ビジネススキルを新人研修や若手研修で身に付けさせたいと思われる教育担当者の方は多いと思います。
ビジネススキルの中でも、ぜひ初期の初期で伝えていただきたいのが、QCDという考え方です。
QCDとは、以下の3つの英単語の頭文字を取ったもので、
製造業などの生産管理や生産マネジメントで使用されているフレームワークです。
Cost=費用
Delivery=納期
一般的に、品質は、すぐ壊れてしまう低品質なものより、耐久性がある品質が高いものの方が好まれますし、ニーズが強いです。コストは、高いものより、低いものの方が、納期は、遅いより早い方が、ニーズがあるのです。
製造業などの生産管理で使われるといいましたが、すべての仕事に、このQCDという考え方は当てはまるのです。
営業であれば、営業のアウトプット(商品説明やプレゼンテーションなど)の品質が高いか低いかで、契約してもらえるかの成果は変わります。納期も一緒で、お客様からの問い合わせやリクエストに対して、レスポンスが遅くなるよりも、早く対応された方がお客様も嬉しいと思います。
総務人事も一緒でしょう。仮に総務で社内の入社関連や社宅関連、ここ1,2年ではコロナ対策としての従業へのPCR検査やワクチン接種関連の業務としてやっていたとして、クォリティや対応のスピード、支出(コスト)は求められますよね?
基本的に仕事というのは、品質が求められますし、費用について、納期について、求められるのです。 そのため、社会人として初期の初期、早い段階で教えてあげることが大切です。
今回は、新人研修で教えるべきQCDについて、研修時の3つのポイントをご紹介していきたいと思います。
①ビジネスの基本を理解する
まず、新人研修の際にQCDの概念を伝える前に、大前提として、下記をきちんと伝え、理解してもらう必要があります。
それは仕事、ビジネスというのは、「誰かのお困りごとを解決することである」ということです。
みなさんのお仕事も誰かのお困りごとを解決していますよね?
飲食店であれば、お腹を空かせたお客様に美味しいご飯を提供したり、共働きで忙しいお母さん、お父さんが料理する時間がないときに料理を提供したりしています。
誰かが困っている、悩んでいるところにニーズが存在している訳ですね。
これは、新人研修で伝えるべきキーメッセージ(一番重要な核)だと思います。
それを新人さんに理解してもらった上で、QCDについて深掘りをしていきましょう。
②経験学習に基づく演習でQCDを理解させる
QCDは前述した通り、
Quality=品質 Cost=費用 Delivery=納期
の意味です。
新人研修では、まず経験学習のグループ演習に取り組んでもらい、QCDの概念と重要性について理解をしてもらうことをオススメします。
例えば、このような演習です。
日々、新米設定者として、お客様の要望に応えるべく奮闘しています。今回、初めて自分一人で、お客様との接客と設計をしてみたら?と上司から言われ、担当を任させてもらうことになりました。
お客様から、どういった図面を作るべきか?、お客様の予算はどの範囲か?、納期はどれぐらいを想定しているか?などのヒアリングを行い、お客様の望む設計図を作成していただきます。
お客様の期待に応える設計図が完成したら、受注できるという設定です。
お客様にしっかりと漏れなくヒアリングを行うことで、お客様の求めている品質、予算、納期の視点を把握させられる内容にすることで、QCDについて理解を深めてもらえるでしょう。
③自社に当てはめて考える
次にQCDについて、体験的に理解ができたら、 自社のサービス・商品に当てはめて、考えてもらいましょう。このようなワークシートで進行するのがオススメです。
お客様から期待されている品質とは?
お客様から期待されている費用とは?
お客様から期待されている納期とは?
その際に大切なのは、単純に「品質」とは何か?と問いかけるだけではなく、なぜそう思ったのか?といった理由を深掘りさせ、表面的な回答ではなく、具体的な答えを探させることがポイントです。
例.
ベットのマットレス(家具)を購入するお客様が期待している品質とは?
→寝心地が良い、起床したときに疲れがない、数年使っても型崩れがない など。
なぜそう思ったのか?
→起床したときに寝疲れがあって、リフレッシュできるマットレスが意外に少ないから。
→数年使っていると、マットレスの片方側が下がってしまい、型崩れしてしまうときがあるから。
このようなイメージで、なぜそう思ったのか?を考えていくと、具体的になっていくのです。
また期待されているQCDだけではなく、相手の期待を超えるためには、何が求められているのか?を考えてもらっても良いかもしれません。
期待通りの品質を提供するのは、プロフェッショナルとして当たり前といえます。よく感動サービスと言ったりしますが、相手の期待を超えるものを提供することで、感動が生まれるのです。相手に感動してもらえるところまで目指すのがプロフェッショナルといえるでしょう。
相手の期待を超えるために、何が必要か、何ができるかを考えてもらうことで、新入社員たちが自身の仕事の「質」について考えるキッカケになるはずです。
仕事の質を高めるためにも、QCDという考え方は知っておくべきですので、新人研修では、ぜひQCDを抑えたカリキュラムを設計してみてください。
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。