有名人やスポーツ選手も、うつ病や適応障害になるなど、ニュースや新聞でも心の病気について、記事が出ていますので、目にすることも多いのではないでしょうか?
私自身、2年前にパニック障害のように、過呼吸に陥ったり、ある環境に行くと汗が止まらなくなったり、少々、大変な時期がありました。
仕事でも、プライベートでも、こんな気持ちになったことはありませんか?
・仕事で失敗して、お客様からのお叱りがきつくつらくなった
・上司との人間関係で折り合いがつかず、ストレスに感じる
・何もかもうまくいかないと感じ、自分はもうだめだと感じてしまう。
など、心が病んでしまうことも、人にはあると思います。
そんなときにパッと、「心理学」という言葉が思い浮かんだりすると思います。
心理学は、一般的な人間心理の法則を、実験を通じて、科学的に解明しようとする学問で、実験心理学など、とも言われています。それに対して、心の問題を抱える個人(クライエント)の援助、治療を目的に行うのが臨床心理学です。
今回は、疲れて、病んだ心の治療方法である心理療法をご紹介したいと思います。
人類に共通した心理を明らかにするのが目的の学問。
実験や実証を重んじる
一人ひとりの個人的な心の問題を治すのが目的。
→その方法としての心理療法が存在している。
<心理療法の狭義的な目的>
治療者との治療契約に基づく対人関係を介して患者の認知、行動、感情、身体感覚に変化を起こさせ、症状や問題行動を消去もしく は軽減すること。
パーソナリティー障害や重度の神経症、うつ病などの疾患に対して多く用いられます。心理療法を行う人を心理士、心理療法家、セラピスト、カウンセラー等と呼びます。
つまり、心理療法とは、心理的な原因から来る疾患や心的障害を治療する方法です。
クライエントの治療方法には、投薬による治療と心理療法の2つが存在します。
心理療法には、いくつか種類がありますが、今回は5つの心理療法が存在します。
心理療法をご紹介
①フロイトが創始した「精神分析」
②行動主義の考えを基盤とした「行動療法」
③ロジャーズの「クライエント中心療法」
④エリスの「論理療法」
⑤認知心理学を基盤とした「認知療法」
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①精神分析
クライエントの無意識を意識化させて、心の問題を解決する。自由連想法や夢判断などが存在します。 精神科医であったフロイトが、患者の治療のためにとった主な心理療法を自由連想法と呼ばれています。自由連想法とは、患者をソファーに寝かせ、リラックスさせた状態で心に浮かんだことを話させ、抑圧された無意識の内の願望や衝動を明らかにしていく方法です。
例えば・・・
患者:ソファーに寝かせ、リラックスした状態で、待つ
フロイト先生:「今、何を感じますか?」
患者:「森が見えて小鳥が飛んでいきます、飛んでいくのは空、空は青い、青いのは海、海は水、水は流れていきます」
フロイト先生:「それは○○という意味です。あなたは、○○について悩んでいるんですね」
と、フロイトが患者の言葉を解釈する
患者:「なるほど、、、なぜ不安だったのか、わかった気がしますね」
と、患者の不安が解消される
無意識を意識化させて、分析するフロイトの独自の研究が、精神分析として発展していったそうです。
②行動主義の考えを基盤とした「行動療法」
南アフリカ共和国の精神科医、ジョセフ・ウォルピによって提唱された行動療法で、不安に思う事柄に徐々に慣れさせ、不安を取り除いていくものです。ウォルピは、アメリカのベトナム戦争帰還兵に見られたPTSDの症状に接するうちに、この逆制止法と系統的脱感作を編み出したとされています。
逆制止法・・・
不安を引き起こす刺激に対して、安心を引き起こすように訓練をして、不安を消去していく心理療法です。
間違った条件づけによる学習を、訓練によって、新しい条件付けに変え、行動を変化させる療法です。
例えば、犬をみると、恐いと感じる人がいたとしましょう。
刺激(S) 反応(R)
犬を見かける → 反射的に「恐い」と感じてしまう。
※上記のSとRは、刺激反応説:stimulus-response theoryのS,Rです。
犬を見かけると、恐いと感じてしまう反応を変更させるために、 犬を見たら、すぐに3回深呼吸して、リラックスをし、安心感を得るように訓練をすることで、 反応の条件を、意図的に変更していきます。
刺激(S) 反応(R)
犬を見かける → 3回深呼吸をする → 安心
犬を怖がってしまう理由は、恐怖という感情の条件づけをされてしまっているからです。 恐怖ではなく、安心という反応になるように、条件づけのやり直しを意図的に変更できるように訓練して、感じる反応を変化させていくのです。
系統的脱感作は、逆制止法をさらに段階的に恐怖心や不安を段階的(系統的)に消去していく治療法です。
犬であれば、小型犬から恐怖心を無くしていき、中型犬→大型犬→超大型犬と、徐々に(段階的に)恐怖心を消去していく方法です。
系統的脱感作は、強迫性障害や恐怖症を改善する方法の主流と言われています。
③ロジャーズの「クライエント中心療法」
アメリカの心理学者のカール・ロジャーズが提唱した技術で、クライエントの考えを無条件に肯定しながら、クライエント自身が問題解決するのを助ける療法です。ちなみにクライエント中心法では、患者ではなく、治療はあくまで自分自身で行うものであるので、クライエントという呼び方をしています。つまり、クライエント≠患者だそうです。
ロジャーズは、「心的ストレスの原因は、自己概念と実際の体験の不一致にある」と考えました。この不一致、つまり、自己認知の歪みのある状態のことを「心理的不適応状態」と呼ぶそうです。
例えば、
「自分は体力もあり、知力もあり、強い人間だ!」と思っている人が、生まれて初めてお化け屋敷に行ってみて、怖い体験をしたとしましょう。
『自分は強い』という自己概念と、『恐怖を感じた』という実際の体験では、心理的に不一致している状態と言えます。この状態にあると、自分が自分ではないように感じてしまったり、自分に自信が持てなくなってしまう可能性があるのです。
しかし、人は強く、成長していく生き物です。人によっては、自己認知の歪みを直し、自己実現(自分の個性の発揮)をしようとする機能があらかじめ備わっており、ロジャーズは、この力を手助けするためにカウンセラーがクライエントに答えを与えたり、指示を与えたりするのではなく、クライエントが自分で問題を解決していくことの援助に専念すべきとしています。
④論理療法
論理療法は、アルバート・エリスが提唱したものです。ABC理論が有名です。 以前、ご紹介したコラムをご参照ください。
以前のコラム:思い込みによって、行動が変わってしまう?行動を促すために必要な認知行動療法とは-エリスのABC理論
⑤認知心理学を基盤とした「認知療法」
アメリカの精神科医のアーロン・ベックは、うつ病患者の認知的歪みを修正する「認知療法」の創始者と言われ、エリスの論理療法をさらに踏み込んだ心理療法を取り入れました。一時的な気分の落ち込みよりも症状の重いうつ病の治療に取り入れました。
ベックは、うつ病患者が物事の悲観的な側面ばかりに目を向ける癖があることの自動思考に着目をしました。
自動思考とは、状況に対応して非常にすばやく、自分の意志とは関係なく自動的に湧き出る思考です。例としては、
・白黒思考(100か0で極端に考える)
(例) 1つでも失敗があれば他がうまくいっていても全て失敗と同じだ。
・べき思考
(例)集合時間には、かならず10分前に来ているべきだ。
患者特有のこうした認知の歪みを、カウンセリングを重ねながら、修正しようとする心理療法を認知療法というのです。さらにベックは、この認知療法に行動療法を取り入れ、認知行動療法を生み出しました。
心理療法の技法
心理療法の技法は大きく分けて以下の4つに分けられます。
1つ目、面接相談法・・・論理療法、クライエント中心療法など、治療をする者と患者が一対一で行う方法です。
2つ目、表現活動・・・箱庭療法、音楽療法、遊戯療法などクライエント(患者)自身による表現活動から治療を目指すもの。
3つ目、行動療法・・・系統的奪還作法、自律訓練法、催眠療法など学習理論に基づき行動を改善させる方法になります。
4つ目、折衷的技法・・・様々な理論や技法を使って治療していくものです。内観療法や森田療法などが代表例で挙げられます。
参考書籍のご紹介
前述の内容は、下記2つの書籍を参考にご紹介をさせていただきました。
『図解 心理学 用語大全』
監修:齋藤勇氏
編著:田中正人氏
イラスト:玉井麻由子氏
『面白いほどよくわかる!心理学の本』
著者:渋谷昌三氏
私のような初心者でも面白く、参考にできると思いますので、ぜひご覧ください。
今回は、心理療法の種類について、ご紹介しました。 時代の変化や技術の変化、価値観の変化によって、心の病気になってしまう人が増えてきています。私も一度、落ち込んだ経験があります。誰しもが心の病気になってしまう可能性がある時代だからこそ、一度は、心理学に関する本を読んでみてはいかがでしょうか?
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。