ハラスメント防止研修につながるビジネスゲーム研修の設計のポイント

ハラスメント防止研修につながるビジネスゲーム研修の設計のポイント

ハラスメント防止研修につながるビジネスゲーム研修の設計のポイント


現代の企業において、ハラスメント防止は重要な課題の一つです。職場でのパワハラやセクハラ、さらにはカスタマーハラスメントに至るまで、ハラスメントの問題は多様化し、企業経営に深刻な影響を及ぼしています。ハラスメントが原因で優秀な人材が離職したり、訴訟リスクが増大することも少なくありません。こうした問題を未然に防ぐためには、単にルールを整備するだけでなく、社員一人ひとりがその深刻さを理解し、適切に対応するためのスキルを身につけることが不可欠です。

そこで注目されているのが、従来の座学型の研修に代わる「ビジネスゲーム」を活用した研修です。ゲーム形式の研修は、社員が自ら体験を通じて学ぶことで、ハラスメントに対する理解を深めると同時に、職場でのコミュニケーションやチームワークの向上にもつながります。本コラムでは、ハラスメント防止研修の重要性と、ビジネスゲームを活用した効果的な研修方法について具体的な事例を交えながらご紹介します。

目次
・ハラスメント防止研修の重要性
-現代の職場におけるハラスメントの問題
 -ハラスメントがもたらす企業リスク
 -社員の意識改革の必要性
・ビジネスゲームを活用した研修の効果
 -ゲーム形式がもたらす学びの深さ
 -チームワークとコミュニケーションの向上
・ハラスメント防止研修におけるビジネスゲームの導入方法
-研修プログラムの設計方法
 -具体的なゲームの内容と進行
-研修後のフォローアップと効果測定
・ハラスメント防止研修の成功事例
-導入企業の事例と成功ポイント
-社員のフィードバックと改善点
・職場環境改善のための継続的な取り組みのご紹介
 -研修後の社内ルール整備とフォロー
 -定期的な研修の必要性と効果
 -社員同士の意識向上を促進する工夫

ハラスメント防止研修の重要性

現代の職場におけるハラスメントの問題


現代の職場では、ハラスメントは企業が直面する深刻な課題となっています。厚生労働省の調査によれば、ハラスメント関連の相談件数は年々増加しており、特にパワハラやセクハラ、マタハラ(妊娠・出産に関連するハラスメント)の問題が顕著です。たとえば、ある大手企業では、パワハラが原因で社員の退職が相次ぎ、業務の停滞や人材の流出が発生した事例もあります。これにより、労働環境の改善が急務であると認識されました。

また、ハラスメントの被害を受けた社員の心理的負担は非常に大きく、うつ病や適応障害などのメンタルヘルスの問題に発展するケースも少なくありません。これに伴い、長期休職や離職が発生し、企業は貴重な人材を失うだけでなく、生産性の低下にもつながります。

ハラスメントがもたらす企業リスク


ハラスメントがもたらすリスクは、従業員のメンタル面や業績にとどまらず、企業の法的リスクや社会的信用にも重大な影響を及ぼします。例えば、ハラスメントを放置した結果、企業が労働訴訟を起こされ、巨額の賠償金を支払わなければならなくなった事例もあります。ある製造業の企業では、パワハラを理由に元従業員から訴訟を起こされ、最終的に1億円以上の損害賠償を命じられました。このような法的リスクは、経営層にとって大きな懸念材料です。

さらに、ハラスメント問題がメディアに取り上げられた場合、企業のブランドイメージが著しく損なわれ、消費者や取引先からの信頼を失うこともあります。例えば、2019年に某大手企業で発覚したセクハラ問題が連日報道され、結果として業績悪化を招いたことは記憶に新しいでしょう。こうしたリスクを軽減するためにも、企業はハラスメント防止策に積極的に取り組む必要があります。

社員の意識改革の必要性


ハラスメント防止のためには、単に表面的な対策を施すだけでなく、社員一人ひとりの意識改革が不可欠です。多くの企業がハラスメント防止のための規則を制定していますが、実際にそれが職場でどの程度実践されているかは別問題です。例えば、定期的な研修を実施しているにもかかわらず、ハラスメントの事例が減少しないケースも少なくありません。これは、研修内容が社員に十分に浸透していない、あるいは実際の行動に結びついていないためです。

そのため、ハラスメントに対する社員の意識を根本から変革するためには、形式的なルールやガイドラインだけでなく、実際に起こりうるシチュエーションを想定した研修を通じて、具体的な対応方法を身につける必要があります。特に、ハラスメントに対する「無自覚な加害者」を減らすことが重要です。多くのハラスメントは、意図的ではなく無意識に行われる場合が多いため、社員が自分の言動が他者にどのような影響を与えるかを理解することが不可欠です。

ビジネスゲームを活用した研修の効果


ビジネスゲームは、実際のビジネス環境を模した状況を通じて、参加者がゲームを通じて学ぶ形式の研修手法です。この手法は、従来の講義型研修とは異なり、実践的な学びが得られる点で非常に効果的です。例えば、ハラスメント防止の研修では、ゲーム内で仮想の職場状況が設定され、参加者が上司や同僚、部下の役割を体験しながら、ハラスメントの兆候を見つけて対応策を考えるといった形で進められます。

具体的なビジネスゲームの例としては、カード形式のシミュレーションやロールプレイング形式のゲームが挙げられます。参加者は、例えば「上司が部下に過度なプレッシャーをかけた場合」や「同僚同士の会話が無意識に相手を傷つける状況」など、リアルな職場での問題に直面し、その場でどのように対処するかを即座に判断しなければなりません。

ゲーム形式がもたらす学びの深さ


ゲーム形式の研修がもたらす最大のメリットは、参加者が「体験を通じて」学ぶことです。従来の講義形式の研修では、参加者はただ受動的に情報を受け取るだけで、実際にその情報をどのように活用すべきかが理解できないまま終わってしまうことがあります。しかし、ビジネスゲームでは、自分が行動を起こすことで、その結果が即座に反映されるため、学びの深さが全く異なります。

たとえば、ハラスメント防止のビジネスゲームでは、特定の行動が相手にどのような影響を与えるかをリアルタイムで体験することができます。ある企業の研修では、上司と部下の役割を演じた参加者が、軽率な発言が部下に与える心理的な影響を実感し、その後の行動を改善したという事例がありました。このように、ゲーム形式では、実際の職場での行動に反映されやすいという特徴があります。

チームワークとコミュニケーションの向上


ビジネスゲームのもう一つの大きな利点は、チームワークとコミュニケーションの向上を促進することです。ハラスメントの防止には、職場全体での連携が重要であり、特に問題が発生した際に、迅速かつ適切に対応できるかどうかが求められます。ビジネスゲームでは、チームメンバーが協力して問題を解決するため、自然とコミュニケーションのスキルが向上します。

たとえば、あるビジネスゲームでは、参加者が異なる役職に分かれ、それぞれの立場からハラスメントの兆候を探り、どのように対処するかをチームで話し合う場面が設けられました。この過程で、上司と部下の立場の違いによる誤解やコミュニケーションのずれが解消され、職場での連携が強化される結果となりました。

ハラスメントを題材にしたビジネスゲームはコチラ↓↓
https://business-games.jp/workharassment_card/

ハラスメント防止研修におけるビジネスゲームの導入方法


研修プログラムの設計方法
ビジネスゲームを導入する際の研修プログラムの設計では、まず研修の目的を明確にすることが重要です。ハラスメント防止研修の場合、参加者がハラスメントの定義やその影響を理解すること、さらに実際に問題が発生した際の適切な対処法を学ぶことが目的となります。例えば、ゲーム内で段階的にハラスメントの兆候を示し、その都度、適切な対応を求める形式にすることで、参加者が実際の職場で同様の状況に直面した際に、迅速かつ適切な対応ができるようになります。

具体的なゲームの内容と進行
ビジネスゲームの内容としては、具体的なシナリオが設定されることが効果的です。たとえば、ある企業の研修では、上司が部下に過度な期待をかけすぎる場面や、同僚同士での軽口がハラスメントにつながるケースが設定され、参加者がそれにどのように対処するかを判断する場面が設けられました。また、ゲームの進行中には、参加者が「加害者」「被害者」「第三者」の立場から問題を見つけ、解決策を模索するシチュエーションを体験することで、多角的な視点を養います。

研修後のフォローアップと効果測定
研修が終了した後は、フォローアップが不可欠です。研修後に行われるアンケートやフィードバックの収集を通じて、参加者がどの程度の学びを得たか、また実際の業務でどのようにその学びを活用しているかを確認します。ある企業では、研修終了後に定期的なフォローアップ研修を実施し、学んだ内容を再確認しつつ、新たな課題や疑問点に対応しています。これにより、研修の効果が長期的に維持され、職場でのハラスメントが減少する結果となりました。

ハラスメント防止研修の成功事例


導入企業の事例と成功ポイント
実際にビジネスゲームを活用したハラスメント防止研修を成功させた企業の事例として、ある製造業の大手企業が挙げられます。この企業では、毎年ハラスメント防止に関する研修を実施していましたが、なかなか具体的な改善が見られない状態が続いていました。そこで、従来の講義型研修に加えてビジネスゲームを導入したところ、参加者全員が積極的に問題解決に取り組む姿勢を見せ、研修後には職場全体でのハラスメントに対する意識が大幅に向上したそうです。

この企業が成功したポイントは、研修内容をゲーム形式にすることで、参加者が自ら考えて行動する機会を提供した点です。また、シナリオが現実に即したものであったため、参加者が実際の職場で直面する可能性のある問題に対して、より具体的な対応策を学ぶことができたとのことです。

社員のフィードバックと改善点
研修後に行われた社員のフィードバックでは、「実際に体験することで、講義だけでは理解できなかったハラスメントの問題がよく分かった」という声が多く聞かれました。また、「ゲーム形式だったため、普段は意識しづらい問題にも楽しく取り組めた」という意見も挙がったようです。しかし、その一方で、一部の参加者からは「ルールが少し複雑で、最初の進行に時間がかかった」という指摘もあり、今後の研修ではより分かりやすいルール説明を行うことが改善点として挙げられようです。こういった社員からのゲーム研修のフィードバックの声をもらい、今後の研修に活かすべきです。

職場環境改善のための継続的な取り組みのご紹介


研修後の社内ルール整備とフォロー
ハラスメント防止研修が終了した後も、社内でのルール整備やフォローアップは欠かせません。研修で学んだ内容を日常の業務に落とし込み、ハラスメントが発生しにくい環境を整えるためには、定期的なルールの見直しや社員同士の相互フォローが必要になります。例えば、ハラスメントに関する社内規則を明文化し、社員がいつでも確認できるようにすることや、定期的に研修で使用したケーススタディや資料を共有する仕組みを作ることが効果的です。

また、匿名でハラスメントの相談ができる窓口を設置し、相談内容をもとに改善策を導入することで、社員が安心して働ける職場環境を実現することができます。 これにより、社員が実務で疑問を感じたときに迅速にルールや対策を確認でき、問題を未然に防ぐことができます。

定期的な研修の必要性と効果
ハラスメント防止の取り組みは、一度の研修で完了するものではありません。定期的な研修を通じて社員の意識を高め続けることが、効果的な防止策となります。労働法や社会的価値観が変わる中で、ハラスメントの定義や対策も進化していきます。たとえば、近年のリモートワークの普及に伴い、オンライン環境でのハラスメント(「テクハラ」)という新しい問題が浮上しています。このように社会的な価値観や法制度が変化する中で、ハラスメントの定義や対策も進化していくため、常に最新の知識を持つことが重要です。定期的な研修により、社員は新たなケースに対応するためのスキルを磨くことができます。

ある大手IT企業では、年に1回のハラスメント防止研修を実施し、さらに四半期ごとに短時間のフォローアップ研修を開催することで、社員の意識を高く保ち続けることに成功しています。また、研修の定期的な実施により、新入社員や異動者も常に最新の知識を持って業務に臨むことができ、職場全体のハラスメントに対する感度が向上したという結果も得られているそうです。

社員同士の意識向上を促進する工夫
研修後も、社員同士でハラスメントについて話し合う機会を設け、相互にフィードバックを行う文化を醸成することが大切です。例えば、定期的にグループディスカッションを行い、実際の業務でハラスメントを未然に防ぐための具体的な行動を共有する場を設けることで、職場全体の意識が向上します。例えば、ある企業では、毎月の部署会議や定例ミーティングの中で、ハラスメント防止に関する最新の事例を共有し、どう対応すべきかをディスカッションする時間を設けることで、職場全体での意識向上が図っているそうです。

また、社員が自主的に取り組む啓発活動も有効です。ある企業では、社内の有志が「ハラスメント防止プロジェクトチーム」を結成し、社内ニュースレターでハラスメント防止に関する情報を定期的に発信したり、啓発ポスターを作成して社内に掲示したりすることで、社員一人ひとりの意識を高めることに成功しました。さらに、月に一度の「ハラスメント相談デー」を設け、社員が自由にハラスメントに関する相談を行える機会を提供することで、現場での声を直接反映した改善策が導入されるようになりました。

このように、定期的な研修と日常的な意識向上の取り組みを組み合わせることで、職場全体でハラスメント防止への理解が深まり、持続的な改善が図れる職場環境を構築することができます。


まとめ


ハラスメント防止研修は、単にルールを学ぶ場ではなく、社員一人ひとりがハラスメントのリスクを理解し、職場でのコミュニケーションや行動を改善するための重要なステップです。そして、ビジネスゲームのような体験型の手法を取り入れることで、学びの効果が深まり、社員の行動に持続的な変化をもたらすことができます。継続的な研修やフォローアップ、日常的な取り組みを通じて、ハラスメントのない安全で快適な職場環境を実現しましょう。

【執筆者情報】

ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃

研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間100登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。

ビジネスゲーム検索

  • 階層

    選択してください
  • 目的/業界

    選択してください
  • 人数

    選択してください
  • 時間

    選択してください