経験学習的観点からも研修効果が期待できるインバスケット研修とは?

経験学習的観点からも研修効果が期待できるインバスケット研修とは?

経験学習的観点からも研修効果が期待できるインバスケット研修とは?

研修効果を高めるために大切なことの1つは実践(経験)です。実践することで仕事の進め方やマネジメントの仕方について理論的にだけでなく、実務的にも学ぶことができるのです。実践形式の研修で有力なのがインバスケット研修というものです。

今回はそのインバスケット研修についてご紹介していきたいと思います。

そもそもインバスケット研修とは


インバスケット研修は、設定人物になりきって、業務上起こり得る案件を制限時間内にできる限り多く処理していく研修です。 そもそもインバスケットとは、限られた時間の中でより多くの案件を処理するワークです。もともとは、1950年代に訓練の結果測定をするためにアメリカ空軍が開発しました。「インバスケット」という言葉は、大きな箱の中に未処理の案件が雑多に詰め込まれている状態を意味しています。

イメージとしては、メールの受信BOXの中にある未読メールを処理していくようなものです。 ワークでは数多くの案件が用意されており、優先順位を付ける能力と、素早く処理していく能力が求められるのです。

インバスケット研修のメリット/デメリット


インバスケット研修のメリットを挙げると、3つ存在します。

メリット①:リーダーとしてのビジネススキルが実践形式で学べる


インバスケットはもともと管理職への昇級、昇格試験といったアセスメントの場面で使われることが多くありましたが、今では教育研修ツールとして使用されています。

インバスケット研修で得られる主なスキルや能力は、主に5つ存在します。

(1)問題解決力の向上
(2)判断力と決断力の向上
(3)主体性と自主性の醸成
(4)業務に対する視点と観点の多角化
(5)優先順位を設けるスキルの習得

様々なタスクを抱えながら、目標達成や改善の結果を出す責任(役割)を持つ管理職やリーダーには、こういった能力が必要不可欠です。

インバスケット研修を体験し、振り返ることでこういった能力が今の自分に備わっているのかどうかがわかりますし、自分自身の強み弱みを

メリット②:受講生が受け身的な研修にならない

インバスケット研修は、受講者それぞれが役割を与えられ、自発的に考えて行動に移していく演習形式の研修です。そのため、一方的に講師の講義を聴くだけの研修とは異なり、主体的に研修に参加することが求められます。そのため、インバスケット研修の受講者の集中力やモチベーションが高く保たれやすいというメリットがあります。

メリット③:客観的に自分の思考の癖がわかる


インバスケット研修においては、講師やグループメンバーからの助言によって、自分の導き出した結果を客観的に評価することが可能です。自分の思考の癖や改善すべき箇所を客観的に見つめることで、自分の強み弱みを把握することにもつながります。また他の受講者の思考プロセスや判断を参考にできるため、選択肢や行動の幅が広がることにもつながるでしょう。

次にデメリットを列挙すると下記のようなものになります。

デメリット①:案件数が多く、現実離れしているところがあり、やる気が削がれる可能性がある


インバスケット研修の内容は少し複雑です。また1時間のうちに10案件も20案件もこなすという時間設定が受講生にとって無理難題に覚えてしまい、現実離れしているところがあります。その結果、途中でやる気が削がれ投げ出してしまう人も出てくるかもしれません。もちろん、インバスケット研修は複数案件の優先順位を付けることが大切なので、研修設計上、仕方がありません。その点をあらかじめ理解してもらうよう開始前に共有しておきましょう。

デメリット②:案件の内容によって受講生が受けづらいものもある


インバスケット研修の案件が受講生の業種や職種によっては案件の仕事内容のイメージがわかないという悩みが出でくるかもしれません。仕事のイメージが沸かず、案件処理をどう考えれば良いのかわからないと悩まれることも多少出てくると思います。 そうならないためにも職種にあったものを選択するか、あらかじめどういった業務内容になるかを読み込みさせてから開始しても良いかもしれません。 インバスケット研修にもメリットデメリットがありますのでそこを上手に設計する必要があるでしょう。

インバスケット研修は研修効果が高いのか?


インバスケット研修は他の研修よりも研修効果は高いのでしょうか?
※ここからは主観も交じりますので、その点ご留意ください。

その答えは「はい」であり、「いいえ」であると思われます。

「いいえ」の理由を挙げるとすると前述のデメリットのようなことが挙げられます。 また、インバスケット研修で主に学ぶ内容がリーダーとして必要な能力が多いため、ある程度、仕事の進め方を理解していることが必要です。

学校を卒業したばかりの新入社員や入社して間もない2年目に受けさせた場合、理解が追いつかず、できない自分に直面し、自己肯定感が下がってしまう可能性が高くなります。

そうならないためにインバスケット研修を受けてもらって終わりではなく、その後の解説や講義の際に「今すぐできたら、苦労はないですから安心してください。今できていない点をきちんと把握することが大切です。これからしっかり学んでいきましょう」と動機付けの声掛けを忘れずに行うことが大切です。

そしてインバスケット研修で実践したことを今度は解説や講義で理論的にも理解してもらうと、研修効果はぐっと高まっていくはずです。研修効果はやはり研修設計の仕方によって変わってきますのでインバスケット研修でも同様に設計の仕方は注意が必要です。

次に「はい」の理由は経験学習的な観点から効果が高いといえます。

経験学習モデルとは、組織行動学者であるデービット・コルブが提唱したもので、人が「経験」から深い学びを得るためのプロセスを示したものです。

経験学習モデル

1.経験


経験とは、その名の通り具体的な経験や体験を指します。普段の業務や研修で言えば、演習ワークのようなものです。本から学んだ知識だけではなく、実践を通して得た経験がさらに成長へと促してくれるのと同じです。自分の判断で行動し、得た結果を受け入れることで、より多くの「気づき」を得ることができます。

2.省察


省察では、経験した後に、その結果を様々な観点から振り返り、内省することです。 経験から得たことを、うまくいった点やうまくいかなかった点の理由について、より深く掘り下げて内面へと落とし込みます。

3.概念化


概念化は抽象概念化と言われ、「経験」「省察」で得た一連の学びを、他の場面でも応用できるように、概念化します。得られた成功・失敗の分析を、自分や自分以外でも、また同様な状況でも応用できるように、持論化するというイメージです。

4.実践


実践とは、能動的実験と訳され、実際に概念化された考え方を、試してみることです。能動的という言葉が付いているように、自ら仮説を持って実践することが大切です

インバスケット研修は設定人物になりきって、業務上起こり得る案件を制限時間内にできる限り多く処理していく研修になりますので、具体的な経験が詰まっています。 この点が、インバスケット研修が効果的だと言われる所以です。

制限時間内に10個から15個の案件処理を行うという具体的経験を得られることで内省できるポイントも多く出てきます。そしてうまくいった点、うまくいかなかった点を省みることで改善点が出てきて、その改善点を教訓化し、実践していくことでレベルアップがしやすくなるのです。

※経験学習について以前ご紹介したコラムがございますので、ぜひ参考にしてみてください。
コラム: 経験学習モデルで研修効果を高める!初めて教育担当者を任せられたら、知っておきたい研修設計5つのプロセス
(https://business-games.jp/jinji_keikengakusyuu/)

上記の点から言ってもインバスケット研修は研修効果が期待できると言えるでしょう。

インバスケットを活用したビジネスゲームのご紹介


最後にインバスケットを活用したゲームをご紹介します。

【概要】
インバスケットカードゲームでは、解決すべき案件ごとに専用のカードを用いて、処理方法について回答を行います。 その際、グループのメンバーと競いながら、専用のカードを取得します。各カードには、発揮した能力が紐づいており、カードを集計することによって、能力の発揮度を知ることができます。また、選ばなかったカードを振り返ることで、ご自身に足りない選択肢の幅を増やすきっかけにつながります。

<インバスケットで発揮したい能力>
・問題発見力
・問題分析力
・創造力
・意思決定力
・洞察力
・計画組織力
・当事者意識
・ヒューマンスキル
・生産性
・優先順位設定力

ゲーム後に上記の能力が発揮できたのか、できなかったかを判断できるため、仕事の進め方の癖を自己理解することができ、 自分自身の長所と短所を理解することで、業務改善に繋げられるのです。

詳しくは下記のページをご覧ください。
インバスケットカードゲーム(中堅・管理職向け)https://business-games.jp/managementcard_manager/ 


今回は研修効果が期待できるインバスケット研修についてご紹介してまいりました。

インバスケット研修では必然的にアウトプットを行わなければいけません。経験学習をもとにした研修になりますので、効果的です。アウトプットしたものについて、自分自身の長所と短所、自身の思考の癖に気付けるのでマネジメントスキルやリーダーとしての能力の醸成が見込めます。
ぜひリーダー向けの研修で活用してみてください。


【執筆者情報】

ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃

研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。

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