毎年のように発生、発覚してしまう企業不祥事、コンプライアンス違反、取れているようで取れていないのがリスクマネジメントではないでしょうか?
(かくいう当社もどこまでリスクマネジメントが徹底できているかですが・・・苦笑)
今回は、鉄塔ゲームから学ぶリスクマネジメントのコツをご紹介していきたいと思います。
・リスクマネジメントとは
・リスクマネジメントができていなかったときの最悪なケース
・鉄塔ゲームの簡単な流れ
・鉄塔ゲームで起こり得るリスクの例
・鉄塔ゲームから学ぶリスクマネジメントのポイント
そもそもリスクマネジメントとは
リスクというと、危機や危険といったイメージが強いですが、定義上は「目的に対する不確実性の影響」とされることが多いようです。
リスクには、マイナスな影響を指すだけではなく、、プラスな影響を指すこともあります。両方あるのですね。
リスクマネジメントとは、予測される経営上のリスクを事前に把握するための管理手法です。 リスクマネジメントを徹底することにより、重要な機会損失を防いだり、低減させたりすることができます。
プロジェクトにとってマイナスになるリスクは予防し、プラスになるリスクは積極的に活用するようマネジメントするのがリスクマネジメントの目的です。
企業内で発生する可能性があるリスクとは
企業内で発生するリスクには様々なものがあります。
債務超過・経営不振
新規事業・設備投資の失敗
株価の急激な変動
市場ニーズへの対応失敗
従業員・顧客・取引・株主からの賠償請求
顧客・取引先への対応失敗
契約紛争
知的財産・商標に関する分増
地域会社との関係悪化
巨額申告漏れ
コンプライアンス違反
安全配慮義務怠慢による事故・自殺・発病
外国人の違法雇用
社員の集団離職・ストライキ
インサイダー取引
個人情報漏洩
SNS不適切発言による炎上
社員・役員のスキャンダル
マスコミ対応の失敗
社内不正 など
この他にも、各業種や企業規模ごとリスクが発生します。
リスクマネジメントと危機管理との違い
危機管理とは、実際に生じてしまったトラブルや問題に関して、事態がそれ以上悪化しないように状況を管理すること。
リスクマネジメントとクライシスマネジメントとの違い
クライシスマネジメントとは、「危機は必ず発生する」という前提のもとに、危機管理を行うこと。一方、リスクマネジメントは、「危機を未然に防ぐ」という考え方をもとに、危機管理を行うものです。
危機の発生確率は低いものの、その中には会社にダメージを与えかねない天災なども想定されます。もし天災が発生したら企業活動にも多大な影響が出るでしょう。そのためにもリスクを最小限に抑える施策が不可欠となるのです。
リスクマネジメントができていなかったときの最悪なケース
過去の企業不祥事を挙げるとこのようなものが挙げられます。
・雪印乳業の事例
雪印乳業の乳製品で食中毒が発生、その後の対応及び子会社の食肉偽装事件が絡み、同社グループは解体。
・カネボウの事例
粉飾決算が明らかになったカネボウは上場廃止となり、その後解体
現在は新会社となっております。
・レオパレスの事例
レオパレス21は、そもそもの設計ミスや建築基準法の改正に対応していなかったために、3つの法令違反が見つかり、合計約43億円に上る損失が発生することを公表(参考:東京経済オンライン)
リスクマネジメントの対応がし切れなかった場合、企業不祥事は公表されてしまう可能性が高いのです。 その結果、裁判沙汰になったり、損失が大きくなったりしてしまう可能性があるのです。
フジサンケイ危機管理室のサイトによると、2022年だけでも、
企業不祥事、つまりリスクマネジメントがし切れなかったものを挙げると2022年8月末時点で、83件も報道されているとしています。
(ただし過去の案件が裁判となった例も含めています。)
https://www.fcg-r.co.jp/research/incident.html
1年経たない間でこれだけの不祥事が存在していることに少し驚きましたが、 報道されていないものも含めると実はもっと多いのかもしれません。
やはりリスクマネジメントを意識し、不祥事は必ず暴かれることを認識し、リスクを防ぐための取り組みを考えることがまずは大切なのではないでしょうか?
今回、ご紹介する鉄塔ゲームではプロジェクトマネジメントの中の1つでもあるリスクマネジメントについて、対策を練っていただくシーンがありますので、その部分についてご紹介していきたいと思います。
鉄塔ゲームの簡単な流れ
まずは鉄塔ゲームの流れについてご紹介していきます。
鉄塔ゲームとは、チームごとに分かれ、お客様から依頼された『鉄塔』を玩具のブロックを使用し、作り上げるゲームです。 順位を決めるポイントは、お客様のニーズを満たしているか? それを踏まえ、当初、計画を立てたスケジュール・コスト・品質で、きちんと作り上げたかどうかを競い合い、優勝を決めます。
ゲームの流れ
●フェーズ1
まずは、お客様からの情報をもとに見積書と設計書および施工計画書の作成を行います。
●フェーズ2
次に、お客様へ見積書と設計書、施工計画書を踏まえて、プレゼンテーションを行います。
●フェーズ3
最後に玩具のブロックを使い、設計書通りに施工を行います。
事前の計画(見積書、設計書、施工計画書)と実際の施工(鉄塔建設)と差異が少ないことがポイントです。
詳細は下記のページを参照してください。
鉄塔ゲームご紹介ページ:https://business-games.jp/projectmanagement_game/
鉄塔ゲームで起こり得るリスク例
鉄塔ゲーム内で起こり得るリスクの例を挙げると下記のようなものが挙げられます。
①災害が起きても倒れないかどうか?
鉄塔ゲームでは、お客様のリクエストの中にこのようなものが出てきます。
この情報はお客様へヒアリングしないと得られない情報なのですが、 鉄塔を作る際のリスクを想定しておかなければいけないと導き出せない内容です。
ほかにもこのようなリスクが挙げられます。
②部品や道具が市場で不足してしまう
鉄塔ゲームでは、扱えるパーツ(部品)や道具の個数に限りがあります。
もし自分たちのグループが使用と思っていたパーツが他グループに取られてしまった場合、 施工できずに急遽、見積や設計とは違うものになってしまう可能性があるのです。
他グループがどういった設計を考えていて、どの部品を使おうとしているのかを考えて行動計画を立てないと失敗してしまう可能性が高まるのです。
実際の仕事でも同様のことが言えると思います。例えば、木材や鉄材の価格高騰や 半導体不足など、調達(仕入れ)のリスクを考えなければいけないですよね? ここは調達マネジメントの一種ですが、調達リスクを考えておく必要があるのです。
③納期遅れが発生してしまう可能性がある
鉄塔ゲームでは、試作品を製作する際にお客様の希望の工期というものが設定されています。
この情報もまたお客様へヒアリングしないと得られない情報なのですが、 鉄塔を製作する際の工期や納期といった期限を意識しないと納品遅れになってしまいます。
実際の仕事でも納期遅れは大問題になってしまいますよね? クレームにつながったり、訴訟に繋がったりする可能もあります。
※ほかにもいくつかのリスクが想定されますが、ここでは良く出てくるリスクについてのみご紹介しておきます。
鉄塔ゲームから学ぶリスクマネジメントのポイント
ゲームが終了したら、その後は振り返りや講義の時間になります。 鉄塔ゲームを題材にリスクマネジメントの流れや気を付けるべきポイントを講義の際に理解してもらうことが大切です。
リスクマネジメントの一連のステップはこのようなものです。
リスク・マネジメント計画
↓
リスク特定
↓
定性的リスク分析
↓
定量的リスク分析
↓
リスク対応計画
↓
リスク・コントロール
※ただし、ゲームの講義内で上記の流れを全て解説しようとすると膨大な時間が掛かってしまうため、自社内では省いてもよさそうな箇所であれば、省いていきましょう。
鉄塔ゲームでリスクマネジメントを体感してもらうために大切なのは「リスク」を意識してもらうことです。
・仮にそのリスクを放置してしまった場合、どんな影響があるのか?
など、リスクに関係する事柄を受講生に考えていただきます。
リスクマネジメントではリスクマネジメント計画を初期の段階で検討していきしますが、
どういったリスクがあって、どういった影響があるのかを想定しないと計画や対応策が検討できません。
画像出典:CrowdLog「リスクを捉え、未然に防ぐ!PMBOKリスクマネジメントの基礎知識と実施作業を徹底解説!」
そういった発生し得るリスクをまずは意識して、洗い出してもらうことがリスクマネジメントにおいて、重要なポイントなのです。
鉄塔ゲームは原則、2期~3期行いますので、2期目、3期目にどういったリスク対応策を取るのか?を考え、計画を練り直し、PDCAサイクルを回していただくのです。
鉄塔ゲームでは、だいたいのチームが1期目には上手にリスクマネジメントが取れません。
しかし、2期目、3期目とやっていくうちにあり得るリスクを想定し始め、対策を練り、リスクを未然に防げるようになるのです。
リスクマネジメント研修などを実施される際は、鉄塔ゲームなどの体験型ワークを導入してみてください。
なぜ、オススメかというと、リスクマネジメントを取らなかったときにどういった悪影響があるのか?を体感できるからです。
リスクマネジメントは取るべきだ、やった方が良いと思っていても、最悪なケースを体験しない限り、行動に移せないのが人間心理なのではないでしょうか?
保険も一緒かもしれません。例えば、地震保険に入っていた方が良いと思っても、地震にあう可能性。地震で、家が倒壊してしまう可能性よりも、保険料を払い続ける費用の方が高く感じてしまって、なかなか加入に踏み切れない。そんなケースと似ていると思うのです。
鉄塔ゲームに限らず、演習や体験型のワークを実際にやってみることで、リスクマネジメントのポイントや重要性について受講生に理解してもらうことができるはずです。
今回は鉄塔ゲームから学ぶリスクマネジメントのコツについてご紹介してまいりました。 業務上、何かしらのリスク対策をしていく必要があると思いますが、なかなか着手きれしなかったり、対策の必要性を組織内で浸透しきれなかったりすると思います。
その際は、鉄塔ゲームなどの体験型のワークに取り組んでもらって、リスクマネジメントの重要性を理解してもらい、実際に取り組むべき施策について話し合っていきましょう。ぜひ参考にしてみてください。
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。