企業活動において重要な仕事とはなんでしょうか?
商品開発でしょうか?製造でしょうか?営業でしょうか?
実際にはどれも重要ですよね?
重要な仕事はたくさんありますが、重要な企業活動のうちのひとつに挙げられるのがマーケティングだと思います。
マーケティングとは、商品やサービスが売れる仕組みを作ることです。
具体的には「市場調査→商品開発→広告宣伝→販売促進→営業・販売」の顧客に商品やサービスを買ってもらうまでの一連の流れを全てマーケティングと言えるでしょう。
経営学者のピーター・ドラッカーは、「マーケティングとは販売を不要にする」と言っているようにマーケティングの理想は顧客に自ら売り込むことなく、顧客の方から「買いたい!」と買いたくなる仕組みをつくることです。
それができたらどんなに嬉しいか。顧客自ら買いたいと思ってくれる仕組みづくりを多くの会社が目指している訳ですが、プロのマーケッターが社内にいるわけでもないので、なかなか難しいものです。
プロのマーケッターにお願いすることやマーケティング経験の豊富な社員を雇うことも有効なアプローチですが、やはり自社のメンバーがマーケティングの基本的な知識やフレームワークを学び、活用できるようになることが大切です。
とくにここ数年ではマーケティングを体感できるビジネスゲームがマーケティング研修として注目を集めています。 しかし、実際のところビジネスゲームはマーケティング研修で役に立つのか?という疑問を持たれる方も少なくありません。
そこで今回はマーケティングを学べるビジネスゲームであるビズストームを参考題材とし、マーケティングの一環である経営環境分析(SWOT分析や3C分析)は学べるのかを考察していきたいと思います。
ビズストームの簡単な流れ
【ストーリー】
あなたはたった1人で起業した社長です。 今まで、食品業界とIT業界の職歴があるので、いずれかもしくは両方の業界に参入するつもりです。 資本金は親戚にも出資をお願いし、10コイン集めました。出資者からは、 「8期で結果を出せ」 と言われています。 ビズストームで8期経営し、出資者が喜ぶ結果を出してください。
ビズストームでは、1期の流れは大きく3つのフェーズ(段階)に分かれています。
「仕事フェーズ」→「販売フェーズ」→「会計フェーズ」です。
①仕事フェーズ
経営カードを使って経営資源を蓄積し、自分が狙う市場に向けてよりよい商品を作ります。 顧客から選ばれるためには競争力(商品力+販売力)を高めていくことがポイントです。
<市場の選択>
成熟市場か成長市場か?大きな市場かニッチな市場か?または複数を狙うのか?を考えます。
<経営資源の配分>
商品生産をして売上をあげるのか?商品力・販売力に投資するのか?人材を育てて企業規模を狙うのか?選択した市場に対して、
限られたお金と時間の中で何がベストな戦略なのか練り上げます。
②販売フェーズ
各市場のお客様がどの商品を購入するか判定します。 大企業の商品にも勝たなければなりません。
③会計フェーズ
売上と利益を計算します。
これが1期の流れで、8期(8回)繰り返します。
ビズストームの詳細ページをご覧いただきたい場合は下記の画像をクリックしてください。
ビズストームから学べること
ビズストームで学べることとしては2つの観点(マーケティング、マネジメント)になります。
マーケティング的な観点からは「市場の選択」の重要性、「競合他社への対応」、「価値をどう創造するか」、顧客から選ばれるための「価格設定」をどうしていくかを考えながら戦略を決めていくため、市場選択、市場調査(市場規模、競合他社の動向)のようなことが体験して学べると思います。
またマネジメント的な観点からは収支管理(利益の仕組み)、経営資源の配分、人材活用、資金管理について考えながら行動を決めていくため、経営のマネジメントが学べます。
さすが中小企業診断士の先生が開発しただけあって、マーケティング、マネジメントといった経営的なスキルの理解が深められるゲームになっています。
一般的な経営環境分析の概要と流れ
経営環境分析を行う流れとしては、下記のような流れで行います。まずはPEST分析や3C分析といったフレームワークを活用して、環境分析を行います。
PEST分析の概要
PEST分析とは、自社を取り巻く外部環境が、現在もしくは将来的にどのような影響を与えるかを把握・予測するためのフレームワークのことです。「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Society)」「技術(Technology)」という4つの外部環境を取り出し、分析対象とします。
・P:Politics/Political(政治面)
・E:Economy/Economical(経済面)
・S:Society/Social/Cultural(社会/文化/ライフスタイル面)
・T:Technology/Technological(技術面)
PEST分析をなぜ行うのかというと、ビジネスは常に世の中全体の変化、つまり「マクロ環境」に大きく影響を受けるからです。自社の環境分析の把握方法として、中長期的に自社の業界を取り囲むマクロ環境を把握、洞察することから始めることが推奨されているのです。
3C分析の概要とポイント
3C分析とは、マーケティング環境分析のフレームワークです。3Cとは、「Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)」の3つの頭文字を取ったもので、マーケティング環境を抜け漏れなく把握できます。
3C分析では、「顧客・市場」「競合」「自社」という3つの要素を分析することで、自社にとっての成功要因を見つけ出していくのです。 「顧客・市場」や「競合」を分析することで外部環境を把握するとともに、自社の強みと弱みを知れば、自社が成功できる要因が見えてきます。 外部環境と自社の状況を客観的に把握することで、自社が進むべき道、採るべき戦略を明らかにすることが3C分析の目的だと言えるでしょう。
PEST分析、3C分析を行い、まとめた情報を活用してSWOT分析で、事実(正しい情報)を解釈し、戦略目標を設定していくのです。
SWOT分析の概要
SWOT分析とは、自社の外部環境と内部環境をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素で要因分析することで、経営・マーケティング戦略を策定するためのフレームワークです。
・強み(Strength)
自社が得意なことや、競合他社に比べて優れている点を分析します。
・弱み(Weakness)
自社が苦手なことや、競合他社に比べて劣っている点を分析します。
・機会(Opportunity)
活用すれば自社のチャンスになるような業界・市場の変化について分析します。
・脅威(Threat)
自社の強みを打ち消したり、自社にとって負担になったりするような業界・市場の変化について分析します。
SWOT分析をしたあとはクロスSWOT分析を実施していきましょう。
クロスSWOT分析は、SWOT分析の結果を以下のように組み合わせて、最適な戦略を導き出すフレームワークです。
・強み × 機会
自社の強みをビジネスチャンスに活かすための戦略を考えます。
・強み × 脅威
自社の強みを活用して、脅威を切り抜けるための戦略を考えます。
・弱み × 機会
機会を活かすために、自社の弱みを克服する戦略を考えます。
・弱み × 脅威
自社の弱みを踏まえ、脅威からくる影響を最小限に抑える戦略を考えます。
ビズストームで経営環境分析は体感できるのか?
ビズストーム内での経営環境分析の例を挙げると下記のようなものが挙げられます。
①3C分析でいう競合調査を行うこと
ビズストームでは市場調査を行うことで市場の顧客数や競合他社(大企業)の動きを調べることができます。 また市場に出ている他の参加者たちの商品力・販売力を見比べることで自社の取るべき選択肢が見えてきます。
自社の商品力や販売力といったものをどう成長させていくのかを考えるには、客観的に競合他社と自社とのギャップ(差)を考える必要があります。 そのためには競合他社(Customer)はどういった強みがあるのか?、どういった戦略(商品力が高い?販売力が高い?)を取っていて、顧客へどういった付加価値を提供しているのかを把握することがとても大切です。
これは実際のビジネスでもまったく同じですよね?
そういった点をゲーム内で体験することで競合他社を調べることの重要性を理解してもらいやすいのがビズストームの特徴です。
②SWOT分析で自社の強み、弱みを考えること
ビズストームでは自社の強みと弱みを考え、自社の競争力を高めるために商品力を伸ばすべきなのか、販売力を伸ばすべきなのかを考えることが必要になっていきます。
また機会と脅威の観点で考えると、ビズストームでは市場の変化が発生したり、環境の変化が起こったりします。
外部要因である自社にとっての機会と脅威について考えることで選ぶべき戦略も変わっていくのです。
実際のビジネスでも市場の変化や経営環境の変化は刻一刻と起こっています。1年前はうまくいったのに今年になったら、うまくいかなくなるということはざらにあります。
定期的に外部環境をリサーチしていくことが自社の強み、弱みをどう活かすのかにつながります。そういった外部環境、内部環境の分析の必要性を強く意識付けできるのがこういったゲームの魅力かもしれません。
マーケティング研修で実施するとフレームワークの紹介とヒット商品を出した企業や成長している企業の事例紹介が多くなります。
(例.スターバックスなど)
知識を増やすことはとても大切ですが、マーケティング研修の入り口(入門)として、身を持って体験させられるビジネスゲームを活用することは有効かと思います。
今回は「マーケティングを体感できるビジネスゲームで経営環境分析(3C分析、SWOT分析)の重要性は学べるのか?」をテーマにゲームでの研修効果について考察していきました。
結論、こういったビジネスゲームだからこそ、経営環境分析の重要性を体感でき、腹落ち感(納得感)を持って研修を受けさせることができるのです。 ゲームを通じて、座学で学んだことを再理解させることができますし、研修の入り口として実施することでマーケティング研修へのモチベーションも高まるはずです。 ぜひ参考にしてみてください。
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。