そこで今回は「ありがとうカード」は社内ツールとして、効果的か?どうかについて考察していきたいと思います。
ありがとうカードとは
ありがとうカードとは名刺大の大きさの紙や付箋紙などに社員同士で感謝の気持ちを書き合い、相手に感謝を伝える(渡す)ためのカードです。サンクスカードと呼ばれることもあります。
感謝の気持ちを「ありがとう」とすぐに伝えられれば問題ありませんが、その場にいなかったり、あとから他の人に聞いて知ったりと時間が経ってしまうこともあります。また人によっては「ありがとう」と面と向かって、伝えるのが苦手な人でも手紙、カードであれば伝えやすいこともあるでしょう。
※ありがとうカードのイメージ図は下記の画像です。
画像出典:株式会社ユーズフル様ブログ(http://useful-meal.co.jp/news/?p=38)
ありがとうカードの導入事例
ありがとうカードやサンクスカードといった、感謝を伝えることをサービスにした内容を 提供している2社様のサイトから引用して、導入事例のご紹介としたいと思います。
https://gratica.jp/cases/persol-wd.html
https://thanks-gift.net/case/max50/05762/
上記以外にも調べるとたくさん出てきますのでぜひ一度検索してもらいたいのですが、
導入してうまくいっているポイントとしてはコミュニケーションの活性化にありそうです。
例えば、リモートワークが増えてきた中での業務上のやり取りで御礼を伝えたり、 「ありがとう」を伝えるタイミングを逃してしまったりした際にこういったサービスを活用することで、 コミュニケーションを取るキッカケになり、チームワークが高まっていく効果が期待できそうです。
ありがとうカードのメリット/デメリットとは
ありがとうカードのメリットは以下のようなものが挙げられると思います。
メリット
・コミュニケーションの活性化
・モチベーションの維持
・企業文化の醸成
・感謝以外のメッセージも送れる
コミュニケーションの活性化は前述のとおりですが、 モチベーションの維持にも役に立ちそうです。
仕事をしている中でモチベーションの源泉の1つに承認欲求や帰属欲求というものが挙げられます。 「ありがとう」と伝えられると嬉しくなりますし、感謝を伝えることでお互いの存在を認め合うことに繋がるのです。
次にありがとうカードのデメリットですが、下記のようなものが挙げられます。
デメリット
・集計の負担になる
・余計な気を使い負担に感じることがある
・形骸化して無駄になる可能性がある
・マンネリ化する
・気持ち悪いと感じる人もいる
先程、ご紹介したアプリを使用すると集計の負担は減りますが、 アナログ的にやろうとすると集計は大変です。
実際に私が前職時代にありがとうカードを社内で担当していたときは、 枚数がそれなりに多かったので、集計が苦労しました。 ほかにも字が汚い人や名前の書き忘れだと集計に手間取ったのを今でも覚えています。
また「ありがとう」と感謝を伝える内容がだんだんなくなり、マンネリ化したり、形骸化してしまったりすることが良く見られます。 3ヶ月の壁と言われることも多いですが、3ヶ月でだんだん飽きてやらなくなる人も増えてきます。 そうならないための仕組みづくりが大切です。
ありがとうカードの効果について
以前のコラムで「感謝の力」について、ご紹介させていただきました。
あらためて簡単にご紹介すると、日本だけでなく、世界中でも「感謝」について研究されています。 その研究の結果、感謝の力というのはプラスな効果、ポジティブな効果が得られると言われています。
下記に3つほど、ご紹介します。
①感謝と心拍数の関係性について
感謝と心拍数について調べたMcCratyらの研究結果が存在します。 グラフの横軸の0秒から100秒までは頭の中でフラストレーションが感じることを思い浮かべてもらったときの心拍数です。100秒以降は、頭の中で感謝の気持ちを考えると、非常に穏やかな気持ちになり、心臓の動きが穏やかになっています。
②感謝と脳のアルファ波の関係性
感謝と脳のα波の関係性を表した図です。左側の方が基本的なもので、何も思っていないときです。 右側が頭の中で感謝してもらったときで、薄い色ほどα波が出ているようです。 非常に薄いアルファ波がたくさん表示されていることがわかりますが、非常にリラックスした気持ちになるということもわかってきています。
③感謝に関する介入研究
Seligmanらの研究もとても興味深いものがあります。 この研究は、参加者たちが「以前ありがたい、いいことをしてもらったにも関わらず、明確に感謝の気持ちを伝えていなかった人たち」に対して、手紙を書いてもらって、それを実際に相手の前に行って手紙を読んでもらうという実験です。 その結果、幸福感が増し、抑うつが減り、1ヶ月間ぐらいはその効果が続いたという結果が出たそうです。
普通の手紙を書いてもらった場合と比較して、実際に感謝の手紙を書いて相手の前で読んだ人たちは、やった直後の幸福感が非常に高まり、1ヶ月後まで普通の手紙を書いた場合より、優位な幸福感に差があり、幸福感が1ヶ月間も持続することがわかったようです。
参考:コラム「感謝の力を侮るな!今、改めて注目されている感謝の持つ力とは」
上記の内容からも相手に感謝を伝える「ありがとうカード」は効果的だと思います。 感謝をする側も感謝をされる側も「ありがとうカード」を送り合うので、なぜ感謝を伝えてくれたのかがわかり、 相手がどういった行動をすると喜んでくれるのか?を考えるキッカケになります。
そういった点からもコミュニケーションの質が高まり、チームワークが良くなっていくでしょう。
今回は感謝の気持ちを伝える「ありがとうカード」は効果的かどうかについて考察していきました。 コミュニケーションの量も質も高まり、人間関係の改善につながる可能性もありますので、 社内のコミュニケーションを活性化させたい場合は、ぜひ参考にしてみてください。
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。