目次
歯科医院でよく起きている「チームが機能しない状態」とは
成果を出す歯科医院が持っている「チーム力」の正体
なぜ“研修をしても”チーム力が上がらないのか
スタッフが自走し始める「チームビルディング研修」の考え方
チームビルディング研修が医院経営にもたらす変化
歯科医院でよく起きている「チームが機能しない状態」とは
成果を出す歯科医院が持っている「チーム力」の正体
なぜ“研修をしても”チーム力が上がらないのか
スタッフが自走し始める「チームビルディング研修」の考え方
チームビルディング研修が医院経営にもたらす変化
歯科医院でよく起きている「チームが機能しない状態」とは
一見うまく回っているように見える歯科医院の落とし穴
歯科医院の中には、日々の診療が滞りなく進み、大きなトラブルもなく運営されているように見える医院が多くあります。予約は埋まり、スタッフも出勤し、診療はスケジュール通りに進んでいる。一見すると「特に問題はない」状態です。しかし、こうした医院ほど、実はチームが機能していないケースが少なくありません。 現場では院長や一部のベテランスタッフが判断を担い、他のスタッフはその指示を待つだけになっていることがあります。この状態が続くと、表面上は安定していても、内部では徐々に歪みが蓄積していきます。
「指示待ち」が常態化する組織
チームが機能していない歯科医院でよく見られるのが、スタッフの指示待ち姿勢です。次に何をすべきか、どう判断すべきかを自分で考えるのではなく、「院長の判断を待つ」「ベテランに聞く」ことが当たり前になっています。 この状態では、現場での小さな判断が滞り、院長への確認や相談が増えます。その結果、院長の業務負荷が高まり、現場全体のスピードも落ちていきます。本来はチームで分担できるはずの判断が、特定の人に集中してしまうのです。
責任の所在が曖昧になる理由
チームが機能しない医院では、「誰がどこまで責任を持つのか」が曖昧になりがちです。ミスやクレームが発生した際も、「自分の担当ではない」「確認がなかった」といった言葉が出やすくなります。 これはスタッフの意識が低いからではなく、役割と責任が明確に定義されていないことが原因です。役割が曖昧なままでは、主体的に動くことも難しくなり、結果として消極的な行動につながります。
職種間の分断が生む非効率
歯科医院では、歯科医師、歯科衛生士、歯科助手、受付といった職種ごとに業務内容が異なります。チームが機能していない場合、この違いが「分断」として表れます。 「それは自分の仕事ではない」「受付のことは分からない」「診療側の事情は知らない」といった意識が強まると、連携が弱まり、患者対応にも影響が出ます。職種間で情報が共有されていないことで、説明の食い違いや対応のズレが生じやすくなるのです。
「忙しい=チームが機能している」という勘違い
忙しく診療をこなしていると、「みんなが動いているからチームとして機能している」と感じてしまうことがあります。しかし、忙しさはチーム力の指標にはなりません。 実際には、個々が自分の作業に追われているだけで、全体を見て連携しているわけではないケースも多くあります。忙しさの中では振り返りや改善が後回しになり、同じ問題が繰り返される原因にもなります。
チームが機能しないことで起きる悪循環
チームが機能していない状態が続くと、ミスやクレームが増え、院長への負担がさらに集中します。スタッフは「怒られないように動く」「余計なことはしない」という意識になり、モチベーションも低下していきます。その結果、離職につながるケースも少なくありません。 この悪循環を断ち切るためには、現状を「仕方がない」と捉えるのではなく、チームのあり方そのものを見直す必要があります。次章では、成果を出している歯科医院が持つ「チーム力」の正体について掘り下げていきます。
成果を出す歯科医院が持っている「チーム力」の正体
チーム力は「仲の良さ」ではない
成果を出している歯科医院について話を聞くと、「スタッフ同士の雰囲気が良い」「人間関係が安定している」という声がよく挙がります。しかし、ここで注意したいのは、チーム力=仲の良さではないという点です。仲が良く、雰囲気が穏やかでも、成果につながらない医院は少なくありません。 一方で、必要な意見交換や指摘が行われ、決して馴れ合いではないにもかかわらず、安定して成果を出している医院も存在します。 チーム力とは感情的な結びつきではなく、「同じ目的に向かって機能的に動ける状態」を指します。
成果を出す歯科医院に共通する3つの要素
チームとして成果を出している歯科医院には、いくつかの共通点があります。その中でも特に重要なのが、次の3つの要素です。
①目的・方針が共有されている
成果を出す医院では、「この医院は何を大切にしているのか」「どこを目指しているのか」がスタッフ全員に共有されています。患者満足度を重視するのか、効率性を高めたいのか、地域でどのような存在になりたいのかといった方針が明確です。 この目的・方針が共有されていることで、日々の判断に迷いが生じにくくなります。スタッフは「院長に聞かなくても、医院としての判断基準に照らして考える」ことができるようになります。②役割と責任が明確である
成果を出す歯科医院では、職種や立場ごとに役割と責任が整理されています。誰がどこまで判断し、どこから報告・相談すべきなのかが明確です。 役割が明確になると、スタッフは安心して行動できます。責任を押し付け合うことも減り、「自分の役割として何をすべきか」に集中できるようになります。その結果、現場のスピードと質が同時に高まります。③現場で判断・行動できる余白がある
成果を出す医院では、すべてを院長が決めるのではなく、現場に一定の裁量が与えられています。もちろん、何でも自由に判断するわけではありませんが、共有された目的と役割の範囲内で、スタッフが自ら考えて行動できる余白があります。 この余白があることで、現場対応がスムーズになり、院長への確認や指示待ちが減ります。スタッフ自身も「自分が医院を支えている」という当事者意識を持つようになります。
「院長が全部決める医院」との決定的な違い
院長がすべてを決める医院では、一見すると統率が取れているように見えます。しかし、その分、院長に負荷が集中し、スタッフは受け身になりがちです。 一方、チーム力の高い医院では、院長は方向性と基準を示し、現場はその枠組みの中で動きます。この役割分担があるからこそ、組織としての持続性が生まれます。 チーム力が高まると、患者対応の質が安定し、業務改善の提案が自然と出てくるようになります。スタッフ同士の連携も強まり、「誰かの仕事を手伝う」「情報を先回りして共有する」といった行動が増えていきます。 こうした変化は、院長が指示しなくても起こるようになります。チーム力とは、歯科医院が継続的に成果を出し続けるための土台であり、その正体は「仕組みとして機能する組織」に他なりません。
なぜ“研修をしても”チーム力が上がらないのか
研修を実施しても現場が変わらない理由
歯科医院でも、接遇研修やコミュニケーション研修、マネジメント研修など、さまざまな研修を導入しているケースがあります。 しかし、「研修直後は意識が高まるものの、数週間もすると元に戻ってしまう」「学んだはずなのに、現場での行動が変わらない」と感じている院長先生は少なくありません。 この原因は、研修内容が悪いというよりも、研修の設計と現場とのつながりにあります。知識は増えても「行動」は自然には変わらない
多くの研修は、講義形式で知識をインプットすることが中心です。理論や事例を学ぶことで、「なるほど」「大切なことだ」と理解は深まります。しかし、人の行動は、理解しただけでは簡単には変わりません。 特に歯科医院の現場では、忙しさや時間的制約が強く、従来のやり方に戻りやすい環境があります。知識としては分かっていても、「今は余裕がないから」「後でやろう」と、行動に移されないままになってしまうのです。
「分かったつもり」が生む研修の限界
研修でありがちなのが、「分かったつもり」になってしまう状態です。講師の話を聞き、うなずき、メモを取ることで、「理解した」「意識は高まった」と感じます。しかし、それが実際の現場で再現できるかどうかは別問題です。 特にチーム力に関するテーマは抽象度が高く、「良いコミュニケーションを取ろう」「協力しよう」といった表現で終わりがちです。その結果、研修後に「結局、何をどう変えればいいのか分からない」という状態に陥ります。チームの課題は「個人」ではなく「関係性」にある
チーム力が上がらない原因を、個人の意識や能力の問題として捉えてしまうと、研修は的外れになります。実際には、多くの問題は「個人」ではなく「関係性」や「仕組み」にあります。 例えば、情報共有がうまくいかないのは、誰かの能力不足ではなく、共有のルールやタイミングが曖昧なことが原因かもしれません。判断が遅れるのも、責任範囲が不明確なために起きている可能性があります。講義で個人の意識を変えようとしても、構造が変わらなければ、現場は変わらないのです。チーム力は「理解」ではなく「体験」で育つ
チーム力を高めるために重要なのは、「知ること」ではなく「体験すること」です。チームとして同じ状況に置かれ、協力しなければ成果が出ない体験をすることで、初めて「チームで動くとはどういうことか」を実感できます。 体験を通じて得た気づきは、記憶に残りやすく、行動変容につながりやすい特徴があります。自分たちのやり方の癖や、連携の弱点に気づくことで、「現場で何を変えるべきか」が具体的に見えてきます。
研修を「点」で終わらせないために
研修を一度きりのイベントで終わらせてしまうと、効果は長続きしません。体験型研修で得た気づきを、振り返りや現場での実践につなげる設計が重要です。 チーム力が高まらないのは、研修をしていないからではなく、「体験と現場がつながっていない」からです。次章では、スタッフが自走し始めるチームビルディング研修の考え方について、より具体的に解説していきます。スタッフが自走し始める「チームビルディング研修」の考え方
「自走する組織」とはどのような状態か
歯科医院における「自走する組織」とは、院長が逐一指示を出さなくても、スタッフ一人ひとりが医院の方針を理解し、自ら考えて行動できる状態を指します。自走している組織では、問題が起きたときに「どうしますか?」と判断を仰ぐ前に、「医院としてはこう考え、こう対応しました」と報告が上がってきます。 この状態は、決して放任ではありません。判断基準や役割が共有されているからこそ、スタッフは安心して動くことができます。自走とは自由ではなく、「共通の軸を持った主体性」なのです。
チームビルディング研修で重視すべき視点
スタッフが自走し始めるためには、単なる知識習得ではなく、チームとしての体験が必要になります。そのため、チームビルディング研修を設計する際には、いくつかの重要な視点があります。
全員が「同じ状況」を体験することの意味
日常業務では、職種や立場によって見えている景色が異なります。チームビルディング研修では、全員が同じルール、同じ条件の中で課題に取り組むことで、「自分たちはどのように連携しているのか」を客観的に体感できます。 この共通体験があることで、立場の違いを超えた共通言語が生まれ、研修後の振り返りが深まります。成果が「チーム単位」で決まる設計
個人評価が中心の研修では、どうしても自己完結型の行動になりがちです。一方、成果がチーム単位で決まる設計にすると、自然と情報共有や役割分担が求められます。 歯科医院の現場と同様に、「誰か一人が頑張っても成果が出ない」状況を体験することで、チームで動く必要性を実感できます。話し合いと振り返りが組み込まれていること
体験型研修で最も重要なのが、話し合いと振り返りの時間です。単にゲームやワークを行うだけでは、「楽しかった」で終わってしまいます。 なぜうまくいったのか、なぜ失敗したのかをチームで言語化し、日常業務と結びつけることで、行動変容の土台がつくられます。歯科医院向け研修で扱うべきテーマ例
歯科医院のチームビルディング研修では、現場で起きやすい課題をテーマに設定することが効果的です。 ①情報共有のズレを可視化する情報がどこで止まり、誰に伝わっていないのかを体験的に理解することで、「なぜ共有が重要なのか」を腹落ちさせます。 ②判断基準の違いに気づく
同じ状況でも、判断が分かれる場面を体験することで、基準が共有されていないリスクを実感できます。 ③役割分担と連携の難しさを体感する
役割が曖昧な状態と明確な状態の違いを体験することで、連携の重要性が浮き彫りになります。
ゲーム・ワーク形式が歯科医院に向いている理由
ゲームやワーク形式は、「失敗しても安全」な環境で挑戦できる点が大きなメリットです。日常業務では失敗が許されないからこそ、研修という場で試行錯誤できる価値があります。 また、感情が動く体験は記憶に残りやすく、研修後の行動につながりやすいという特徴もあります。
研修を現場につなげるための工夫
研修で得た気づきを現場に持ち帰るためには、具体的なアクションを決めることが欠かせません。「明日から何を変えるのか」をチームで共有し、小さな実践を積み重ねることで、自走する組織へと近づいていきます。 チームビルディング研修は、単なるイベントではなく、組織づくりの起点です。次章では、こうした取り組みが医院経営にどのような変化をもたらすのかを見ていきます。チームビルディング研修が医院経営にもたらす変化
研修後、現場で最初に現れる「小さな変化」
チームビルディング研修を実施すると、すぐに売上や患者数が大きく変わるわけではありません。しかし、現場では確実に「これまでとは違う変化」が起こり始めます。最初に見られるのは、スタッフ同士の会話の質の変化です。 これまでは業務連絡や確認が中心だった会話が、「この対応で大丈夫だと思いますか」「前回の振り返りを踏まえると、こうした方が良さそうです」といった、考えを共有する会話へと変わっていきます。この変化は、チームとして考える意識が芽生え始めたサインです。
院長への相談内容が「報告」から「提案」に変わる
チーム力が高まると、院長への相談内容にも変化が現れます。従来は「どうすればいいですか」「判断をお願いします」といった確認型の相談が多かったものが、「このように対応しましたが、いかがでしょうか」「次回はこう改善したいと考えています」といった提案型の相談が増えていきます。 これは、スタッフが自分たちで考え、行動する経験を積み重ねた結果です。院長にとっても、すべてを決め続ける負担が軽減され、経営や診療により集中できるようになります。
「自分たちで考える」文化が根付き始める
チームビルディング研修を通じて得られる最大の変化は、「自分たちで考える文化」が芽生えることです。問題が起きたときに、誰かを責めたり、指示を待ったりするのではなく、「次はどうすれば良いか」をチームで話し合う姿勢が生まれます。 この文化が根付くことで、同じ問題が繰り返されにくくなり、現場の改善スピードも上がります。小さな改善の積み重ねが、医院全体の質を底上げしていくのです。
チーム力向上が患者満足度に与える影響
チーム力が高まると、患者対応の質が安定します。誰が対応しても一定の基準で説明や声かけが行われるため、患者は安心感を持ちやすくなります。また、職種間の連携が強まることで、情報の行き違いや説明のズレも減少します。 この積み重ねが、患者満足度の向上につながり、「またここに来たい」「家族や知人に勧めたい」という評価へとつながっていきます。
生産性とスタッフ定着への好循環
チーム力が向上すると、業務の無駄が減り、生産性が高まります。確認や手戻りが減ることで、限られた時間と人員でも安定した診療が可能になります。 さらに、チームとして支え合う文化がある医院では、スタッフの心理的負担も軽減されます。「一人で抱え込まなくていい」「意見を言っても大丈夫」という安心感が、働き続けたいという気持ちにつながり、離職防止にも寄与します。
チームビルディング研修は経営施策である
チームビルディング研修は、単なる人材育成ではなく、医院経営を支える重要な施策です。チーム力が高まることで、患者満足度、生産性、スタッフ定着という経営の根幹が安定します。 こうした変化は一朝一夕では起こりませんが、意図的に取り組むことで確実に積み上げていくことができます。次章では、これまでの内容を踏まえ、歯科医院の未来を支える「人」と「チーム」の重要性についてまとめていきます。
まとめ
歯科医院の成果は、院長や一部のスタッフの頑張りだけで決まるものではありません。技術や設備が一定水準に達した今、患者に選ばれ続ける歯科医院であるためには、「人」と「チーム」の力をどれだけ引き出せているかが大きな分かれ目になります。個人の努力に依存した運営には限界があり、無意識のうちに院長への負担集中や、スタッフの受け身姿勢を生み出してしまいます。 チーム力は、自然に育つものではありません。「忙しいから後回し」「今は余裕がない」と放置していても、状況が良くなることはほとんどありません。だからこそ、歯科医院として意図的にチームづくりに取り組む姿勢が重要になります。目的や方針を共有し、役割と責任を明確にし、現場で考え行動できる余白をつくることが、チーム力を高める土台となります。 そのための有効な手段が、体験を通じて学ぶチームビルディング研修です。知識を学ぶだけでなく、チームとして動く難しさや大切さを体感することで、スタッフ一人ひとりの意識と行動に変化が生まれます。研修はゴールではなく、医院のあり方を見直すためのスタート地点です。 「スタッフが自走する歯科医院」は、特別な才能や条件がなければ実現できないものではありません。チームとして考える場を設け、小さな実践を積み重ねていくことで、誰でもつくることができます。人とチームに目を向けた取り組みこそが、これからの歯科医院経営を支える確かな力になるはずです。
【執筆者情報】
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間100登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。