目次
研修講師が現場で見た「NG目標設定あるある」― 盛り上がらない研修に共通する失敗パターン
なぜNG目標は“やらされ感”を生むのか― 盛り上がらない目標設定の正体を構造で読み解く
従来型の目標設定研修が抱える限界― なぜ“ちゃんとやっているのに変わらない”のか
体験型・ビジネスゲーム研修で起こる目標への意識変化
NG目標を「動ける目標」に変える研修設計の視点
研修講師が現場で見た「NG目標設定あるある」― 盛り上がらない研修に共通する失敗パターン
なぜNG目標は“やらされ感”を生むのか― 盛り上がらない目標設定の正体を構造で読み解く
従来型の目標設定研修が抱える限界― なぜ“ちゃんとやっているのに変わらない”のか
体験型・ビジネスゲーム研修で起こる目標への意識変化
NG目標を「動ける目標」に変える研修設計の視点
研修講師が現場で見た「NG目標設定あるある」― 盛り上がらない研修に共通する失敗パターン
①「とりあえず数字を入れた」目標が量産される
目標設定研修で最もよく目にするのが、「とりあえず数字を入れた目標」です。 売上〇%アップ、案件数〇件達成、資格取得〇件など、一見すると具体的で、しっかり考えられているように見えます。 しかし、発表を聞いても背景や理由が語られることは少なく、「前年実績を少し上げただけ」「無難そうな数字を選んだだけ」といった空気が漂う場面も少なくありません。 数字そのものが悪いわけではありません。問題は、その数字に本人の意思や判断がほとんど含まれていないことです。数字が先に決まり、意味づけが後付けになると、目標は一気に“自分ごと”ではなくなってしまいます。その結果、目標は書いた瞬間から動かない存在になってしまうのです。
②「会社目線」だけで作られた目標
次によく見られるのが、会社や上司の期待を強く意識しすぎた目標設定です。 「会社方針に沿って」「上司から求められていることを意識して」作られた目標は、組織としては整っているように見えますが、本人の言葉が含まれていない場合、実行段階でブレーキがかかります。 研修中に「なぜこの目標にしたのですか?」と質問すると、答えが曖昧になるケースも少なくありません。これは能力の問題ではなく、最初から“自分で決める前提”になっていないことが原因です。この状態では、目標は行動を促すものではなく、提出物としての意味合いが強くなってしまいます。
③SMARTに当てはめただけで満足してしまう
SMART目標は、本来とても有効なフレームワークです。しかし研修現場では、「SMARTに当てはまっているかどうか」がゴールになってしまうことがあります。 具体的か、測定可能か、期限はあるか――チェックリストを埋めることが目的化し、目標の中身が置き去りにされてしまうのです。 その結果、「条件は整っているが、本人が語れない目標」が出来上がります。これはフレームワーク自体の問題ではなく、使い方の問題だと言えるでしょう。
④個人目標がバラバラに並ぶだけの状態
個人目標をそれぞれ設定した結果、チームとして何を目指しているのかが見えなくなるケースも多くあります。各自が真面目に考えた目標であっても、互いに噛み合わず、結果として足を引っ張り合う構造になることさえあります。 この段階で、「自分の目標さえ達成すればよい」という意識が生まれてしまうと、チーム全体の推進力は低下します。盛り上がらない研修の裏側では、こうした見えにくい分断が進行していることも少なくありません。
⑤書いた瞬間に“終わる”目標
最後によく見られるのが、「書いた瞬間に終わる目標」です。 研修後に振り返られることも、修正されることもなく、ファイルの奥に眠ってしまう――こうした状況に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。 目標設定が盛り上がらない大きな理由は、目標が“生きていない”ことにあります。書いて終わると分かっているからこそ、参加者は最初から本気になれないのです。
なぜNG目標は“やらされ感”を生むのか― 盛り上がらない目標設定の正体を構造で読み解く
人は「納得していない目標」にはエネルギーを出せない
目標設定が盛り上がらない原因は、参加者のやる気不足ではありません。 多くの場合、人は「自分で納得していない目標」に対して、無意識のうちに距離を取っているだけです。 第1章で紹介したNG目標設定には、共通点があります。それは、目標が“決められているもの”として認識されているという点です。数字が先にあり、会社の意図が先にあり、フレームワークの条件が先にある。その結果、本人が「自分で考えた」という感覚を持てないまま、目標だけが完成してしまいます。
やらされ感を生む3つの構造
研修現場で見られるやらされ感には、ほぼ共通する3つの構造があります。 1つ目は、目的が自分ごとになっていないことです。
「なぜこの目標が必要なのか」を本人の言葉で説明できない状態では、行動は義務になってしまいます。 2つ目は、過程を体験していないことです。
結果だけを提示され、「この目標を立てましょう」と言われても、腹落ちは起こりにくくなります。 3つ目は、選択の余地がないことです。
選べない目標は、どれほど合理的であっても「やらされている仕事」に変わってしまいます。
「正解を探す研修」がやらされ感を強化する
多くの目標設定研修では、無意識のうちに「正解探し」が起こっています。 評価される前提がある限り、参加者は「何を書けば正しいのか」を考え始めます。 この瞬間、目標設定は自己決定の場ではなく、評価に耐える答案を書く作業に変わります。その結果、本音や挑戦的な目標は姿を消し、無難な表現だけが残ってしまいます。
目標が“行動を縛るもの”に変わる瞬間
本来、目標は行動を後押しするためのものです。しかし、やらされ感の強い目標は、逆に行動を縛ってしまいます。 「失敗したら評価が下がるのではないか」
「達成できなかったら説明が必要になる」 こうした不安が先に立つと、人は挑戦を避け、安全な選択をしがちになります。その結果、目標は成長のための指針ではなく、リスクを避けるための制限になってしまいます。
やらされ感は“意識”ではなく“設計”の問題
ここまで見てきた通り、やらされ感は個人の意識の問題ではありません。 多くの場合、「そう感じざるを得ない設計」になっていることが原因です。 そのため、「もっと主体的に考えましょう」といった呼びかけだけでは、状況は改善しません。必要なのは、目標設定のプロセスそのものを見直すことです。
従来型の目標設定研修が抱える限界― なぜ“ちゃんとやっているのに変わらない”のか
①「説明すれば伝わる」という前提の落とし穴
多くの目標設定研修は、「正しいやり方を説明すれば、参加者は理解し、行動を変えてくれる」という前提で設計されています。SMART目標の解説や、成功事例の紹介、理想的な目標設定プロセスの説明など、内容としては非常に真っ当です。しかし、実際の研修現場では、「理解はしたが、行動は変わらない」という状況が繰り返されがちです。 これは、参加者の理解力や意欲の問題ではありません。人は「分かったこと」と「やろうと思えること」の間に、大きな隔たりがあるからです。説明を受けて納得したつもりでも、それが自分の現場や日常の行動にどうつながるのかが見えなければ、変化は起こりにくくなります。②講義型研修が生み出す“受け身の構造”
従来型の目標設定研修では、講師が話し、参加者が聞くという講義形式が中心になることが多くあります。この形式自体が悪いわけではありませんが、目標設定というテーマとの相性には注意が必要です。 目標は、本来「自分で考え、選び、決めるもの」です。しかし講義型の研修では、どうしても「教えられるもの」「与えられるもの」という位置づけになりやすくなります。 その結果、参加者は無意識のうちに受け身の姿勢になり、「どう答えればよいのか」「何が正解なのか」を探すようになります。これが、第2章で触れた“正解探し”を助長する構造につながっていきます。③目標設定が「その場限りのイベント」になってしまう
従来型の研修では、目標設定が「研修内で完結するイベント」になりやすい傾向があります。研修中に目標を作成し、発表し、フィードバックを受けて終了する。 この流れ自体は整っていますが、研修が終わった後のプロセスまで十分に設計されていないケースも少なくありません。 その結果、目標は研修資料やデータとして保存されるだけで、日常業務の中で活用される機会を失ってしまいます。参加者も、「研修用の目標」と「実際の仕事」を無意識のうちに切り分けて考えるようになり、目標が行動に結びつかなくなってしまうのです。④評価と目標設定が近すぎる問題
目標設定研修がうまく機能しない理由の一つに、「評価」との距離が近すぎることが挙げられます。研修で立てた目標が、そのまま人事評価や査定と直結している場合、参加者はどうしてもリスクを避けた選択をしがちになります。 評価される前提が強いと、目標設定は「挑戦するためのもの」ではなく、「失敗しないためのもの」になります。すると、意欲的で本音に近い目標ほど書きにくくなり、無難で安全な表現が増えていきます。これでは、目標設定が成長のきっかけになることは期待できません。⑤「考えさせているつもり」が生むズレ
従来型研修では、「自分で考えてもらう時間を設けています」と説明されることがあります。確かに、個人ワークやグループワークが用意されている場合も多いでしょう。 しかし、その“考える時間”が、実際にはフォーマットを埋める作業に近くなってしまっているケースも少なくありません。 何をどう考えればよいのかが暗黙のうちに決まっている状態では、参加者は自由に考えているようで、実は枠の中で動いているだけになります。このズレが、研修担当者の意図と参加者の実感との間に違和感を生み出します。⑥従来型研修では越えにくい「納得感」の壁
ここまで見てきたように、従来型の目標設定研修には、構造的な限界がいくつも存在します。 説明は丁寧で、内容も正しく、手順も整っている。それでも変化が起きにくいのは、参加者自身が「自分で気づいた」「自分で選んだ」と感じられる瞬間が少ないからです。 目標設定において最も重要なのは、正しさよりも納得感です。この納得感をどう生み出すかが、研修設計の大きな分かれ道になります。体験型・ビジネスゲーム研修で起こる目標への意識変化
目標を「決める前」に、まず動いてみるという設計
体験型・ビジネスゲーム研修の大きな特徴は、目標を決める前に「まず動いてみる」点にあります。 従来型の研修では、最初に目標を設定し、その後に行動計画を考える流れが一般的です。しかし、体験型研修では順序が逆になります。参加者は、明確な正解や目標を与えられないまま、限られた情報と時間の中で判断し、行動することを求められます。 このプロセスを通じて、「なぜうまくいかなかったのか」「次はどうすればよいのか」という問いが自然と生まれます。目標は与えられるものではなく、体験の結果として立ち上がってくるものへと変わっていくのです。失敗やズレが“自分ごと”を生み出す
ビジネスゲーム研修では、思い通りにいかない場面や、他者との意見のズレが必ず発生します。最初は戸惑いや不満の声が上がることもありますが、これこそが体験型研修の重要なポイントです。 失敗やズレを実際に体験すると、「なぜこうなったのか」「自分はどんな判断をしたのか」を振り返らざるを得なくなります。この振り返りの中で、参加者は初めて、自分の行動や考え方と向き合います。結果として、目標は抽象的な言葉ではなく、次に改善したい具体的な行動イメージとして浮かび上がってきます。正解がないからこそ、主体性が引き出される
体験型・ビジネスゲーム研修では、「これが正解です」と示されることはほとんどありません。 一見すると不親切に思えるかもしれませんが、この「正解がない」状態こそが、主体性を引き出す重要な要素です。 正解が用意されていないため、参加者は「どうすれば評価されるか」ではなく、「自分たちはどうしたいのか」を考え始めます。第2章で触れた“正解探し”の構造が自然と崩れ、目標設定が他人の期待から解放されていくのです。チーム内の対話が目標の解像度を高める
ビジネスゲーム研修では、個人だけでなく、チームでの対話が重要な役割を果たします。 同じ状況を体験しても、参加者ごとに感じ方や考え方は異なります。その違いを言葉にし、共有することで、「自分たちは何を大切にすべきか」「どこを改善すべきか」が少しずつ明確になっていきます。 この対話の過程で生まれる目標は、誰か一人が決めたものではありません。チーム全体で納得しながら形づくられていくため、実行段階でもブレにくくなります。ここに、体験型研修ならではの強みがあります。数字が“評価”ではなく“振り返りの材料”に変わる
体験型研修では、数字も重要な役割を果たします。ただし、その扱われ方は従来型研修とは異なります。 ゲーム内で示される数字は、順位や点数として提示されることが多いものの、それ自体が評価の目的になることはありません。 数字は、「なぜこの結果になったのか」を考えるための材料として使われます。そのため、数字に対する恐れや抵抗感が薄れ、「次はどう改善するか」という前向きな議論につながりやすくなります。結果として、目標は数字に縛られるものではなく、行動を見直すための指標として機能し始めます。「やらされ感」が消える瞬間に起きていること
体験型・ビジネスゲーム研修の終盤になると、参加者の言葉が変わっていく瞬間があります。 「言われたからやる」ではなく、「次はこうしたい」「今度はここを改善したい」といった言葉が自然と出てくるようになります。 この変化は、特別な指導や説得によって起きているわけではありません。体験を通じて、判断し、失敗し、振り返るというプロセスを踏んだ結果として生まれています。目標が「決められたもの」から「自分たちで見つけたもの」に変わったとき、やらされ感は静かに消えていきます。 体験型研修を取り入れることで、目標設定研修の役割そのものも変わってきます。 目標を“教える場”から、目標が“立ち上がる場”へ。評価のための準備ではなく、行動を変えるためのきっかけとして機能するようになります。NG目標を「動ける目標」に変える研修設計の視点
目標を「決めさせない」ことから始める
一見すると矛盾しているようですが、動ける目標をつくるためには、最初から目標を決めさせないことが重要です。 従来型の研修では、「まず目標を設定しましょう」という流れが当たり前になっています。しかし、この順序こそが、やらされ感を生み出す原因になっている場合があります。 体験型研修では、先に行動や判断を経験することで、「次はどうしたいのか」「何を改善したいのか」という問いが自然に生まれます。この状態で目標を言語化すると、それは“考えさせられた目標”ではなく、“必要に迫られて出てきた目標”になります。ここに、行動につながるかどうかの大きな違いがあります。数字の前に「判断基準」を言語化する
動ける目標には、必ず判断基準が含まれています。 単に「売上を伸ばす」「効率を上げる」といった数字だけを掲げても、「どう判断すればよいのか」が分からなければ、現場では迷いが生じます。 体験型研修では、ゲーム内での意思決定を振り返りながら、「なぜその選択をしたのか」「別の選択肢はなかったのか」といった対話を重ねます。このプロセスを通じて、参加者は自分たちの判断のクセや基準に気づいていきます。その上で数字を設定することで、目標は単なる数値ではなく、行動の指針として機能し始めます。個人目標とチーム目標を意図的につなぐ
第1章で触れた通り、個人目標がバラバラに設定されると、チーム全体の動きは鈍くなります。 盛り上がる目標設定研修では、個人目標とチーム目標の関係性が意図的に設計されています。 例えば、チームとしての成果が個人の行動によって左右される構造をつくることで、「自分の目標がチームにどう影響するのか」を実感できるようになります。こうした設計によって、個人目標は自己完結するものではなく、チームの一部として捉え直されます。正解を教えないことで、納得感をつくる
動ける目標を生み出すためには、研修の中で安易に「正解」を提示しないことも重要です。 正解を教えてしまうと、参加者はその正解に合わせて考えようとし、自分なりの答えを探すことをやめてしまいます。 体験型研修では、あえて答えを提示せず、参加者同士の対話や振り返りを通じて気づきを引き出します。このプロセスを経てたどり着いた目標は、「言われたからそうする」のではなく、「自分たちで納得して決めたもの」になります。この納得感こそが、行動を継続させる原動力になります。目標を「書いて終わらせない」仕掛けをつくる
どれだけ良い目標を設定しても、その後のフォローがなければ意味を持ちません。 動ける目標を定着させるためには、目標を定期的に振り返り、修正できる仕組みが必要です。 体験型研修では、ゲーム内での結果を振り返るように、目標そのものも見直す対象として扱います。「達成できたかどうか」だけでなく、「どんな判断をしたのか」「次はどう変えるか」を確認することで、目標は固定されたものではなく、進化するものとして扱われるようになります。研修設計が変わると、参加者の姿勢が変わる
ここまで見てきたように、動ける目標を生み出すために必要なのは、参加者の意識改革ではありません。 目標設定のプロセスそのものを見直し、体験と対話を中心に据えた設計に変えることです。 研修設計が変わると、参加者の姿勢は自然と変わっていきます。無理に盛り上げようとしなくても、主体的な発言が増え、目標に対する責任感も高まっていきます。まとめ
目標設定研修が盛り上がらない、行動につながらないと感じるとき、つい「参加者の意欲」や「主体性」の問題だと考えてしまいがちです。しかし本コラムで見てきたように、その多くは個人の姿勢ではなく、目標設定そのものの設計に原因があります。数字を入れ、フレームワークに当てはめ、形式を整えること自体は間違いではありませんが、それだけでは人は動きません。 やらされ感が生まれる目標設定には、共通した構造があります。 目標が最初から決められており、選択の余地がなく、過程を体験していない状態では、どれほど正しい目標であっても「自分の目標」にはなりにくいのです。その結果、目標は行動を後押しするものではなく、評価や管理のための存在に変わってしまいます。 一方で、体験型・ビジネスゲーム研修の現場では、目標への向き合い方が自然と変わっていきます。先に行動し、失敗やズレを経験し、対話を通じて振り返る。その過程の中で、「次はこうしたい」「ここを改善したい」という言葉が参加者自身から生まれてきます。こうして立ち上がった目標は、決めさせられたものではなく、必要性から生まれたものです。 重要なのは、目標を「立てさせること」ではなく、「目標が立ち上がる環境をつくること」です。研修の設計や進め方を少し変えるだけで、目標設定の質は大きく変わります。必ずしも大がかりな研修を行わなくても、問いの立て方や対話の持ち方を見直すことで、現場でも変化を生み出すことは可能です。 目標設定は、書いて終わる作業ではありません。 行動を変え、成果につなげるための道具です。その本来の役割を取り戻すために、まずは「どのように目標を決めているのか」を振り返ることから始めてみてはいかがでしょうか。そこにこそ、盛り上がらない研修や動かない目標を変えるヒントが隠れています。
【執筆者情報】
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間100登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。