従業員の仕事に対するモチベーションを高めるためには、どのような方法が考えられるでしょうか?
今回、ご紹介するマズローの欲求5段階説と言うものがあります。
人間の欲求には際限がなく、どんなに裕福な暮らしをしていても、それには満足できず、また次の欲求が出てくるものです。
しかし、欲求不満が生じるのは決して悪いことではありません。なぜなら、それは人間が成長する原動力になるからです。
アメリカの心理学者、アブラハム・マズローは、人間の基本的欲求を4つに分け、1つの欲求が実現されると、さらに上位の欲求(成長欲求)が生まれるとしました。
人間性心理学の生みの親とされ、その人格理論は日を実現理論と呼ばれ経営学などの、他の分野でも評判となりました。
マズローの欲求5段階説は以下のような図です。
マズローの欲求5段階説
生理的欲求
基本的欲求の1番目は、「生理的欲求」です。
お腹を満たすための「食べる」、喉の渇きを満たすための「飲む」、その他の「排泄する」など人間が生きるために最低限必要となる欲求です。
安全欲求
2番目は、身の安全と生活の安定を確保するための「安全欲求」です。
親和欲求
3番目は、「親和欲求」で、自分が所属する集団に受け入れてもらいたい、愛する人が欲しいなどの欲求です。
自尊欲求
最後が、他者から認められたい、尊敬されたいと願う「自尊欲求」です。
これら4つの欲求は、1つずつ満たされることに階層的に次の欲求へと進みます。
人は、食事や衣服を安心して手に入ることで、衣食を満たせるようになり、そして、安心して暮らせる家を求めるようになります。 そして、安心して暮らせる家を手に入れれば、次の欲求の段階に入っていくわけです。 ある程度の生活ができるように、満足できると、次には良い仕事をしたい、結婚をして幸せな家庭を作りたいと言う欲求が次々に生まれていきます。
そして、最終的には、他者から尊敬される人間になりたいと思うようになります。
自己実現欲求
基本的欲求の全てが満たされると、さらに上位の欲求である成長欲求(自己実現欲求)を満たしたいと思うようになり自分の能力を最大限に発揮し、自己の可能性を高めたいと願うようになっていくわけです。
説明出典:『面白いほどよくわかる!心理学の本』渋谷昌三氏著
マズローは欲求階層説を発表した後で「欠乏動機」と「成長動機」と言う考え方を発表しています。
成長動機・・・成長することそれ自体が目的になるもの(自己実現の欲求)
何のために仕事をするのか?という仕事の第一段階の目的は、「生理的欲求」と「安全欲求」をまずは満たすためだと考えられます。 仕事を通し、お金を稼ぐことで、ご飯が食べることができ、お金を稼ぐことで、安心して生活できる住環境を整えることができるのです。
自己実現のためや、やりがいを感じたい!というモチベーションよりも、生活の欲求を満たすための仕事ということです。
そして、安定した生活ができるようになっていくと、
今度は所属している会社や組織で受け入れられたいという欲求や他の人たちからも認められたいと思うようになってくる訳です。
会社の人たちのためにも頑張りたい、お客様のためにも頑張りたい。そして、褒められたい。という欲求は、誰しもが感じていることだと思います。
親和欲求や自尊欲求が満たされていくと、さらに高い欲求として、自分の夢やなりたい姿になるために挑戦したいと思うようになっていくのです。
私自身も今までの社会人生活を振り返ると、
欲求5段階説になぞって意思決定をしていたと感じます。
新卒で働き始めてから、年収も徐々に上がっていき、生活は安定していくと、ちょっとずつ、仕事への幅や深さをやりがいとして感じてみたいようになったものです。
会社のメンバーから一人前だと認められたい、マネージャーとして頑張っていると言ってもらいたい。と自尊欲求が強くなった時期もあります。
そして、自己実現欲求では、転職し、違う分野の仕事をすることでさらなる成長を遂げたいと感じて、転職も、起業もしてきました。
起業をすると当然、収入はいきなり安定するわけでもないので、また安全に安定した生活ができるよう生理的欲求や安全欲求を満たしたいと強く思うようにもなりました。 (私は、恥ずかしながら、まだまだ安全欲求を満たすために稼ぎたいと思っているところですかね笑)
しっかりと安定した事業基盤を作ることで、収入も安定し、今度は上位の欲求が生まれてくるはずです。
従業員の仕事に対するモチベーションを高めるためには?
従業員の仕事に対するモチベーションを高めるためにも、このマズローの欲求5段階説を意識して、会社の制度やマネジメント方法を考えるのも1つです。
私の知り合いのベンチャー企業では、若手社員が新卒で入って、だいたい3〜5年で転職してしまうことが多かったそうです。社長さんの話を聞いていると、この年次でなかなか給与を上げることができず、若手社員は将来を見据えることができず、他社に行ってしまうことが多かったそうです。そこで、給与体系の中で、インセンティブを付けることで、給与ベースが上がり、退職が減ったそうです。
経営者にとって、全員のベストは取ることが難しいですが、ベターを取れるような工夫は必要となります。
意外に見落とされがちですが、従業員の安全欲求を満たせるように給与面や心理的安全性を確保できる組織づくりは必要です。
また親和欲求や自尊欲求の観点から考えると、 他のメンバーや上司から褒められたい、認められたいと思う欲求は、誰にだって存在します。 (社長だってスタッフや従業員から褒められたいんですよ笑)
少し前にほめ達!という研修や書籍が話題に上がりましたが、日本人は手放しに褒めたり、認めたりするのが苦手なようです。
承認される欲求は、誰にもありますので、上司や先輩からフィードバックをする際も、改善点だけを伝えるのではなく、良い点や褒める点があれば、それもセットで伝えるようにしたほうが良いです。
最後は、自己実現欲求の観点から考えると、
「従業員の成長のために、会社は何をしてあげれるか?」という点です。
そもそも、従業員がどんなことをやりたいのか?どんなことをチャレンジしたいのか?などの仕事における目標や夢を知っておくことが必要です。そして、それらを把握した上で、個々のステージや仕事、キャリアを実現できるよう、会社が用意してあげられる制度や体制を整えられると良いでしょう。
当社のお客様で、こんな取り組みをされている会社があります。全国で、小売店舗を持たれている会社様ですが、 FA制度という、入社して4、5年経つと、自分の希望する部署を選び、配属先をある程度、自由に決められるというものです。入社して、すぐではやりたいことも見つけられない可能性もあるので、数年経過した段階で、自分たちがやりたい業務にチャレンジできる環境を整えているそうです。
今回は、マズローの欲求5段階説をご紹介し、マズローの欲求5段階説から考える従業員の仕事に対するモチベーションを高めるためのポイントを考察してきました。
モチベーション管理の一つのアプローチとして、ぜひマズローの欲求5段階説を参考にしてみてください。
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。