・売上達成できなかったのは市場の規模が縮小してしまったからだ
・お客様からクレームをもらったのは、自社の商品が使いづらいからだ
・自分がいつもイライラしているのは、奥さんのせいだ
皆さんは、何か問題が発生した時や何かミスをしてしまった時にその失敗の原因を、自分以外の外部要因のせいにしてしまった経験はありませんか?
失敗やミスの受け止め方は人によって違うものです。
ある問題やミスが生じた時、その原因をどこに求めるかということを概念化したものを、ローカス・オブ・コントロール(LOC=統制の位置)と呼ばれています。
このローカス・オブ・コントロールは、ミスや失敗などを外的環境にあると受け止める外的統制型と、失敗を自分の内面に問題があると捉える内的統制型に分けられます。
例えば、電車で、お客様先に向かおうとしたときに車両の異常音感知で車両点検が発生してしまって、電車が予定よりも30分遅れてしまった場合、外的統制型の人なら「おいおい、なんで車両点検が発生するんだよ。日ごろから点検しておけよ。あー、お客様に連絡しないと。」といった反応を示すかもしれません。 反対に、内的統制型の人なら「もっと早くにオフィスを出てくればよかった。次からそうしよう」といった反応を示すかもしれません。
このように同じミスや失敗でも、外的統制型と内的統制型の受け取り方は全く異なるのです。
外的統制型は、失敗した原因を自分ではなく、外に求めます。仕事上であれば、一緒に組んで相手の実力が足りなかったとか、責任を他に転嫁します。
もしくは、自分には運がなかった、タイミングが悪かったと思って、勝負は時の運だから仕方がないと、運や時期のせいにして、自分では変えられないとあきらめることも。このような外的統制型タイプの人は、深く悩んだり、後悔したりはしませんので、精神的に参ることは少ないかもしれません。ただ、自分自身の行動や考えに対して、反省しないため、同じ失敗を繰り返す事が多くなります。場合によっては、無責任な人とレッテルを貼られることも多々あります。
逆に内的統制型の人は、失敗の原因を常に自分に求めます。そのため落ち込んだり、ストレスを溜め込む傾向があり、メンタル面が落ち込むこともあり得ます。ですが、失敗の原因を突き止めて反省し、それを次の機会に生かすことができるタイプです。失敗するのも成功するのも自分次第だと考える傾向の考え方のため、結果として自己の能力を高めていけるのです。
失敗を反省することなく、都合の良い言い訳をする。
●自分のせいではない。
●ハードルが高すぎたから。
●運が悪かったから。
●他にやることがあったから。
このように自分以外のもののせいにする人を外的統制型といいます。
失敗の原因を分析し、反省することで、次の機会に生かすことができる。
●自分の不注意だった。
●努力不足だった。
●次はがんばろう。
●ピンチはチャンスだ。
このように外部環境のせい、他人のせいにするのではなく自分の中に原因がなかったかと考え、自分で受け止める人が内的統制型といいます。
外的統制型と内的統制型のそれぞれのメリットデメリット
外的統制型と内的統制型の思考のタイプは、それぞれメリットデメリット(良し悪し)が考えられそうです。
外的統制型のメリット
●他のせいにできるので、気持ち的、精神的に楽
●変わるべきは他人や環境で、自分は変わらなくても良いので行動はしなくても良い
●できなかった理由の説明(言い訳)が上手になっていく
外的統制型のデメリット
●他人のせいにしてしまい、自分が変わろうとせず、改善行動が取れない
●改善行動が取れないので、問題解決しづらい
●問題が放置されてしまい、同じような問題や悩みが発生しやすい
内的統制型のメリット
●問題の原因を自分の中にも見つけようとするので、改善行動がとりやすい
●やれることを見つけやすい
●行動量が増えるので、成果が出やすい
内的統制型のデメリット
●自分のせいだと思いすぎてしまうと、精神的に病む
●自己効力感がなくなり、自信を喪失してしまう可能性がある
一般的に外的統制型と内的統制型とでは、内的統制型の方が成長しやすいと言われています。
その理由は、以下の通りです。
外的統制型は、外的要因(他人、観客、状況)のせいにしやすいタイプなので、自分の中に改善点を見つけようとしないのです。
図のように、自分は変わらなくても良く、相手が変わるべきだと思い、自分がやれるべきこと、自分が取れる改善すべき行動が生まれず、行動の量や質が増えないため、何も変わらず、成果も変わりません。
少なくとも、問題解決や問題の改善に努めたい場合は、
内的統制型の思考の方が良さそうです。
内的統制型思考を持つためのポイント
研修をしていると、よく人事の方々や経営者の方々から、こんな質問をされます。
・外的統制型の考え方の人が、内的統制型の考え方を持つことは不可能なのでしょうか?
・考え方を変えるのは、無理ゲーじゃないですか?
たしかに性格や凝り固まった思考を変えるのは、とんでもなく困難なのは、事実です。
内的統制型思考を持たせるためには、
3つの視点でアプローチすることが有効です。
1つ目は、本人に外的統制型で他責的であることに気づかせる
人は、自分が他責にしていることに気付きにくいものです。まずは自分が外的統制型の考え方が強いということを認知する必要があります。 これは、研修でも使われる方法ですが、ケーススタディや演習問題を通して、他責にしてしまっている自分がいることを認知してもらう方法です。
例えば、所属している会社やチームの課題について、リストアップしてもらいます。 そして、その課題に対して、自分が取っている行動や取ろうと思う行動を書き出してもらいます。
何も考えずに、取っている行動をスラスラ書ける人は、現場で何かをやれている可能性がありますが、考えながら、書いている人は、そもそも行動が取れていなから、考えて書く必要があるのです。行動が取れていないということは、どこか他人のせいや環境のせいにしてしまって、自分のやるべきことに焦点を当てられていない可能性があります。 その点をしっかりとフィードバックしてあげることで、外的統制型の他責にしてしまっていることに気付いてもらうことができます。
2つ目は、外的統制型のメリットと内的統制型のメリットを比べさせて、将来的にどっちのほうが成長できるか、どっちの方が良いかを自己選択させる
こちらは、外的統制型と内的統制型の考え方のそれぞれのメリット・デメリットを洗い出しさせて、どちらの考え方の方が自分なりに良いのかを選ばせるということです。 外的統制型、内的統制型には、良し悪しが存在します。どちらの方が心の安定につながるのかを考えさせることが重要です。 短期的に見ると、外的統制型の方が、精神的に楽になれるかもしれませんが、長期的に見たら、内的統制型の方が、改善や問題解決につながり、常に気持ちが穏やかでいることができるかもしれません。そういった良し悪しを考えてもらい、自己選択してもらうと、多くの方が内的統制型に目を向けてくれるようになります。1つの方法として、参考にしてみてください。
3つ目は、ログ(記録メモ)をつけさせる
前述した通り、人は、自分が他責にしていることに気付きにくいものです。自分ではなく、他人が愚痴や不満をこぼしているときは、この人、他責にしてるなぁと感じやすいのですが、自分自身では、意外に気付かないこともあります。
特に「●●のせいだ!」と、すぐ考えて自己認知できるような言葉ではなく、
例)
●●が良くなれば変わるのにねぇ。
●●がもっと行動してくくれば良いのにね。
と、考えているときは、誰かのせい、環境のせいにしていると、すぐにわかるような直接的な言葉を発していないので、自分が他責にしてしまっていることを自覚しづらいのです。
※上記はあくまでも例ですが、私の考えを記載しておくと、、、
「●●がよくなればいいのに、」と考えているのは、●●に対して、自分からの働きかけで良くしていこう、改善していこうとは思えていない状況です。どこか他人任せにしてしまっており、他人任せということは、自分のせいではなく、自分以外のせいだから、自分以外の他人や環境が変われば良いと思ってしまっているわけです。このように私は感じるので、他責の例として挙げています。
オススメなのは、2通りのパターンのログの取り方です。
1つ目は、自分が今、感じている問題や悩みについて、箇条書きでリストアップし、うまくいっていない理由を挙げることです。おそらくですが、少なくとも2,3個は他責的な意見や理由が出てくるものです。そのときにハッと、外部要因のせいにしてしまっている自分に気付けるのです。
このようにログを取ることで、そのときに、自分自身が内的統制型で捉えているのか?外的統制型で捉えているのか?を振り返ることで、思考の癖を掴むことができ、自身を客観視できるようになります。
2つ目は、他人が他責にしているときに、どんな内容で他責にしてしまっているのかをメモしておき、自分もあてはまる瞬間や経験はなかったかを思い返し、メモ書きとして残すということです。
私は特に職業柄、他責的な意見を聴く機会が多いです。 なんで他責にしてしまうのかを考えることが多いのですが、結局は、周りのせいにすることで、気持ち的に安堵や安心感を得たいのです。
しかし、外的統制型のように他責にしていても、問題解決につながったり、改善行動を自分から取れるようになったりはしていきません。 内的統制型のように自責で考え、自分の中にもやれる行動を見つけることが重要です。
周りの人が他責にしてしまっているときほど、良い材料(問題集)になります。自分だったら、何ができるか?を考え続ける練習をすることで、少しずつ、内的統制型の思考を持てるようになっていくはずです。
社内の組織風土で、外的統制型の思考(他責タイプ)が多い場合、改善行動がとられないので、生産性が落ちる可能性があります。ぜひ内的統制型の思考(自責タイプ)に思考形成できるように取り組んでみてはいかがでしょうか?
ただし、内的統制型の思考になるためには、長い年月と労力が掛かります。効果がすぐに出ないからといって、あきらめてはいけません。少しずつ、少しずつ、1人ずつ、1人ずつ、水面に写る波紋のように伝播していくものです。時間が掛かる点には注意して、取り組んでみてください。
今回は、「失敗を他人のせいにする人、自分のせいにする人では、どんな違いが生まれるの? 仕事がデキる人の特徴の内的統制型の思考」をご紹介してまいりました。 スタッフ教育でも、やはり他責のせいにする人材ではなく、自分のやるべき行動が取れる人材に育てるためにも、参考にしてみてください。
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。