思い込みによって、行動が変わってしまう?行動を促すために必要な認知行動療法とは-エリスのABC理論

思い込みによって、行動が変わってしまう?行動を促すために必要な認知行動療法とは-エリスのABC理論

思い込みによって、行動が変わってしまう?行動を促すために必要な認知行動療法とは-エリスのABC理論

ある一つの物事に対して、良い・悪いや、何にも感じない、など捉え方は人それぞれです。 例えば、テストの残りの時間があと30分もあると考える人と、もう30分しかないと考える人がいます。このように、目の前の現実はまったく同じですが、認知の仕方(物事の捉え方)によって、心の有り様は180度、変わってくるのです。

実は、心理的に問題やストレスを抱える人の多くは、この認知の仕方に問題があるとされています。 例えば、小さな失敗やミスをとんでもない大きなミスで取り返しのつかない失敗と捉えてしまったり、致命的なものと考えてしまったり、極端に0か100かで物事を判断するなど、現実の認知が歪んでしまっているのがその原因とされています。

こういった心理的な問題やストレスを抱えることで、体調に影響を及ぼすなど、悩んでいる方も増えてきています。

そのような状況から、ここ10年メンタルヘルス系の研修が増えていますが、メンタルヘルスの研修でも、取り上げられている認知行動療法と言う考え方があります。

認知行動療法は、そうした認知のあり方を見つめ直し、非合理的な思考パターンや行動の修正を図ることで心理状態の改善を目指すものです。実際にパニック障害や社会不安障害、軽度のうつ病、不眠症、強迫性障害、パーソナリティー障害、薬物への依存など精神疾患の治療や、夫婦関係の改善といったカウンセリングやセラピーに利用されています。

認知行動療法の代表的なものに、アメリカの心理学者アルバート・エリスによる論理療法があります。 今回は、そのエリスによる論理療法をご紹介したいと思います。

 

ABC理論

エリスによる論理療法はABC理論とも呼ばれています。
※CのあとにDEを付け、ABCDE理論とされることもあります。


「ABC」は、Activating event、Belief、Consequence、の頭文字を取ったもので、それぞれ次のような意味を持ちます。

A:出来事(Activating event)
B:信念や捉え方:受け取り方や感じ方(Belief)
C:結果としての感情や行動(Consequence)


A:出来事があって、C:結果があるのではなく、その間にB:ビリーフ(受け取り方や感じ方)による解釈があって、C:結果があるということです。
※人は、必ずB:ビリーフを通り、出来事に対して、解釈したり、意味づけしたりをしているのです。

具体例で挙げると、上司に怒られた部下の反応として、以下の2つが考えられます。

1. B=怒られることは恥ずかしいこと ⇒ 気持ちが沈む
2. B=怒られることは期待されている証拠 ⇒ 奮起して頑張る

 

上司から怒られたという出来事は、変わりようのない事実ですが、それをどう解釈するかによって、感情や行動が異なる訳です。

Belief(信念)には、合理的なラショナルビリーフ (rational belief)と、不合理なイラショナルビリーフ (irrational belief)の2つが存在します。

不合理なイラショナルビリーフとは、「○○すべきである、○○でなければならない」といった非合理的な信念のことを指します。

  メンタルを強化していくためには、ストレスの耐性を強化するためには、不合理なイラショナビリーフの「解釈」を変えていく必要があるのです。これがABC理論の続きのDEを合わせたABCDE理論です。
※DとEとは、Dispute、Effectsの頭文字を取ったものです。

 

D:Dispute(非合理的なBに対する反論)
E:Effect(Dによる効果)

と、言われます。

 

前述の上司に怒られた部下の反応として、「怒られることは恥ずかしい」と思ってしまっていると、気持ちが沈み、やる気が無くなってしまう可能性があります。そこで、「怒られることは決して、恥ずかしいことではなく、上司から期待されているから、指導を受けたのでは?」と、自分自身が考えたビリーフに対して、反論する(解釈を変えてみる)ことで、考え方が変わり、「期待に応えるためにも頑張ろう」と、奮起し、やる気が上がる可能性もあるのです。

 

A:出来事によって、引き起こされた心理的な問題は、その出来事に対して、その人のB:信念が非合理な解釈をしてしまったC:結果と言えるので、その解釈(イラショナル・ビリーフ:非合理な解釈)を修正し、正しい解釈ができるように導くことが重要です。正しい解釈をするためには、非合理なB:信念に対して、反論(Dispute)をすることです。そうすることで、合理的な、客観的な判断ができるようになり、適切な解釈ができるようになっていく訳です。

非合理的なB:信念をもっていると、出来事は誤った解釈によって、ネガティブな結果を生むことになります。そこが問題になるので、ABC理論を用いて、非合理的なビリーフを修正し、合理的で健全なビリーフに書き換えることが、このABC理論の、認知行動療法の目的なのです。


今回は、行動を促すために必要な認知行動療法である「エリスのABC理論」をご紹介しました。Belief(信念・捉え方)の解釈の仕方によって、C(結果)の起こり得る感情の結果がネガティブやマイナスなものになりかねません。ネガティブ・マイナスな感情を抱くと、気付かぬうちに、自分自身の行動を制限してしまう可能性があるのです。  行動が起こせない人には、こういった認知の仕方に問題があると言われますので、認知の仕方を修正できるように、まずは、出来事の捉え方をプラスな面にフォーカスしてみて、認知の仕方を変えてみてください。


【執筆者情報】

ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃

研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。

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