このスケジュールマネジメントは納期に関係することですので、これができているかできていないかによってプロジェクトは成否に変わってくると言われています。
今回は、鉄塔ゲームから学ぶスケジュールマネジメントのコツをご紹介していきたいと思います。
・スケジュールマネジメントとは
・鉄塔ゲームの簡単な流れ
・鉄塔ゲームで起こり得るタイムロスの例
・一般的なスケジュールマネジメントのプロセス
・鉄塔ゲームから学ぶスケジュールマネジメントのポイント
スケジュールマネジメントとは
プロジェクトマネジメントの学問書にPMBOK Guideというものが存在します。
そのPMBOK Guideは大きく「フェーズ」「5つのプロセス群」「10の知識エリア」で構成されており、「スケジュールマネジメント」は「10の知識エリア」の1つであり、納期管理に関する領域として紹介されています。
スケジュールマネジメントとは、納期管理のための考え方で、プロジェクト目標の必須項目として挙げられる「納期」を遵守するために、スケジュールの管理を行う活動の事を指すのです。
鉄塔ゲームの簡単な流れ
鉄塔ゲームの流れについてご紹介していきます。
鉄塔ゲームとは、チームごとに分かれ、お客様から依頼された『鉄塔』を玩具のブロックを使用し、作り上げるゲームです。 順位を決めるポイントは、お客様のニーズを満たしているか? それを踏まえ、当初、計画を立てたスケジュール・コスト・品質で、きちんと作り上げたかどうかを競い合い、優勝を決めます。
ゲームの流れ
●フェーズ1
まずは、お客様からの情報をもとに見積書と設計書および施工計画書の作成を行います。
●フェーズ2
次に、お客様へ見積書と設計書、施工計画書を踏まえて、プレゼンテーションを行います。
●フェーズ3
最後に玩具のブロックを使い、設計書通りに施工を行います。
事前の計画(見積書、設計書、施工計画書)と実際の施工(鉄塔建設)と差異が少ないことがポイントです。
詳細は下記のページを参照してください。
鉄塔ゲームご紹介ページ:https://business-games.jp/projectmanagement_game/
鉄塔ゲームで起こり得るタイムロスの例
鉄塔ゲーム内でのタイムロス、(つまりスケジュール管理がうまくいかない原因)を挙げると下記のようなものが挙げられます。
①想定よりも部品(パーツ)が集まらず、探すのに時間が掛かる
鉄塔ゲームでは、部品を調達していく動きをしなければいけませんが、部品には数に限りがあります。資源が無限ではないように部品も無限には存在しません。 ゲーム開始後、仮に他チームと部品が被ってしまった場合、目標個数の購入ができず、代替品を探す必要が出てきます。 その結果、想定していなかったことが起こり、タイムロスにつながるのです。
②使いたい工具(道具)を他チームが使っており、借りるまでに時間が掛かる
扱えるパーツ(部品)に限りがあるように使える工具(道具)の個数にも限りがあります。
もし自分たちが使おうと思っていた工具が他チームに取られてしまった場合、施工ができずに待たなければいけなくなる可能性もあります。
③お客様の納期を把握できず、納期が守れない
鉄塔ゲームでは、試作品を製作する際にお客様の希望の工期というものが設定されています。
この情報もまたお客様へヒアリングしないと得られない情報なのですが、 鉄塔を製作する際の工期や納期といった期限を意識しないと納品遅れになってしまいます。
実際の仕事でも納期遅れは大問題になってしまいますよね?納期遅れはプロジェクトの失敗といえるので、そういったことにならないように情報をきちんと吸い上げる必要があるのです。
一般的なスケジュールマネジメントのプロセス
ゲームが終了したら、その後は振り返りや講義の時間になります。 鉄塔ゲームを題材にスケジュールマネジメントの流れや気を付けるべきポイントを講義の際に理解してもらうことが大切です。
一般的にスケジュール・マネジメントは以下のプロセスが存在します。
①スケジュール・マネジメントの計画
スケジュール・マネジメントの計画は、プロジェクト全体の進め方や方針を定義するプロセスです。 スケジュール作成にあたり、基準項目を記載した「スケジュール・マネジメント計画書」の作成を行います。
②アクティビティの定義
アクティビティの定義は、ベースとなるスケジュールから「どのようなアクティビティが必要なのか」を確認し、それらのアクティビティの内容を決めていくプロセスです。
③アクティビティの順序設定
アクティビティの順序設定は、アクティビティの前後関係に注目し、作業順序を設定するプロセスです。
④アクティビティの所要期間の見積り
アクティビティの所要期間の見積りは、各アクティビティに必要な稼働時間を見積もるプロセスです。 技法としては、「類推見積り」「パラメトリック見積り」「三点見積り」「ボトムアップ見積り」などがあります。
類推見積り
類推見積りとは、過去のデータを参考に見積りを行うことです。参考にする主なデータは以下の通りです。
・予算
・規模
・重量
・複雑さ
この類推見積りは、意識しなくとも日常的に実施していることが多く「あの時にこのくらいの時間(費用)がかかったから、今回もこのくらい必要だろう」というような過去の経験に基づく見積り法です。
パラメトリック見積り
パラメトリック見積りとは、係数見積りとも呼ばれ、過去のデータを基にしてパラメーター(変数)を設け、プロジェクトやアクティビティのコストや所要期間を見積る技法のことです。
例えば、おにぎりを100個作る時間を見積る場合を考えてみましょう。
過去に20個を40分で作成したという実績があった場合、1個につき、必要とする時間は2分であると考えられます。そうなるとおにぎりを作る時間は以下のような計算式で推計されます。
おにぎりを作る所要時間 = 2分 × おにぎりの個数
この計算式にあてはめると、おにぎりを100個作るためには200分、つまり3時間20分かかる計算となります。このように、過去のデータを使って式を組み立て、所要期間やコストを見積るのがパラメトリック見積りです。
三点見積り
三点見積りとは、プロジェクトの作業時間や、その作業の金額を楽観値、最可能値、悲観値の三点から見積る手法のことです。
三点見積りでは、以下の計算式で見積りを行います。
(悲観値+4×最可能値+楽観値)÷6
例えば、とある作業の工数をチーム内で話し合っているとします。
メンバーの大多数は「5日で終わる」と考えていますが、その作業を不安視している人は「10日はかかる」と見積り、楽観的に考えている人は「3日で終わる」と見積ったとします。
この場合、三点見積りでは以下のように作業工数を見積ります。
(5日+4×10日+3日)÷6 = 8日
このように、三点見積りでは様々な意見を組み合わせて、より妥当性の高い見積りを出すことができます。
ボトムアップ見積り
ボトムアップ見積りは、システム開発プロジェクトに関する見積り方法の1つです。
ボトムアップ見積りでは、ワーク・ブレークダウン・ストラクチャー(WBS)をもとに見積りを行うのが一般的です。WBSに含まれている各アクティビティの工数を見積り、それを合算して全体の見積りを作成するため、納得性の高い見積りができます。デメリットとしては、すべてのアクティビティに対して細かく見積りを行うので、時間がかかるということです。
⑤スケジュールの作成
スケジュールの作成は、上記の「アクティビティの定義」「アクティビティの順序設定」「アクティビティの所要期間の見積り」などをもとにスケジュールを作成するプロセスです。
⑥スケジュールのコントロール
スケジュールのコントロールは、作成したスケジュールと実績をチェックし、遅延や問題を管理するプロセスです。
鉄塔ゲームから学ぶスケジュールマネジメントのポイント
スケジュールマネジメントのポイントには、以下のようなものがあります。
目標設定
プロジェクト全体の目標を明確にし、その目標に対して必要なタスクやステップを定義することが重要です。目標が明確でない場合、スケジュールを設定することが難しくなります。
タスク分割
プロジェクトを小さなタスクに分割し、それぞれに対して期日を設定することが重要です。この際、タスクの優先順位や依存関係を考慮して、期日を設定する必要があります。
期日の設定
タスクごとに期日を設定する際には、現実的かつ達成可能な期日を設定することが重要です。期日が短すぎる場合は、品質や効率が損なわれることがあるため、期日を設定する際には現実的な見通しを持つことが必要です。
マイルストーンの設定
プロジェクトの進捗を管理するために、重要なタスクやステップをマイルストーンとして設定することが重要です。マイルストーンは、プロジェクトの進捗状況を把握する上で重要な役割を担います。
スケジュールの可視化
スケジュールを可視化することで、全体の進捗状況を把握しやすくなります。ガントチャートやカレンダーなどを活用して、スケジュールを可視化することが重要です。
リスクマネジメント
スケジュールに遅れが生じた場合に備えて、リスクマネジメントを行うことが重要です。リスクの発生に備えたアクションプランを策定し、リスクに対処することでスケジュール遅延を最小限に抑えることができます。
以上が、スケジュールマネジメントのポイントになります。プロジェクトの進捗状況を把握し、期日を守りながら品質を確保するために、これらのポイントを意識して取り組むことが重要です。
基本的に納期を守る事ができないプロジェクトは失敗と言わざるを得ないでしょう。納期を守るための取り組みはプロジェクトの成否を左右するのです。
そんなスケジュール・マネジメントを学ぶには鉄塔ゲームが役に立つのです。
※ただし、ゲームの講義内で上記の流れを全て解説しようとすると膨大な時間が掛かってしまうため、自社内では省いてもよさそうな箇所であれば、省いていきましょう。
鉄塔ゲームでスケジュールマネジメントを体感してもらうために大切なのは「納期」や「時間効率」、「ムダムラ」を意識してもらうことです。
・仮にそのロスを放置してしまった場合、どんな影響があるのか?
など、スケジュールがコントロールしきれないケースや事案を受講生に考えていただきます。スケジュール管理が難しくなる場合に業務工程を見直し、スケジュールを修正していく方法や対策を考えてもらうことができます。
鉄塔ゲームに限った話ではありませんが、演習や体験型のワークを実際にやってみることで、スケジュールマネジメントのポイントや重要性について受講生に理解してもらうことができるはずです。
今回は鉄塔ゲームから学ぶスケジュールマネジメントのポイントについてご紹介してまいりました。 プロジェクト化されたものでなくても、どのような仕事でも納期は存在します。
仕事の納期を守るために、なぜスケジュール管理が必要なのか?をきちんと理解してもらうことが会社の成果につながっていくはずです。その際は、鉄塔ゲームなどの体験型のワークに取り組んでもらって、スケジュールマネジメントの重要性を理解してもらい、実際に取り組むべき施策について話し合っていきましょう。ぜひ参考にしてみてください。
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。