部が有料サービスを利用することによって、収益を上げるモデルです。スマホの無料ゲームなどが当てはまります。
※フリーミアムとは「フリー(無料)」、「有料(プレミアム)」を合わせた造語です。
昔からある試食や無料サンプルもフリーミアムの一部と言えるでしょう。

(4)非貨幣経済モデル


注目(トラフィック)と評判(リンク)という金銭以外のインセンティブによって成り立つもので、 WikipediaやAmazonのレビューなどが挙げられます。

④BOPマーケティング


ミシガン大学ビジネス・スクールのC・K・プラハラード教授が2004年に提唱したもので、 「BOP」とは、世界の貧民層のことを意味しています。

世界人口が約74億人とすると、その約40億人が貧民層といわれていますが、 BOPマーケティングは貧民層を育てて、市場を開拓していく新しいマーケティング手法とされています。

BOP=「Base of the Pyramid」の略。
ここで言うピラミッドとは、世界の所得別人口構成を、上から富裕層、中間層、低所得者層とピラミッド状の三段階に分類したもので、ピラミッドの下層部とは「低所得者層」のことを指します。 BOPとは一言でいうと「低所得者層」「貧困層」を意味する言葉なのです。

今後、所得が上がることでBOP層が大きな顧客に成長していくことを期待されています。
企業の事例でいうと、ユニリーバのBOP事例が有名です。

【ユニリーバのBOP事例】


BOPビジネスにおいて、世界的に見ても大きな成功例をおさめていると言われているのがユニリーバです。ユニリーバの戦略はインドやフィリピンの、農村部の女性を販売代理人として育成するというもの。販売代理人となる女性たちは、ほとんどが自らもユニリーバ製品を利用する顧客です。

インドの農村部では衛生環境が悪く、多くの死者が発生していました。そこでユニリーバは政府との連携により、手洗いなどを啓蒙する衛生教育セミナーを開催すると共に、顧客である女性たちを販売員として育成することに。これが現地女性の自立につながり、結果としてユニリーバ独自の流通網を獲得することにもつながりました。

また、販売する商品にもひと工夫があります。BOP市場において販売されるのは、通常商品よりも容量の少ない小分け・使い切りタイプの商品なのです。小分けパックや使い切りサイズの商品であれば単価も安くなり、低所得者の購入に対するハードルを下げることができます。

ユニリーバはBOPビジネスにおいて大きな利益をあげ、ビジネスと社会貢献の両立・現地社会の発展を実現したのです。

前述の事例でご紹介したBOPビジネスに成功した企業だけではなく、もちろん失敗した企業や事例も数多く存在しています。失敗の原因は、「不適切な価格設定」や「インフラの対応不足」「信頼性が不足していたこと」などが挙げられます。「BOP層だから安い値段なら売れるだろう」という単純な考えではBOP市場には受け入れられません。

BOP市場における失敗事例にはさまざまな要因が考えられますが、いずれも現地の特性やニーズを把握できていなかったことが共通の要因だと言えます。

出典:Digima~出島~「BOPビジネスの基礎知識 | BOPとは? BOPビジネス事例と課題&成功のポイントとは?」

⑤AIDMAの法則とAISASの法則

古くから存在するマーケティングのフレームワークの中で、 AIDMA(アイドマ)の法則というものがあります。これは1920年代にアメリカのサミュエル・ローランド・ホールが 提唱した消費行動モデルです。

購買までの流れを「認知(Attention)」⇒「関心(Interest)」⇒「欲求(Desire)」⇒「記憶(Memory)」⇒「行動(Action)」の5つに分類しました。

フレームワーク_AIDMA

Attention(認知)
商品について認知し、自ら得た情報から想像し、注目している段階。「知っている」「前に見たことがある」「流行っているのかな」といった消費者心理が働く。

Interest(興味・関心)
商品に興味を感じ、期待を抱く段階。「面白そう」「実物を見てみたい」といった消費者心理が働く。

Desire(欲求
商品の特徴を認識し、購入への欲求が芽生えだした段階。「いいなあ」「やっぱり欲しいな」といった消費者心理が働く。

Memory(記憶)
商品を記憶し、購入時期を検討し始める段階。「給料日になったら買おう」といった消費者心理が働く。

Action(行動)
購入を決意して、店舗へ足を運ぶなど具体的な行動を起こす段階。「さあ、買いに行こう」という消費者心理が働く。

マーケティングをするうえでは、消費者行動の法則を理解し、それに合わせたアプローチをすることが基本です。 一つひとつのプロセスを理解し、適切なアプローチができれば、戦略的な販売活動が行えます。

もう1つのAISASは、ネットの普及により、進化されたものと言っていいでしょう。(電通が提唱)

購買までの流れを「認知(Attention)」⇒「関心(Interest)」⇒「検索(Search)」⇒「行動(Action)」⇒「共有(Share)」の5つに分類したものです。

商品を知ったあとに検索エンジンや楽天市場やAmazonなどで調べ、商品購入。その後、SNSなどのソーシャルメディアを通じて、購入者同士が商品の感想を 共有することだと言われています。最近では、こういった口コミやレビューが消費者の意思決定に大きな影響を与えています。

今回はこの5つを参考に営業研修で伝えるときやワークとして学ぶときのポイントを考察していきたいと思います。

営業研修で取り入れる際のポイント

もし、みなさんが研修担当になったとして、どんなワークやコンテンツにしていきますか? 自社で研修をされる際のポイントは2つあります。

1つ目は、「自社の商品やサービスだったらどうなるのか?をきちんと考えられる演習にすること」ということです。そして、2つ目が「研修の目的をどこに置くか?を設定しておくこと」ということです。

(1)自社の商品やサービスだったらどうなるのか?をきちんと考えられる演習にすること

まず1つ目ですが、例えば、コトラーの4つの競争地位別戦略で研修のワークを取り入れるとしたら、 やはり自社の所属している業界、業種で考えてもらうのが一番、当事者意識が持てるテーマになりますので、実施しやすいでしょう。

仮にビール業界で言えば、このようになると言われています。

リーダー:アサヒ
チャレンジャー:キリン
フォロワー:サントリー、サッポロ
ニッチャー:ヤッホーブルーイング、銀河高原ビール

コンビニ業界でいうと、このようになるそうです。

リーダー:セブンイレブン
チャレンジャー:ローソン 
フォロワー:ファミリーマート、サークルK、サンクス
ニッチャー:セイコーマート、ポプラ

※もちろん、年によって、売上の増減や店舗数の増減もあるので、変動はあります。

●ワークシートイメージ


以下のようなワークシートを作ってもらい、「自社の属している業界、業種で当てはまると、どこの企業がリーダーになるのでしょうか?チャレンジャーはどこの企業なのでしょうか?それぞれの空欄にグループで話し合い、埋めていきましょう。」というようにグループワークで話し合っても良いでしょう。

マーケティング戦略

その際に4つのそれぞれ戦略、戦い方をベーシックなものを紹介し、自社であれば、どういったことを考えたら良さそうかをグループで話し合い、発表してもらうのも良いかもしれません。

マーケティング戦略

演習設計の注意点としては、自社には置き換えづらい戦略やフレームワークも存在するので、演習テーマに向き不向きかどうかを確認した上で決めていきましょう。

営業研修やマーケティング研修時の演習を設計する上で大切なのは、まずは興味を持ってもらい、考えるキッカケにしてもらうことが大切です。

(2) 研修の目的をどこに置くか?を設定しておくこと

次に2つ目の「研修の目的をどこに置くか?を設定しておくこと」ですが、

よく聞かれる声として、

「マーケティングを学んだところで、実践できるわけではないし、、、」
「面白いけど、自社だと難しいよね、、、」
「結局、使える訳ではないんだよなぁ、、、」
といったものです。

私は正直、それでも構わないと思っています。マーケティング戦略やマーケティングのフレームワークを学ぶことによって、実践できるかどうかは確かに難しいかもしれません。ですが、学ぶことで、必ず視野や視点は拡がるはずです。視野や考え方が変わることで柔軟な発想が持つことにつながるはずです。

理想は学んだことがすべて使えるようになることですが、まずは使えるかどうかではなく、視野を拡げ、柔軟な発想、新しい発想が持てるように目的設定してみると良いかもしれません。


今回は、営業研修の中に取り入れるべきマーケティング戦略・フレームワークと営業研修で取り入れる際のポイントをご紹介してまいりました。

マーケティング戦略やマーケティングのフレームワークは若手向けや中堅向けの研修に役に立つはずですので、ぜひ参考にしてみてください。


【執筆者情報】

ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃

研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。

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