以前のコラムでアンガーマネジメントについてご紹介しましたが、今回はアンガーマネジメントのテクニックを深掘りしてご紹介したいと思います。
今、話題のアンガーマネジメント-「怒り」をうまくコントロールする方法
アンガーマネジメントを勉強するようになって、情報のアンテナ📡をたてているからでしょうか? アンチアンガーマネジメント派というか、アンガーマネジメント意味ない派の方々のご意見や記事を目にする機会が増えました。
そういった方々のコメントを見聞きすると、ほとんどの内容は、私がアンガーマネジメントの講座を受ける前に感じていたことと同じだなと感じました。
私自身、アンガーマネジメントを本格的に受ける前は、だれかのコメントや紹介されている記事だけを鵜呑みにして、本質を見極めようとしていなかったものです。
例えば、「6秒待てば怒りは消えるから待つべし」と書いてあったら、「6秒待ったから消えんやろ!」とか、怒りも大切な感情やのになんで我慢して、押しつぶさないとあかんねん。と思っていました。
受講するようになって、実はそうではないことを知るのですが、アンガーマネジメントに関する誤った伝わり方や解釈に誤りがある記事を信じてしまい、アンガーマネジメント=無意味、うさんくさいと端から思い込んでしまっていたのです。
アンガーマネジメントが急速に波及しているからこそ、誤った解釈で伝わってしまっているケースがあると、日本アンガーマネジメント協会の安藤さんや戸田さんの話を聞いて、確かに自分がそうだったなぁと思ったものです。
怒りの衝動をコントロールするスキル
よく6秒ルールと言われますが、6秒待つと怒りが消えるわけではなく、理性が働きかけ、理性的になれるようになるのです。
怒りの感情が生まれるとき、脳内では様々な変化が起きているとされています。 怒りの感情が生まれると、大脳の中の「大脳辺縁系」と呼ばれる部分が活発的に動くそうです。
【ヒトの脳の図】
出典:日経Gooday『脳科学から「怒り」のメカニズムに迫る! カチンと来ても6秒待つと怒りが鎮まるワケ』記事参照
大脳辺縁系の部位は動物に共通する原始的な脳といわれています。怒りの感情を感じ、アドレナリンなどを出すことで、敵から逃げる、敵に向かっていく等の身を守る危機的な状況に対処するそうです。
そして脳内で、ブレーキにあたる感情をコントロールする部位は理性を司る「前頭葉」とされており、猿や人間などで発達した新しい脳の部分です。
この脳の機能の違いが、怒りのコントロールに関係すると言われています。 自然科学研究機構 生理学研究所教授の柿木教授によると、「科学的に明確に定義することはできないのですが、前頭葉が本格的に働きはじめるまでにかかる時間は3~5秒程度と考えられます」
つまり、辺縁系で怒りがわいてから、それを抑えるために前頭葉が活性化するまで3~5秒の時間のズレがあるわけです。怒りのコントロールは、この時間の差をどう埋めるか、いかに辺縁系の働きを抑えて、前頭葉の働きを強くするかがポイントになります。怒りの感情はずっと続くものではなく、数秒で変えられる可能性があるのです。
イラッとしたとき、怒りを感じたときに一番やってはいけないことは、反射です。 反射的にものを言ったり、反射的に行動すると、怒り任せでネガティブな感情の言動を吐き出す可能性がありますので、良いことが起こるはずがありません。
それを踏まえて、怒りを感じる出来事が発生したときに反射的に、衝動で何か行動、言動を取ってしまわないように衝動をコントロールするテクニックをご紹介していきます。
5つの衝動のコントロールテクニック
スキル1:スケールテクニック
1つ目は、スケールテクニックと呼ばれるもので、怒りの温度計をイメージしてみてください。
怒りの感情をコントロールするのに、難しい理由として挙げられるものが怒りの尺度が見えづらいからということが挙げられます。
私たちは気温や降水確率、体温、血圧計など、日々尺度を見ながら、生活をしています。
「今日の気温は、19℃で、昨日よりも5℃下がった。
これは寒いから、セーターでも着込んで行こうかな」
といったように考えながら行動しているのです。
いままでイラッとしたときに尺度をつけていなかったかもしれませんが、これからは怒りの温度計をイメージして、尺度をつけていきましょう。
0を穏やかな状態、10を人生最大の怒りとして、イラッとしたことに点数をつけていくのです。
その際、意識していただきたいポイントは2つです。
①10は人生最大なので、人生で1回体験したことがあるか、もしくはまだ体験したことがないようなことを想定する
②2、3回で点数づけを終わらせるのではなく、イラッと感じたら、都度、何十回と繰り返し点数付けをしていくこと
①について、補足で説明すると、毎回10点をつける方がいますが、10は、人生で一回あるかないかの怒りです。
動物でいうと、食われてしまうかもしれない。反撃して逃げなきゃ。と感じるようなかなり強い衝動です。
日々、仕事や生活をしていて、そこまで危険に感じる出来事は多くないはずです。
その点を意識しながら点数をつけてみてください。
②については、点数をつけ始めると、始めは高得点になりがちですが、繰り返し点数を付けることで、この前の出来事が6点だったから今回は4点ぐらいだな。となっていきます。そうすると、自分の中での怒りの点数の基準が見え始めてきますので、対処法も思いつきやすくなります。
このスケールテクニックを活用し、理性が働くまでの6秒を待ってみましょう。
スキル2:コーピングマントラ
2つ目は、コーピングマントラと呼ばれるものです。 コーピングは、困難なことにうまく対処する、マントラは呪文、という意味です。 自分を落ち着かせる魔法の言葉と呼ばれています。
どうってことない、仕方がない、うまくいく、なんとかなるさ、寝たら忘れるさ、どんまいどんまい、
そういった言葉以外にも、好きな有名人の名前や、子どもの名前、ペットの名前を思い出してみるのも良いかもしれません。
イラッとしたときに心を落ち着かせることが大切なので、必要に応じて、落ち着かせられる言葉を思い浮かべましょう。
スキル3:カウントバック
3つ目は、カウントバックという方法です。カウントバックは、数を引き算で数えて、反射を遅らせる方法です。
1、2、3、4、5、6と数えるよりも、
100、99、98、97、96、95と数えにくい方法で、
あえて数えることで、意識をイラッとした出来事ではない別のところに向けさせることができます。
それでも慣れてしまったら、ワンハンドレッド、ナインティーンナイン、ナインティーンエイト、と英語で数える方法もありです。
数を数えることが目的ではなく、反射しないことが目的です。
スキル4:ストップシンキング
4つ目は、ストップシンキングです。 シンキングは思考、それをストップ、止めるということです。考えることをやめ、頭を真っ白にしていくのです。怒っているときは、頭の中で、いろいろな考えを駆け巡っています。
怒ってしまったことへの後悔、誰のせいなのかという犯人探し、これからの不安、などなど 冷静に判断するまでの時間が待てず、反射してしまう可能性もあります。
そこで、頭の中を真っ白にするために、脳内で真っ白な紙をイメージし、そこに集中するのです。
何も考えないというよりは白い紙を意識することで理性が働きかけてくれるまでの時間稼ぎをしましょう。
スキル5:タイムアウト
5つ目は、タイムアウトという方法です。 これは、スポーツの試合中に行われるタイムアウトと同じように中断して、使用します。
会議やミーティングなどで、議論や話し合いが白熱してきて、熱くなってしまい、 だんだんとお互いに言葉がきつくなってしまっていくこともあるのではないでしょうか?
このようなときに相手やメンバーに了承を得て、その場から離れるという方法です。
スポーツの試合でのタイムアウトは、流れを変える、作戦を伝える、冷静になる、そのような目的で、 使用されますが、それと同じように使用するのです。
ヒートアップした状態で話し合っても、建設的な話し合いを行うことは難しいです。
黙ってその場を立ち去ったり、捨て台詞を言って、その場から立ち去ってしまうのも良くありません。
会議やミーティングの開始前に、ルールを決めておいて、 あらかじめ、議論などがヒートアップしたり、お互いが言い合いになって収集が付かなくなったりした場合に タイムアウトをメンバーは取ろうと決めておくのです。
「申し訳ありませんが、少し熱くなってしまって、ディスカッションが難しいので、
5分休憩させてもらえませんか?5分後に今の続きを話し合いましょう。」
というような流れで、タイムアウトを取っていくのです。
タイムアウトを取れる環境や状況を社内の会議進行ルールとして、決めておくことをオススメします。
今回は、怒りを感じる出来事が発生したときに反射的に、衝動で何か行動、言動を取ってしまわないように衝動をコントロールするテクニックを5つ、ご紹介していきました。 ※今回、ご紹介した5つ以外にもテクニックがございますが、それは今後、ご紹介できればと思っていますので、お楽しみに。
アンガーマネジメントにおいては、衝動のコントロールで、理性が働くまで待ち、次に思考のコントロール、最後に行動のコントロールを取ることで、怒りの感情をうまくコントロールすることが大切だとされています。本コラムだけではなく、今後も定期的にアンガーマネジメントのヒントについて、ご紹介していきたいと思いますので、ぜひご参考にしてみてください。
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。