感謝の力を侮るな!今、改めて注目されている感謝の持つ力とは

感謝の力を侮るな!今、改めて注目されている感謝の持つ力とは

感謝の力を侮るな!今、改めて注目されている感謝の持つ力とは

ここ5,6年でエンゲージメントや心理的安全性が注目され、その要素として「感謝」という言葉がフォーカスされているのではないでしょうか?

今回のコラムでは、感謝という言葉をキーワードとして、感謝の持つ力について研究者の方々の実験や調査などを参考に考察していきたいと思います。

感謝にまつわる研究結果・調査結果のご紹介


感謝にまつわる世界の研究をご紹介します

①感謝と心拍数の関係性について


感謝と心拍数について調べたMcCratyらの研究結果が存在します。 グラフの横軸の0秒から100秒までは頭の中でフラストレーションが感じることを思い浮かべてもらったときの心拍数です。100秒以降は、頭の中で感謝の気持ちを考えると、非常に穏やかな気持ちになり、心臓の動きが穏やかになっています。

画像出典:相川充氏 元筑波大学教授

②感謝と脳のアルファ波の関係性


感謝と脳のα波の関係性を表した図です。左側の方が基本的なもので、何も思っていないときです。 右側が頭の中で感謝してもらったときで、薄い色ほどα波が出ているようです。 非常に薄いアルファ波がたくさん表示されていることがわかりますが、非常にリラックスした気持ちになるということもわかってきています。

画像出典:相川充氏 元筑波大学教授

③感謝に関する介入研究


Seligmanらの研究もとても興味深いものがあります。 この研究は、参加者たちが「以前ありがたい、いいことをしてもらったにも関わらず、明確に感謝の気持ちを伝えていなかった人たち」に対して、手紙を書いてもらって、それを実際に相手の前に行って手紙を読んでもらうという実験です。

その結果、幸福感が増し、抑うつが減り、1ヶ月間ぐらいはその効果が続いたという結果が出たそうです。

普通の手紙を書いてもらった場合と比較して、実際に感謝の手紙を書いて相手の前で読んだ人たちは、やった直後の幸福感が非常に高まり、1ヶ月後まで普通の手紙を書いた場合より、優位な幸福感に差があり、幸福感が1ヶ月間も持続することがわかったようです。

④感謝による「幸福感」について


EmmonsとMcCullioughらの実験に「日記に感謝を書く」というものがあるそうです。毎晩、寝る前に「ありがたいと思ったこと」を振り返ってもらって、それを日記に書いてもらいます。2-3週間でも、10週間繰り返しても、Well-Beingや幸福感を感じられたそうです。

世界的に見ても、感謝による効果の研究が報告されています。

●相川充先生(元筑波大学人間系教授)のフォーラム記事より抜粋


相川先生は、実は感謝の力が日本人でも同様な結果になるのかを研究されたそうです。

詳細は、この記事(https://imsar.jp/pdf/imsar05/imsar_05_08.pdf)を参考にしていただきたいのですが、
Emmonsらの研究を追試+αの要素で実験したところ、結果としては、日本人で同様の感謝の効果が得られなかったそうなのです。様々な理由が考えられたそうなのですが、面白いと思った着眼点が日本人は感謝するときに「すみません」と同時に謝る感情を持っているというところです。日本人は感謝する場面で謝ることが多いのです。

『それは、受け取った利益と相手に払わせたコストを区別して考えて、相手にコストをたくさん払わせてしまったと思うと、「すみません」と謝るようです』 これは日本人は他の人から何か良いことをしてもらうと、感謝感情だけでなく、負債感情を感じてしまうそうです。
※(負債感情=他人から自分が利益を得ていると認知することによって生じる、他者の行為に報いようとする義務的感情)

そういった点からも感謝の効果を証明できなかったそうなのです。 これは面白いと思いました。確かによく「ありがとうございます」と言うべきシーンなのに、「申し訳ないです」と言ってしまったり、言われたりすることがあります。 感謝をしているのに、申し訳なさを感じている。プラスな効果をマイナスで打ち消しているようです。

相川先生は感謝の力はないと考えているかというとそういう訳ではありません。

感謝の持つ力として、感謝感情がソーシャルスキルを経て対人関係の形成を促すとしています。 感謝を教える実験学級と教えない統制学級を比較したところ、子どもたちの感謝の気持ちが高まったり、 他の子たちとの関係性が向上したそうです。やはり、感謝という力にはプラスな効果があるとしています。

●池田浩先生(九州大学大学院 人間環境学研究院 准教授)より抜粋

九州大学大学院の池田先生は感謝の力についてこう述べています。

感謝をすると「視点取得」と言われる、他者の視点から物事を考えるようになる機能を持つようになり、「他者視点」が身についた結果、パフォーマンスが向上するということらしいのです。

私たちが仕事をしていく中で「あの人だったらどう考えるんだろう」「こういう人から見たらどう思うんだろうか」というように、自分の視点だけではなく、他の人の立場や視点から物事を考えること。それが結果として、同僚や職場に対する自発的な協力行動、または将来に役立ちそうな、先取りした行動をやることが明らかになっています。


画像出典:池田浩氏 九州大学大学院 人間環境学研究院

感謝することによって、他者視点、つまり、視点・視野が拡がり、行動の量や行動の質が最大化することができるとのことなのです。

以上の研究結果、調査結果を見ても感謝の力というのはプラスな効果、ポジティブな効果が得られるのではないかと思います。

感謝することも大事だが、感謝されることも大事


感謝することによってプラスの効果が得られるとご紹介しましたが、相川充先生がおっしゃるように負債感情が高まり、自尊心が下がってしまう可能性もあります。

そこでおすすめなのが、感謝されるように行動するということです。負債感情が高まるということでは、感謝されるほうでは心配はないようです。

ありがとうと言われると、自分は認められたと感じ、承認欲求も満たされます。 その結果、Well-being、つまり幸福感が高まりやすくなるようです。感謝される体験をたくさんすると良いのでしょう。

ただし、注意すべきことが1つあります。感謝される行動を取っても、感謝されなかったときに期待を裏切られて、気分が下がってしまうこともあります。感謝されたいから何か行動を取るよりも、相手のために何かできることはないかと考えて、感謝されなくてもやってあげようという気持ちで、ぜひ行動してみてください。


今回は感謝の力がもたらす効果について考察してまいりました。 感謝すること、感謝されることを意識して行動することで幸福感が高まる効果がありますので、そういった取り組みを意識して行動してみましょう。


【執筆者情報】

ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃

研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。

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