キャリアアンカーとは、個人の職業的自己観と核となる価値観を表す概念であり、自分が何を最も重視し、何に対して妥協できないかを示します。エドガー・シャインが提唱したこの概念は、自己認識の工具としてだけでなく、個人の職業的な意思決定をガイドする指針としても機能します。
30代でこれらのアンカーを見つめ直すことによって、あなたのキャリアは新たな方向性を得る可能性があります。それはより自分自身に合った道を選択することで、仕事の充実感を深めると同時に、プライベートの幸せにも直結することでしょう! それでは、どのようにしてこの重要なキャリアアンカーを見つめ直し、活用していくのか見ていきましょう。そもそもキャリアアンカーとは何か?
キャリアアンカーとは、個人がキャリアを選択していく上で絶対に譲れない軸となる 価値観や欲求、能力などを人生の錨(アンカー)として例えた言葉です。 これは、自分が何を最も重視し、何に対して妥協できないかを示します。例えば、専門技術を極めたい、経営能力を発揮したい、自由に働きたい、安定した生活を望むなど、さまざまな要素があり、8分類で表現されています。
管理能力
経営者・管理者を目指したり、組織を統率したりすることに価値を見出すタイプです。専門・職能別能力
特定分野のエキスパートとして専門性や技術力を高めることに異議を見出し、現場で活躍し続けるタイプです。保障・安定
社会的・経済的な安定を求め、安定した組織に長期的に所属することを望む タイプです。そのため、危機管理に長けています。チャレンジ
困難に挑戦することや、その中で受ける刺激に喜びを感じるタイプです。ルーティーンワークを好まず、多様なキャリアを築く傾向があります。起業家的創造性
新しいものを生み出す起業家・芸術家・発明家のタイプであり、新製品開発や新規事業の立ち上げに向いています。ワークライフバランス
仕事とプライベートの両立を重視するタイプであり、生活スタイルが確立しているため、仕事に打ち込む一方で、私生活を犠牲にすることはありません。柔軟な働き方が出来る職場が向いています。奉仕・社会貢献
仕事を通じて世の中に貢献したいと考えるタイプです。自分の出世よりも優先する為、人の役に立つ商品やサービスの開発、監査部門、福利厚生部門で能力を発揮します。自律と独立
組織のルールや規則に縛られず、自分のスタイルで仕事を遂行することを重視するタイプです。研究職・技術職に多く見られます。なぜ30代で見つめ直す必要があるのか?
30代になると、多くの人が家庭を持ったり、管理職に昇進したりと、私生活や職業生活において大きな変化を経験します。また、20代の頃に持っていた価値観が変わり、新しい興味や情熱を発見することもあります。この時期にキャリアアンカーを見つめ直すことで、自分の内面と外部の状況を調和させ、より満足度の高いキャリアを築くための道筋を立てることができます。 30代は、キャリアを再考し、方向性を見直すのに特に適した時期です。この年代は、多くの人にとってプロフェッショナルとしての成熟期に当たり、生活の様々な面で大きな変化が見られます。 まず、20代を通じて積み上げられた経験が30代になると豊富な知識とスキルの蓄積として表れます。これにより、自分の強みや弱み、好み、適性が明確になり、これまでの経験を基に自分自身のキャリアパスについて意識的な選択が可能になるのです。そして30代は職業的アイデンティティを確立する上で重要な時期です。自分が何者であるか、どのような価値を提供できるのかを理解し、将来的にどんなキャリアを目指すべきかを定めることが必要になってきます。 またこの年代は多くの人にとって家庭を持ち始める時期と重なるため、仕事と家庭生活のバランスを見直す必要があります。キャリアプランを再評価し、生活の全体的なバランスを考慮することが重要になります。 30代では、長期的なキャリア目標を設定することも大切です。これまでのキャリアの基盤を活かして、より長い時間軸で自分の将来を計画し、どのようなスキルが必要か、何を準備すべきかを検討します。 他にも30代は自分の情熱やモチベーションがどのように変化しているかを再評価する良い機会です。この時期に何に焦点を当てるかを明確にし、必要なスキルや知識を更新することで、市場の変化に適応し、より充実したキャリアを築くための準備を進めることができます。 そういった点からも30代はキャリアを見つめ直すのに最適なタイミングなのです。
キャリアアンカーを見つめ直す方法
まず、自分自身について深く考え、これまでの経験から何を重要視しているのか、どんな状況や仕事で最も充実感を感じるのかを振り返ります。次に、信頼できる同僚や上司、キャリアカウンセラーとの対話を通じてフィードバックを得ることも有効です。また、専門書を読んだり、ワークショップやセミナーに参加することも、新たな視点を提供してくれるでしょう。 30代でキャリアアンカーを利用してキャリアを見直す方法にはいくつかのステップがあります。キャリアアンカーは、自分のキャリアにおいて何が最も重要かを理解するのに役立つツールです。これを活用することで、自分自身のキャリアの価値観や動機を明確にし、今後のキャリアの方向性を合理的に決定することができます。以下はその具体的な方法です。
キャリアアンカーの診断方法
キャリアアンカーを診断する方法は主に以下の通りです。 ①自己分析シートを使う
まず、キャリアアンカーの主要な3要素(コンピタンス、動機、価値観)について自己分析を行います。自身の過去の経験を振り返り、どのような状況でどんな基準で行動していたかを考えてみましょう。これにより、自分の行動の背後にある動因を理解する手がかりを得ることができます。 ②オンライン診断やチェックシートの活用
エドガー・シャインが提唱するキャリアアンカー診断を実施できるウェブサイトや、キャリアアンカーを把握するためのチェックシートを提供している企業や組織があります。これらのリソースは多くの場合無料で利用可能で、職業別、求職者向け、在職者向けなど、異なるニーズに応じた形式が用意されています。自分の状況に合わせたチェックシートを探して、診断を試みるのが効果的です。 例えば、ジェイ エイ シー リクルートメント社のコラムにも掲載されていますが、このようにExcelで診断できるツールが存在します。
https://www.jac-recruitment.jp/market/knowhow/preparation/career-anchor/ これらの方法を組み合わせることで、自己のキャリアアンカーをより深く理解し、それに基づいて自分のキャリアパスを考えるための有効な情報を得ることができます。
出典引用:障害者職業総合センター
https://www.nivr.jeed.go.jp › support23_siryou14
キャリアアンカーを踏まえたキャリアデザイン
30代でキャリアアンカーを踏まえたキャリアデザインを行う際は、まず自己の価値観や動機を深く理解し、それをキャリアの計画に反映させることが重要です。 この年代はプロフェッショナルとしてのスキルが確立し、個人的な価値観や職業観も成熟してくるため、自己評価とフィードバックを通じて自分のキャリアアンカーを明確に特定します。次に、現在の職業状況を評価し、キャリアアンカーとの一致を確認します。ここでギャップがあれば、必要な調整を行うことが求められます。 具体的な長期目標を設定することも重要です。これには、5年後、10年後の自分がどのような位置にいたいかを具体的に思い描き、それに必要なスキルや資格を特定します。目標に向かって必要なスキルを身につけるための学習計画を立て、自己改善に努めることが必要です。 さらに、業界内外でのネットワーキングを強化し、目標達成に役立つ人脈を築くことも大切です。経験豊かなメンターを見つけ、定期的な指導やアドバイスを求めることで、より効果的なキャリアの進め方を学べるでしょう。 キャリアは常に動的なものであり、変化する個人の状況や市場の要求に応じて、定期的にキャリアプランを見直し、必要に応じて調整を行うことが重要です。これにより、30代の方々は自分のキャリアアンカーに基づいた意味のあるキャリアを築き上げ、職業的な成功と個人的な満足を実現することが必要になってくるのです。
まとめ
キャリアアンカーを探求し活用することで、自分の深層にある価値観や動機を明確に把握でき、それが照らし出す道に沿って自分自身のキャリアを形成する力が得られます。 このプロセスを通じて、自分自身のポテンシャルを最大限に引き出し、仕事の満足度を飛躍的に向上させることが可能なのです。 自分のキャリアアンカーを定期的に見つめ直すことで、常に自己成長を促し、変化する環境にも柔軟に適応していくことができます。キャリアアンカーを使ってぜひ自分のキャリアを見つめ直す機会にしてみてください!
【執筆者情報】
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間100登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。