社内講師が、研修中に「困ったチャン」と遭遇したら、どう対応すべきか?

社内講師が、研修中に「困ったチャン」と遭遇したら、どう対応すべきか?

社内講師が、研修中に「困ったチャン」と遭遇したら、どう対応すべきか?

みなさんの会社でも、多かれ少なかれ社内で研修を行うことが多いと思いますが、 あまり講師経験がない社内講師の方も、中にはいらっしゃると思います。

私も研修講師になり立ての頃は、うまくいくかどうか、受講生が喜んでくれるかどうかなどヤキモキしたものです。

今回は、研修中の「受講生への対応」にフォーカスをし、考察していきたいと思います。 ※組織コンサルタントの堀公俊氏著の『チーム・ビルディング―人と人を「つなぐ」技法』を参考資料としてご紹介します。

受講生の研修中の態度を聴く姿勢と発言量のマトリックスで表すと、このような形です。


・聴く姿勢〇、かつ、発言の姿勢〇
・聴く姿勢〇、だが、発言の姿勢×
・聴く姿勢×、だが、発言の姿勢〇
・聴く姿勢×、かつ、発言の姿勢×

聴く姿勢と発言の姿勢

基本的に聴く姿勢が〇だった場合、研修進行の妨げにならないため、受講生の大きな問題にはなりませんが、聴く姿勢が×だった場合、他の受講生のノイズ(雑音)になってしまいますので、対処が必要です。

よく人事の方や教育担当者の方からお聞きする「聴く姿勢×」の研修で見かける困ったチャンの特徴をあげたいと思います。

困ったチャンの受講態度の例


・「無理矢理参加させられています感」を表に出す
・目立ちたがり屋で自分が仕切りたく、ヒトの発言を遮る
・実はコッソリ仕事している
・高圧的な態度で相手の意見を否定する
・評論家気取りで批判的なことしか言わない
・沈黙したままで発言しようとしない
・自分の価値観や意見を押し通そうとする
・自分の価値観を相手に押し付けようとする
・モチベーションが下がりきっていて、下を向いている
・グループワーク時に愚痴ばかり言っている

ここ最近はオンライン研修も増えてきていますので、こういった声も頂戴します。
・いつのまにかビデオオフにしている
・通信が悪いふりして、研修から出たり入ったりする
・自宅で飼っている犬、猫がうるさくしないように相手をし始める

堀公俊先生の著書でチームビルディングの内容ではありますが、
グループワーク時や研修中で見かける困ったチャンの特徴をまとめると、3つのタイプに分類できるそうです。

独善タイプ

このタイプは、威圧的な雰囲気を出し、他人の意見を聴かずに、自分の考えが正しいと思い込んで強く主張するタイプです。

例としては、このようなタイプの人たちです。


・自分の主張や考えにこだわり、絶対に曲げない、とても頑固
・発言を独占する、繰り返し同じことを強調して話す
・役職等の権力を振りかざし、自分の意見を聞いていればいい、という態度を取る
・自分の意見が通らないと、黙る
・反対意見を言わせないような雰囲気を醸し出す
・他人の意見を聴かない、他人の発言をさえぎる
・グループワーク時に常に仕切ろうとする

このようなタイプは、自分がすべてをコントロールしたいというタイプですので、研修中では、 必要以上にはしゃいだり、脱線させたりして、コントロールしようとするタイプです。

屈折タイプ

このタイプは、自分は周囲に認められていないといった感情を抱きやすい人で、承認欲求が強いタイプです。また、相手への伝え方としては、ストレートに物事を伝えず、権力や権威の力を借りて、反論してくるタイプです。

威圧的な雰囲気を出し、他人の意見を聴かずに、自分の考えが正しいと思い込んで強く主張するタイプです。

例としては、このようなタイプの人たちです。


・自分の主張や考えにこだわり、絶対に曲げない、とても頑固
・発言を独占する、繰り返し同じことを強調して話す
・役職等の権力を振りかざし、自分の意見を聞いていればいい、という態度を取る
・自分の意見が通らないと、黙る
・反対意見を言わせないような雰囲気を醸し出す
・他人の意見を聴かない、他人の発言をさえぎる
・グループワーク時に常に仕切ろうとする
・腕組みをずっとして、しかめっ面、首を横に振る

こういったタイプは、反抗的な態度を取ることで、自己の存在意義を確認する人が大半だそうです。 また、責任を問われるのが嫌で、保守的に評論家タイプになるのが特徴的です。

閉鎖タイプ

このタイプは、自分に自信が持てず、積極的に参加せず、のらりくらりと躱していくタイプです。

例としては、このようなタイプの人たちです。


・話し合いの最中、ほとんど発言せずに聞いているだけ
・自分があたらなければいいやという、事なかれ主義
・表情もほとんど変わらず、何を考えているのか分からない
・発言する勇気が持てない
・引っ込み思案、優柔不断
・意見を尋ねても、適当にはぐらかす、あいまいな発言多い
・周りの雰囲気に合わせて、意見や態度をコロコロと変える
・他人の意見や発表した内容にぶら下がり、乗っかるだけ

こういったタイプは、そもそも研修に前向きではなく、何事もなく、無事に研修が終わってくれれば良いという人が多いです。

独善、屈折、閉鎖


研修時の困ったチャンの対処法 5つのポイント

研修時の困ったチャンの対処方法としては、 事前準備と研修中の両方で抑える必要があります。

①ルールを明確に示す

研修中のルールや約束事をあらかじめ提示し、なぜそれが必要なのか?をきちんと解説することで、受講生に対して、納得を持って、進めることができます。

(例)研修中のルール
・他人が発表中は、聴く姿勢をつくる
・グループワーク時に拍手を行う
・全員がグループワーク時に発表する
・他の人の意見を頭から否定批判をしない
・挨拶、返事を元気よく行う

こういった研修中のルールを伝えるのも1つの手ですし、受講生に研修中のルールを考えてもらい、発表させるというのも有効な方法です。

ルールを書いた紙を必ずどこか見える場所に貼りだしておき、ルール破りを発見したら、目で受講生に合図したり、ルールを指し示しながら、「みなさんでこういったルールを決めましたよね?」と口頭で注意をするなどして、いろいろな方法で気付いてもらうように促しをすることが有効です。

②研修の受講環境を整える

研修の受講環境を整えることで、困ったチャン的振る舞いが抑制されるように準備することも有効です。

例としては、以下のようなものです。


・役職者の上位者と下位者を各グループで、ランダムに着席させる
・発言時間を決めて、順番に発言させる
・トーキングボールを渡して、ボールを持っている人が発言できるようにする
・発表や発言ではなく、付箋に意見を書いてもらう

③自尊感情を満たす

相手の自尊感情を満たすためには、その人の意見や言い分をしっかりと受け止めて、尊重するのが重要です。「この人は、ちゃんと自分の意見を聴いてくれている」と実感できるようにすることです。例えば、最後まで話してもらい、「おっしゃりたいことは○○ということですね?」と最後に要約して、確認することやこちらからアドバイスを求めることなどです 。

④根回し(1対1で話し合う)

新入社員や若手などで、受講態度があまりよろしくない場合などは、叱ること、注意をすることも大切ですが、仮に管理職などの上司や年齢が上の方の場合は、注意しづらいと思います。

その際、例えばですが、「部長が発言しすぎていて、みんなが黙ってしまう時間が多くなっているように感じたのですが、どう感じられますか?試しに、今からのワークでは、みんなの発言を辛抱して聞いてもらって、意見を聴きとってもらえるでしょうか?インタビュアーに回ることで、いろいろな意見が引き出せるのは部長だけだと思いますし、色々出てきて部長も楽しめると思いますよ」といったような具合です。

ここでは、非難するのではなく、客観的なフィードバックを行い、気付かせてあげること。また相手のために、グループのために、という気持ちを持って、伝えないと反発を招きかねませんので、注意が必要です。

また仮に1対1で根回しすることが難しい場合は、「受け答え」で対応する必要があります。
仕切りたがる人は、仕切りたがる理由があるのです。だいたいは仕切ることが、自己表現の1つであり、自分の存在を認めてほしいからです。もし、仕切りたがる人に「話し過ぎです」、「黙ってください」といっても反発を生むだけです。
そういった仕切りたがりの人に良く使われるのが、「褒め殺し」です。仕切りをしてくれる素晴らしさや頭の回転の速さなどを徹底的にほめた後で、みんなとペースを合わせることをお願いすると、落ち着けて、話を合わせようとしてくれます。本人の欠けている部分を直接指摘するのは避け、相手が困ったチャン状態から気持ちよく、抜け出してくれるように受け答えで支援していくことが大切です。

⑤議論・意見を書き出す

グループで出た議論や意見をホワイトボードに書き出すことは、視覚的に相手を安心させることができます。「自分の意見が取り上げてもらえた」という満足感も得られますし、きちんと研修内容を理解しているのかの理解度を測ることもできます。他にも、各自に付箋を渡し、模造紙やホワイトボードに貼りだしてもらうというやり方も有効です。 引っ込み思案であまり意見を言わない人も付箋に書き出すことで、自分の意見を伝えられます。


研修中に出てくる困ったチャンは、意外や意外、必ず一人や二人はいるものです。
社内講師の方、社外講師の方に限らず、研修中に困ったチャンの対処に迫られるときの心構えとして、5つのポイントのうち、1つでも参考にしていただければと思います。

【執筆者情報】
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。

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