成果を出すために身に付けておきたいインバスケット思考とトレーニング方法のご紹介

成果を出すために身に付けておきたいインバスケット思考とトレーニング方法のご紹介

成果を出すために身に付けておきたいインバスケット思考とトレーニング方法のご紹介

皆さんはインバスケット思考という言葉をご存知でしょうか? このインバスケット思考は成果を出すために身に付けておきたい考え方の1つです。

インバスケット思考とは?


インバスケット思考とは、「複数の業務を与えられた時間内に的確に、かつ、高い精度でこなすための思考法」と言われています。 インバスケット思考は昇格試験や企業研修でも扱われており、職場での意思決定やタスク管理の能力を向上させるためのトレーニング方法の一つとされています。 次期管理職や管理職向けの研修で実施されることが多いのですが、新卒社員がこのスキルを身につけることで、業務を効率的に進める力を養うことができるのでおすすめです。

そもそもインバスケットとは?


「インバスケット(in-basket)」は、オフィスで書類やタスクを一時的に保管するための「受信トレイ」を指します。インバスケット思考では、仮想の職場環境で、あなたが担当する様々なタスクや問題が「受信トレイ」に一気に入ってくるというシナリオを想定します。

インバスケット思考の発祥はアメリカです。1950年代にアメリカ空軍で開発されました。当初は、将校の意思決定能力や問題解決能力を評価するための手法として用いられていました。これが後にビジネスや教育の分野に応用され、現在では多くの企業や組織で人材育成の一環としてインバスケットトレーニングが行われています。

インバスケット思考の歴史と変遷

1950年代
アメリカ空軍で、将校のトレーニングプログラムの一環として開発されました。このプログラムでは、将校が多くの情報やタスクを一度に処理する能力を評価するために、インバスケットシミュレーションが用いられたそうです。

1960年代
インバスケット手法は、民間企業や教育機関にも広まり始めました。特に、管理職のトレーニングや評価手法として採用されるようになりました。

1970年代以降
インバスケット思考は、アメリカ以外の国々にも広まりました。日本を含む多くの国で、管理職やリーダーシップ開発の一環として導入され、様々な業界で活用されるようになりました。

インバスケット思考は、実際の業務環境をシミュレーションすることで、受講生が現実に近い状況下で迅速、かつ、正確な意思決定を行う能力を養うことを目的としています。そのため、職場での実践的なスキルを養うための効果的な手法として、現在でも多くの組織で取り入れられているのです。

インバスケットの具体例のご紹介


新卒社員の田中さんが、営業部に配属されたと仮定しましょう。ある日、田中さんのインバスケットに次のようなタスクが入ってきました。

✓緊急のクライアントミーティングのスケジュール調整
✓上司からのレポート提出依頼(締め切りは翌日)
✓同僚からの資料作成の依頼(締め切りは今週中)
✓次週の営業会議の準備

田中さんは、まず全てのタスクを確認し、以下のように優先順位をつけます。

1位:上司からのレポート提出依頼(翌日締め切りなので最優先)
2位:緊急のクライアントミーティングのスケジュール調整(クライアント対応は重要)
3位:次週の営業会議の準備(時間はあるが計画が必要)
4位:同僚からの資料作成の依頼(締め切りまで余裕がある)

このように、田中さんはインバスケット思考を使って優先順位をつけ、効率的にタスクを処理していきます。これにより、重要なタスクを見逃すことなく、計画的に仕事を進めることができるのです。

インバスケット思考を活用するときのポイント


それではインバスケット思考を活用するときのポイントを見ていきましょう。

1. 優先順位の設定


– 緊急度と重要度を見極める
インバスケットでは、膨大な情報やタスクが一度に提示されます。この中から何を優先するべきかを判断する能力が求められます。 タスクや問題の緊急度(すぐに対応が必要か)と重要度(ビジネスにどれだけの影響を与えるか)を評価し、重要度や緊急度を見極め、最も影響力の大きいタスクから取り組むことが重要です。その際、アイゼンハワーの優先順位マトリックスなどを活用すると効果的です。

2. 時間管理でタスクを遂行


- タイムマネジメント
優先順位が決まった後は、タスクを効率的に処理するスキルが重要です。時間管理やリソースの最適化を行い、短時間で多くの成果を上げるための戦略を立てることが求められます。タイムブロックを設定し、各タスクに集中する時間を確保しましょう。

3. 情報の整理と分析


- 情報の収集と整理
多くの情報が与えられる中で、必要な情報を効率的に抽出し、分析する能力が必要です。情報の本質を捉え、正確な意思決定に必要なデータを迅速に見極めることが求められます。必要な情報を迅速に収集し、整理します。情報を分析して、本質を見極める能力が求められます。

4. 問題解決能力


- 原因と対策の明確化
問題の原因を特定し、効果的な解決策を考える能力が重要です。PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を活用して、継続的に改善を図ります。

5. 決断力


– 迅速かつ確実な意思決定 情報をもとに迅速に判断し、適切な決断を下すことが求められます。決断した後は、実行に移すための行動計画を立てます。

6. コミュニケーションスキル


– 明確な指示出しと報告
チームメンバーや関係者に対して、明確で効果的なコミュニケーションを行います。タスクの進捗状況や問題点を適切に報告し、必要な情報を共有します。

7. リスク管理 


- リスクの予測と対策
各タスクのリスクを評価し、適切な対策を講じる能力もインバスケットスキルの一環です。リスクを予測し、予防措置を取ることで、意思決定の質を向上させることができます。事前にリスクを予測し、適切な対策を講じることが重要です。リスク管理プランを作成し、リスクが発生した場合に迅速に対応できるように想定+準備をしていきましょう。

8. 柔軟な対応力


- 状況変化への対応
業務環境や状況が変わった場合に柔軟に対応する能力が求められます。プランの変更やタスクの再優先順位付けを迅速に行います。

インバスケット思考のポイントは、優先順位の設定、効率的な時間管理、情報の整理と分析、問題解決能力、決断力、コミュニケーションスキル、リスク管理、柔軟な対応力などです。これらのポイントを押さえて実践することで、複雑な業務環境においても効果的にタスクを管理し、迅速かつ正確な意思決定を行う能力を養うことができるようになります。

フレームワーク_重要緊急マトリックス

インバスケット思考での具体的なトレーニング方法は、実際の業務環境をシミュレーションすることで、参加者が現実的な状況下で迅速かつ正確な意思決定を行う能力を養うことを目的としています。 インバスケット思考の具体的なトレーニング方法を紹介します。

インバスケット思考トレーニング方法

1. インバスケットシナリオの準備


まず、トレーニングのためのシナリオを準備しましょう。シナリオには参加者が解決すべきタスクや問題と以下の要素を含めて作成しましょう。

【要素】
タスクや問題のリスト: 実際の業務に即した複数のタスクや問題を用意します。
背景情報: 参加者が状況を理解するために必要な情報(例えば、会社の状況、チームメンバーの役割、顧客の要求など)を提供します。
制約条件: 期限やリソースの制約など、現実的な制約条件を設定します。

2. インバスケットの実施


参加者にシナリオを提供し、以下の手順でトレーニングを進めていきます。

(1) シナリオの読み込み
参加者は、提供されたシナリオと背景情報を読み込み、全体像を把握させる時間を設けます。

(2) タスクの優先順位付け
参加者は、与えられたタスクや問題の優先順位を決め、どのタスクが最も重要で、どれが緊急であるかを判断してもらいます。

(3) タスクの処理
優先順位に基づいて、タスクを一つ一つ処理していきますが、処理の仕方は記述式で、具体的に何をどうするのか?の具体的行動を書いてもらいます。

(4) 時間管理
インバスケット思考のトレーニングではタスクを処理するための時間管理も重要です。仕事というのは無限に行えるものではありません。限られた時間内で効率的にタスクを完了させることを意識させ、時間的コストにも着目させましょう。

3. フィードバックと振り返り


トレーニングの最後には参加者に対してフィードバックを行い、振り返りをしましょう。

①振り返り個人ワーク
参加者は、自分の意思決定やタスク処理について自己評価を行います。どの部分がうまくいったか、どの部分が改善の余地があるかを振り返ります。

②相互フィードバック
講師や他の参加者からのフィードバックを受けることで、第三者の視点からの意見やアドバイスを通じて、自分の行動や判断の質を向上させることができるはずです。

振り返りをもとに、次回のインバスケットトレーニングや実務において改善すべき点を明確にし、具体的な改善行動につなげていくように促しましょう。

インバスケット思考での問題例


インバスケット思考を使用したトレーニング問題を5つ作成してみました。このトレーニング問題を制限時間(仮に10分)を設け、処理してもらいます。

設定としては営業、部下がいる佐藤さんという役です。

問題1: クライアントからの急ぎの要求

具体的な答えの例(同じような趣旨であればOK)

解説
クライアントの急ぎの要求に迅速かつ誠実に対応することが重要です。現実的な対応可能な時間枠を提供し、現在の状況を説明することで、クライアントとの信頼関係を維持します。

問題2: 部下からの相談

具体的な答えの例(同じような趣旨であればOK)

解説
部下の相談に対しては迅速に対応し、具体的な時間を提案することで、部下の問題解決に協力する姿勢を示しましょう。事前に相談内容を共有するよう依頼することで、効率的な相談を実現します。

問題3: 取引先からのクレーム

具体的な答えの例(同じような趣旨であればOK)

【解説】
取引先のクレームには迅速かつ丁寧に対応することが重要です。問題の原因を確認し、具体的な時間枠を示して再度連絡することを約束することで、信頼回復に努めます。

問題4: 上司からの突然の依頼

具体的な答えの例(同じような趣旨であればOK)

【解説】
上司からの急な依頼に対しては、迅速に対応し、具体的な提出時間を示すことで、上司の期待に応えます。迅速な対応を約束することで信頼を得られます。

問題5: 社内会議の議題提案

具体的な答えの例(同じような趣旨であればOK)

【解説】
同僚からの議題提案には建設的な意見を提供し、議論の優先順位を示します。また、他のメンバーの意見を収集することを提案することで、全員の意見を反映した会議を実現します。

インバスケット思考のトレーニング問題は、現実的なビジネスシナリオをもとに作成されているため、実際の業務に役立つスキルを磨くことができるはずです。

インバスケット思考トレーニングの効果とは


インバスケット思考トレーニングは、現代のビジネスパーソンにとって欠かせないスキルやマインドを養うための強力なものです。このトレーニングを通じて得られる具体的な効果は下記のようなものが挙げられます。

1. 意思決定力の向上
ビジネスの現場では、迅速かつ正確な意思決定が求められます。インバスケット思考トレーニングでは、限られた情報の中で最善の判断を下す能力を磨くことができます。これにより、予測不能な状況下でも自信を持って決断を下せるようになります。

2. 優先順位設定のスキル
多忙なビジネス環境では、数多くのタスクを効率よくこなすための優先順位設定が不可欠です。このトレーニングを通じて、重要度や緊急度を見極める力が身につき、業務の効率化と時間管理能力の向上が図れます。

3. 問題解決力の強化
問題解決能力は、どの職場においても高く評価されるスキルです。インバスケット思考トレーニングでは、現実のビジネスシーンに即した課題に対して、創造的かつ実践的な解決策を見つける力を養います。これにより、日常業務でのトラブルシューティング能力が飛躍的に向上します。

4. コミュニケーション能力の向上
メールや報告書を通じたコミュニケーションスキルは、ビジネスにおいて非常に重要です。トレーニング内でのシミュレーションを通じて、効果的なコミュニケーション方法を学び、社内外での情報共有や報告が円滑に行えるようになります。

5. ストレス耐性の強化
ビジネスの世界では、プレッシャーのかかる状況に対処する力が求められます。インバスケット思考トレーニングは、緊急の依頼やクレーム対応など、ストレスフルなシナリオを通じて、冷静かつ効果的に対応するスキルを育成します。これにより、実際の業務におけるパフォーマンスが向上します。

6. 実務経験のシミュレーション
特に新入社員や経験の浅い社員にとって、実務経験を積む前に実践的なスキルを習得することは大きなメリットです。インバスケット思考トレーニングは、現実に即したシナリオを通じて、即戦力として活躍できる人材を育成します。

インバスケット思考トレーニングは、これらのスキルを体系的に向上させることで、個人の能力を高めるだけでなく、組織全体の生産性向上にも大きく寄与します。現代のビジネス環境において、迅速かつ的確な対応が求められる中で、このトレーニングは非常に有効な手段と言えるでしょう。


まとめ


インバスケット思考のトレーニングは、仕事におけるスキル向上させることで、個人の能力を高めるだけでなく、組織全体の生産性向上にも大きく貢献してくれます。現在のビジネス環境において、迅速かつ的確な対応が求められる中で、インバスケット思考のトレーニングは非常に有効な手段と言えるでしょう。

業務の効率化、チームの連携強化、そしてストレス耐性の向上を目指す全てのビジネスパーソンに、インバスケット思考トレーニングを強くオススメします。これにより、企業全体の競争力が向上し、持続的な成長が期待できます。ぜひ、インバスケット思考トレーニングを導入し、その効果を実感してみてください。


【執筆者情報】

ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃

研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間100登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。

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