しかし、成長のためには欠かせない学習理論になっていますので、この機会に少しご紹介していきたいと思います。
ダブルループ学習は、アメリカ・ハーバード大学の名誉教授であったクリス・アージリスが提唱した学習法で、「問題に対して、既存の目的や前提そのものを疑い、それらも含めて軌道修正を行うこと」を指します。
クリス・アージリスは、組織における学習のプロセスには、「シングル・ループ学習」と「ダブル・ループ学習」の2つがあると言っています。
シングル・ループ学習
シングル・ループ学習は、すでにある考え方や行動の枠組み、過去の成功体験に沿って問題解決の方法を探ること。 「結果を受けて行動を改善し、結果を確認する」というループをたどるイメージです。 PDCAサイクルはシングル・ループ学習と言えるでしょう。
ダブル・ループ学習
ダブル・ループ学習は、既存の枠組みや前提そのものを疑い、新しい考え方やいままでにない行動を取り込む学習プロセスのこと。「結果を受けて前提を見直し、行動を変え、結果を確認する」というループをたどるイメージです。
過去の学習や成功体験を通して獲得した考え方や行動の枠組みの上で、問題解決を図る「シングルループ学習」を【改善】のプロセスとするなら、「ダブルループ学習」は【改革】と言えます。
例えば、自動車の燃費向上を目指している自動車メーカーがあるとしましょう。 ここで、エンジンの改良による改善を図るのは「シングルループ学習」です。 一方で、「どのようなエネルギーが相応しいか?」と前提となるビジョンそのものを見直し、大きな改革を生み出すのが「ダブルループ学習」なのです。
ダブルループ学習によって生まれる価値は?
ダブルループ学習が生み出す価値は、既存の枠組みや前提が変わることで、本質的な問題を発見したり、大きな変化を生み出したりできることにあります。
そのためには、一度体得した学習や成功体験をあえて排除し、新しい学習を得る「アンラーニング(学習棄却)」が必要となります。
環境変化の激しい今日、シングルループ学習だけで組織が環境に適応し生き残っていくことは難しく、時には、過去の成功体験に基づく固定観念をアンラーニングすることが必要になります。
ダブルループ学習によって新たな前提や枠組みを取り入れ、それをシングルループ学習によって反復強化していくことが重要となります。また、表面的な問題を作り出している本質的な問題を探り、根本から働きかけることができるのもポイントです。
ダブル・ループ学習をどうやって仕事上で活かすか?
ダブル・ループ学習は、自己認識と学習の両方を重視し、自己成長や改善を目指す方法論です。
仕事上のダブル・ループ学習の事例をいくつか挙げてみましょう。
リーダーシップの向上
ダブルループ学習を用いたリーダーシップの向上には、自己認識とフィードバックが欠かせません。自分自身の行動やスキルについて客観的に見つめ直し、フィードバックを受けて改善点を見つけ出すことができます。例えば、上司や部下からのフィードバックをもとに、自分自身がどのように改善するべきかを考えることができます。
プロジェクトマネジメントの改善
プロジェクトマネジメントにおいては、計画立案や進捗管理などの作業が重要ですが、それだけではなく、プロジェクトの過程を振り返り、学習し改善することが必要です。プロジェクトの失敗や問題点を分析し、今後のプロジェクトに活かすことができます。
営業活動の改善
営業活動においては、自分自身のスキルやアプローチ方法の見直しが必要です。ダブルループ学習を活用することで、顧客からのフィードバックを分析し、自分自身の営業スタイルを改善することができます。また、自分自身の行動を反省し、改善点を見つけ出すことも重要です。
チームの改善
チームワークやコミュニケーションがうまくいかない場合、ダブルループ学習を用いることで、チームメンバーが自分自身の行動を振り返り、改善することができます。チームメンバーがお互いにフィードバックをし合うことで、チーム全体のレベルアップが期待できます。
以上のように、ダブル・ループ学習は、自己認識と学習を組み合わせることで、自己成長や改善を促進することができるのです。
今回は自己成長のために必要な考え方であるダブル・ループ学習とは何か?をご紹介してまいりました。 行動を振り返りだけでなく、そもそもなぜそういった行動を取ったのか?などの前提を疑うことで改善だけでなく、改革につながり、 根本的な問題解決につながっていくのです。ぜひ参考にしてみてください。
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。