みなさんは、人に何かを教えるときに、相手の態度が気になったことはありませんか?
例えば、
・部下から提案書の書き方についてわからないからアドバイスしてあげたけど、本当に理解したのか、わからない
・後輩から〇〇について教えてあげたけど、聞いてる様子からお節介だったかもと感じてしまった
など、教えたもののお互いにとって、有意義な時間になったのかどうか不安に感じる瞬間もあったのではないでしょうか。
私は職業柄、講師をさせていただく機会も多いので、人に教える回数、伝える回数も他の方よりは多いと思います。 教えることを生業にしているからこそ、感じた気付きというものがあります。 それは、教わる姿勢、つまり、教わり方が上手なのか下手なのかによって、圧倒的に成長スピードが違っているという点です。
教わり上手になれるかどうかによって、自らの成長を加速できるか、止めてしまうかが変わってくるといっても過言ではないのです。
そこで今回は、教わり上手の人たちが行っている5つのポイントをご紹介していきたいと思います。
教わり上手の5つのポイント
①教えてくれる相手を乗せるのがうまい
②教えてもらう意味や目的を理解できている
③素直にやってみようという姿勢がある
④教わったところを具体化できる
⑤教えてくれる人への気遣いや感謝を忘れない
①教えてくれる相手を乗せるのがうまい
教わり上手は、教えてくれる相手を乗せるのがうまいのです。
みなさんの周りにもいませんか?
「吸収したいんで、些細なことでもフィードバックしてください!」とか、
「●●さんが管理職のマネージャーになったときは、どうだったんですか?教えてほしいです。」というように、
教えてほしいんです!と、リクエストが言える人は、上司は教えがいがあるものです。
教えてくれる相手を乗せるのがうまい人は、そもそも聴く姿勢ができています。
いわゆる傾聴、アクティブリスニングというやつです。
聴く姿勢のポイントは、4つです。
(1)話を聴く時には、相手の目を見る。
(2)あいづちを打ったり、うなずいたりする。
(3)時折、質問をする。
(4)メモを取る
基本的なところかもしれませんが、意外にできていない人が多いですし、私自身もふと忙しくなると、できていないなぁと感じるときがあります。
もし仮にみなさんが教えてもらっている時に、話を聞いてるか聞いていないかわからない態度や表情だったら、「二度と教えてやるもんか!」と思われてしまうかもしれません。改めて、自分が教わるときの態度や表情が客観的にどう見えているのかを見直してみましょう。
聴く姿勢のポイントであげた相槌は、かなり効果的で、教えてくれる相手を乗せるのがうまい人の共通点は、相槌やリアクションのレパートリーが豊富というところです。
相槌の種類も、なるほど、いいですね、確かに、などなどたくさん種類がありまし、 なるほど⤵︎、なるほど⤴︎とトーンを変えながら、理解しているんだな、納得しているんだなと示すことができるのです。
皆さんもよく耳にしたことがあるかもしれませんが、 相槌、リアクションには、「さしすせそ」の法則というものがあります。
さしすせその法則
「さ」・・・「さすがですね!」
上司がかっこいい姿や新しいアイデアやアドバイスをもらうときを見せた時には、いましょう!例えば、上司が営業マンであれば、会社に対する売上貢献をしたときや、チームを取りまとめる姿を見たとき。また、飲みの席などで上司がオススメの料理を教えてくれた時などにも使えるフレーズです。
「し」・・・「知らなかったです!」
上司が知識を披露している時に使用しましょう。もちろん、うんちくや小ネタを語りだしたときも効果的ですが、この言葉は、いつでも使えるフレーズではありません。場面を間違えると、あなたの頭が悪いと勘違いをされるので注意が必要です。
「す」・・・「すごいですね!」
これも先ほど記載したような、上司が賞賛されている時に効力を発揮します。営業成績などで、実力を垣間見た時には、上司も鼻高々。また、飲みの席で上司の知り合いとばったり会った時に使用すれば、「顔が広いんですね!」と間接的に伝えることができます。
「せ」・・・「センスが違いますね」
このフレーズは頷きながら、なにか納得した雰囲気を合わせて見せると効果を発揮します。上司の身につけている服装を見て、新しいネクタイやハンカチ、カバンなどを身につけていると気づいたときや、買い換えたときに使えるフレーズです。
「そ」・・・「そうなんですか?」
上司に質問をして、意外な言葉が返ってきたり、周知されていない答えがかえってきた時には、このフレーズを駆使しましょう。他になにも言わずとも、自然に「上司しか知らなかった事実ですよ!」ということを伝えることができます。ただし、どのような場面でも使える言葉ではありません。安易に使いすぎないよう、注意が必要です。
リアクションによって、相手が話しやすい雰囲気や状況をつくることはできるのです。 聴き上手になって、どんどん引き出していきましょう。
②教えてもらう意味や目的を理解できている
上司がわざわざ時間を取っても、部下本人が、アドバイスなんて要らない、教わる必要なんてない、と思ってしまっているケースをよく耳にします。
新人の頃であれば、右も左もわからない中なので、教わることがすごい助けになっていたのに、ある程度、型を覚えて、仕事を回せるようになると、途端に自分のやり方や方法に固執してしまうようになってしまう。 もっとこういう風に工夫したら、良いんじゃない?、ここら辺が改善できると思うよ、と上司から言われても、耳を貸さなくなる。なんてことも多いと思います。
こうなってしまっては、上司もわざわざ介入してまで助言をしようとは思えません。
アドバイスや助言をもらったら、何か伸びしろがあるということなんです。
これを素直に受け取れるかどうかです。
私も、実は改善のアドバイスを受けるのが少し苦手なんです笑。
昔、新しいセミナーのコンテンツ内容を知り合いの会社さんにオンラインで共有させてもらって、アドバイスをいただいたのですが、少しムッと感じてしまいました。自分はこれが良いと思うし、お客様もこれを望んでいると思うと思って進めているので、自信があったのでしょう。ムッとしてしまいました。
そのときは、ムッとしてしまった反面、一旦冷静に考えて、確かにそういった別の視点で考えると、違う情報もあった方がいいなと感じ、改善に向けてアドバイスを受け入れることができました。
ムッとして、申し訳ありませんでした。と謝罪しながら、先方とその後も滞りなく、打ち合わせを進めることができたのです。
終わった後に先方から、「ムッとした感じはすごい伝わって来ましたよ笑。それだけ自信があった内容だからだと思うんですよね。それを冷静にムッとしてすみませんと言えるのは素直な姿勢だと感じちゃいました。」と言われ、見抜かれるもんだなぁと思いました。
態度や表情は相手に伝わってしまうんです。
せっかく伸びしろである改善点を指摘してくれるのに、もったいない時間になってしまうわけです。
先輩や上司が指摘してくれたら、なぜ指摘してくれたのか?わざわざ時間をとってアドバイスをくれたのか?
そこを理解できると素直に受け取れるようになっていくと思います。
③素直にやってみようという姿勢がある
教わり上手は、アドバイスされたことに対して、うまくいくかどうかはわからないけど、とりあえずやってみようという姿勢を持っている人が多いです。
教える側としては、結局、アドバイスした後に行動してみてくれたかどうかが重要です。 教える時間を取っても、何も行動が変わらないのであれば、時間の無駄になってしまいます。 うまくいかなくても、行動してくれたら、教えた甲斐があると思えれば、今後もアドバイスをしようと思えます。
私のお客様先に介護施設を経営されている会社様がいらっしゃいます。その会社に、A所長とB所長がいらっしゃいます。年齢も50代後半で一緒、スキルは同様、物腰も柔らかく部下からも信頼は厚いです。しかし、A所長とB所長で違う点が、新しく教わったことにチャレンジする姿勢です。
二人とも、パソコン作業を難しく感じているのですが、A所長はそれを言い訳にしてしまって、介護施設のPRのためにブログやコラムを作成することができていなく、B所長はそれを言い訳にせず、にやってみようという精神で、1年間頑張り続けています。その結果、見学希望者も増えて、施設の定員も順調に埋まってきています。
やはり良いものは取り入れる、やってみるという精神が結果に繋がるのだと思います。
しかし、変なアドバイスをもらっても、何でもかんでもやってみようとは思えないかもしれません。そういうときは、少しやってみて、うまくいかないと確信したら、素直に断れば良いのです。
「10件試しにやってみました。けれど、うまくいかなかったんです。その原因は、○○だからだと思います。アドバイスいただいたものをさらに改善してみます。」のように、やってみたけど、うまくいかない理由をきちんと相手に伝えるようにしましょう。
④教わったことを具体化できる
先輩や上司から教わったときに、なんとなく理解したけれど、うまく言葉にできない(説明ができない)。という状況はよくあると思います。 教わり上手は、教わったことに対して、こういうことですか?と、具体化して説明できる能力が高いです。
教わり上手は具体化する力が強いのですが、具体化するためにはどうすれば良いのでしょうか? ロジカルシンキングでいうところのwhy so?(なぜそういえるのか?)、so what?(だから何が言えるのか?)のようなチャンクダウン、チャンクアップという手法があるのですが、具体化するためには、チャンクダウンという手法が使えます。
チャンクとは、大きな塊、まとまったものという意味です。
チャンクダウンとは、特定のチャンクである「情報の塊」からさらに細かい具体的なチャンクへと掘り下げて考えることを言います。
ロジックツリーで言うと、より下位の具体的な情報に目を向けるのといっしょです。例えば「パン」について考えている時、より具体的に「フランスパン」「食パン」「菓子パン」と考えていくのがチャンクダウンです。
このチャンクダウンのように教わる内容や指導の内容を具体化し、掘り下げていくようなイメージです。
上司からプレゼンの内容でわかりづらかったと指導を受けた場合、
プレゼンの内容がわかりづらい
→構成の仕方がバラバラだから
→根拠となるデータが乏しかったから
→声の大きさが小さく、伝わりづらかった
→声のトーンが一定で強調したいところがわかりづらかったから
とチャンクダウンを使えば、自分の中で、具体的に細かくしていくことができます。
先輩や上司から教えてもらったときに、意外にその内容が抽象度が高く、わかりづらい場合は存在します。抽象度が高い場合は、なかなかイメージしづらいと思います。
そこで、具体化するために質問を投げかけたり、
例)具体的に〇〇といったケースだとどういう内容になりそうですか?など
自分の中で咀嚼して、教えてもらった内容を言い換えして、確認したり、
例)先輩が教えてくれた●●とは、つまり、〇〇というイメージで合っていますでしょうか?
教えてくれる相手との認識に差が出てしまうと、間違った行動を取ってしまう可能性が出て来てしまうので、認識に差が出ないように擦り合わせることが肝ですが、そのためにも教わったことを具体化し、理解していることを説明できるようにしていきましょう。
教わったことを具体化し、説明できるようになると、今度は教える側になったときに後輩や部下に対して、しっかりと指導できる人間になれているはずです。
⑤教えてくれる人への気遣いや感謝を忘れない
教わり上手は、教えてくれる人への気遣いや感謝を忘れず、きちんと伝えることができる人が多いです。
教える側の立場からすると、教える時間を取っても、何も行動が変わらないのであれば、時間の無駄になってしまう、という話を前述しましたが、教えるという行為は、とても時間が掛かりますし、とても労力がいることなんです。
先輩や上司が部下に教えるのは当たり前。と思われるかもしれません。 教わる側のときの立場から教える側のときの立場へ立場が変われば、見える視点は変わってくると言いますが、教える側になると、教えるのは当たり前でしょ!?とはあまり思われたくないのです。
教える側の労力も考えて、ありがとうございます。と感謝の言葉を言われたら、やはり教えてよかったと思えますし、嬉しいものです。 教わるときは、常に教えてくれる人への気遣いや感謝の念は忘れないように心がけていきましょう。
ここまで教わり上手になるための5つのポイントをご紹介してきました。
教わり上手は、聴き上手ですし、素直にやってみようという行動力がありますし、ありがとうの感謝の気持ちを忘れません。先輩や上司の時間を無駄にしないためにも改めて教わる姿勢を見直してみましょう。
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。