ビジネスマナー研修って、今どき必要?ネットで調べればいいのでは?

ビジネスマナー研修って、今どき必要?ネットで調べればいいのでは?

ビジネスマナー研修って、今どき必要?ネットで調べればいいのでは?

毎年、この時期になると、必ずといっていいほど、新卒研修では、ビジネスマナーを入れてほしいというリクエストをいただきます。

比較的、ビジネスマナーを理解している学卒者が多く、 特に就職活動に力を入れてきた学生たちは、面接時の対応、採用担当者とのメール、電話対応などのマナーについて、ネットで調べたり、キャリアセンターで教えてもらったりして、基礎知識は高いようにも思えます。

書籍でも、ビジネスマナーに関連する本は、世の中に五万とあります。

ネットでも何百ページにわたり、存在しています。

マナー研修なんてしなくても、
「単純に本を読ませて、実践させれば、良いのでは?」
という意見も出てきそうですが、

それでも人事ご担当者さまや現場の方々からは、やってほしいという声が多いのが実情です。

なぜビジネスマナー研修は今なお、求められるのでしょうか?

そこで、今回は、「ビジネスマナー研修は必要なのか?」という必要性の有無と、
「意識しておくと、研修効果が高まる3つのポイント」について考察していきたいと思います。

まずは、ビジネスマナー研修の必要性について、
人事、現場、新入社員の三者の視点で、ビジネスマナー研修の必要性を考えてみたいと思います。

ビジネスマナー研修における3人の登場人物

●人事の目線


人事の方の目線で考えると、新卒社員たちのため、現場のため、採用のため、この3軸が考えられると思います。

新卒社員の採用から携わっていることが多く、内定者たちのビジネスマナーの理解度をある程度把握しています。できている人もいれば、できていない人もいます。研修を実施することにより、均一な知識を伝授し、本人たちの不安を軽減させてあげたいという気持ちが大きいのだと思います。

また、現場に配属されたときにも、「出して恥ずかしくない」、「現場から文句を言われない」ようにしたいという心理的な背景があると思います。

最後に、自社にとっての教育体制をきちんと整えるという意味も大きいです。新卒採用では、特に学生から「教育体制は、整っていますか?」と、聞かれることが多いです。しっかりと新卒研修を行っています、と提示できれば学生の不安を大なり小なり軽減させてあげられますので、そういった面からもビジネスマナー研修の必要性を感じていらっしゃるのではないでしょうか。

●現場の目線


現場の受け入れる側の心理として、必要最低限のことは、入社時にやっておいてほしいという気持ちが強いように見受けられます。

私が、現場の方々から聞いたことのあるビジネスマナー研修をやっておいてほしい理由として、挙げられたのが、以下です。

【現場社員が感じる必要な理由】
・挨拶、返事に覇気がなく、元気さがなく、第一印象の重要性を理解してなかったから・・・不動産業の営業
・メールのレスに時間が掛かりすぎているから・・・IT業
・訪問時の身だしなみがなっていないときがあるから・・・法人営業
・SNSを使用するのは良いが、誰のことかわかりそうなときもあってヒヤヒヤすることもあったから・・・Webコンサル業
・現場でゴミが落ちていても、見て見ぬふりで拾おうとしないから・・・建設業
・お客様のメールアドレスを宛先から外すのを忘れて、お客様への愚痴を送って問題になった子がいる・・・人材派遣業    など

人事の方からも結構、聞かれるのが「人事は、ビジネスマナー研修で何やってんの?!」と言われてしまったり、「こんなことも知らないの!?」や「その対応おかしいでしょ!?」と現場社員が感じ、人事へクレームが入るケースも多々あるようです。
(ビジネスマナーとは、直接関係ない内容で指摘をもらうこともあり、困ってしまうケースもあるようですが・・・)

会社側の受け入れ研修で、ビジネスマナーをやってもらい、現場では、職種別の実務研修を行うものだという、役割分担が暗黙のルールが存在してしまっているような気もしますが、現場では、戦力になれるように社会人の基礎土台ではなく、実務に関することから教えていき、時間短縮したいという想いが強いのだと思います。

●新卒社員の目線


新卒社員の目線でいうと、ビジネスマナーに対する不安をすぐにでも解消したいという気持ちが強いようです。実際に、意外や意外、ビジネスマナーの時間は、受講生からかなり質問が出てきます。

真面目な子ほど、敬語や言葉遣いについて気になるのか、とても質問が多いです。営業職など対面で、お客様と接し、名刺交換が必要な子は、名刺交換の仕方についての質問が多いです。それぞれの職種によっても気になる点が変わるのでしょう。

また、特にマナーでは、演習形式で実施することが多いため、やり方は合っているか、こんなときはどうすれば?など、質問が出てきやすいのです。

現場配属になるまでにビジネスマナーを学んで、先輩たちへ失礼がないようにしたいという心情が強いと思われます。


さて、ここまで三者の視点でビジネスマナーの必要性をみてきましたが、三者の関係性を図で表すとこうなります。
※三者がお互いに「こうしてほしい」、「ああしてほしい」という期待していることを図で表現

ビジネスマナーにおける三者の視点

三者の視点から見ても、ビジネスマナー研修は、新卒研修の中でも、求められている期待値が大きく、研修を実施する意義が高いのだと思います。

もし、みなさんの会社で新卒社員が4月に入社されるのであれば、
「ビジネスマナーなんて、研修する必要ないでしょ!?」、「本でも読ませておけー!」と、するのではなく、ぜひビジネスマナー研修の目的とゴールを設定した上で、実施してみてください。


最後に、この三者の関係性をもとに、人事の方がビジネスマナー研修を考える上で、意識しておくと、研修効果が高まる3つのポイントについて考察していきます。

①人事は人事。現場は現場ではなく、現場との協力タッグを組むこと


連携をきちんとされている会社さんは多いと思いますが、いかに人事と現場の協力タッグで、フォローアップの連携を強めるかがポイントです。

現場:「ビジネスマナー研修を行うのは人事の仕事でしょ!?」
↕↕
人事:「配属された後は、現場で育てるのが当たり前でしょ!?」

と仕事の責任のなすりつけ合いをするのではなく、お互いがお互いの視点/立場から、どのようなフォローアップをすれば、新卒社員が爆速的に成長できるか?を考えていかないと、新卒たちが成長していきません。

人事の方々の意識で、薄くなりがちなのが、新卒⇄現場の仲介です。

「配属になったのだから、後は現場に任せた!」では、現場社員たちも、どうフォローしてあげればよいかわからず、戸惑います。現場社員へ、配属される新卒社員の「性格、人柄、フォローの仕方」などをプロファイルしてあげて、現場で共有されるようになると、現場社員たちも安心できます。

下記、①と②のポイントに繋がりますが、現場との連携は、研修効果を高める上では、必須です。

ぜひ、現場に対しての働きかけ方を今一度、見直してみてはいかがでしょうか。

②現場の先輩社員のマナーでの失敗談と教訓を入れること


人事の方々は、現場の声を吸い上げてマナーの内容を組み立てていくと思いますが、 先輩社員たちの経験談を実例として、紹介していくと、現場での注意点がイメージしやすくて、良いと思います。研修テキストに事例として、掲載しておけば、読み返すこともできます。

もし、先輩社員たちの時間が取れるのであれば、せっかくなので、先輩社員たちがミスしてしまった失敗談を研修中に話をしてもらい、インタビュー形式で進めるという方法も有効です。そのとき、失敗談だけでなく、そのときに得た教訓、心得を発表してもらうと、失敗した後にいかに改善していくのか、その重要性に気付いてもらえると思います。

とにかく、現場の先輩社員たちの失敗談と教訓を共有すること。 ビジネスマナーの研修が誰かの失敗談で、他人事になってしまうのを防ぎ、自分にも関係すること=自分事として、受講生のコップを上に向けさせることができます。

③現場へ行った後の新卒社員へフォローを必ず入れること


人事の方が、新卒社員の教育だけでなく、採用を兼務している場合によく起こりがちなのが、配属後のフォローアップがし切れないということです。 気持ち的には、新人たちが仕事に慣れるまで、一人ひとりをフォローしてあげたいという気持ちがあるのと裏腹に、実際には、次の年度の新卒採用を行っているため、現場に任せきるしかないという状態です。

一人ひとりと向き合って、全員に定期連絡を人事側から入れてあげることは、もちろん重要です。 しかし、物理的に難しい場合は存在します。

私の知り合いの会社さんで、面白いフォローをされている会社さんがいらっしゃいました。 2つの事例をご紹介します。

(1)見られている意識を持たせるための内申書作成


それは、現場での新卒社員のビジネスマナーの実践度について、現場の先輩社員に点数付けをしてもらい、内申書を作ってあげて、優秀者たちにはビジネス本をプレゼントするという方法です。
ビジネスマナーは得てして、「誰も見てないから頑張ったところで、、、」、「社外の人だけには気を付ければいいじゃん」になりがちです。 ビジネスマナーに限らずですが、会社から、先輩から、他の人たちから、見られている意識を持ち、緊張感を持たせるということが、研修で学んだことを定着させるためには必要なことなのです。

さらに、その会社さんでは、新卒社員から見た現場のメンター(先輩)社員の内申書を付けてもらっているそうです。お互いの実践度を評価し合うことで、数年経つと、マナーへの意識が薄れてしまうという課題をクリアさせるためにも効果的だそうです。

(2)研修の振り返り動画でフォローアップ


また、別の会社さんで行っていたのは、「親からのビデオメッセージ風に作成して、5分~10分程度の、マナー研修の振り返り動画を各自に送る」というフォローの方法でした。
その会社さんは、動画の冒頭は、最近どうか?風邪ひいてないか?など『親からの手紙』のように、少しコメディチックに作り、途中から、現場で気を付けるべき点、マナーの復習といった真面目な研修の振り返り動画を作成し、LINEなどのSNSで配信していらっしゃいました。

研修の振り返りとして、「テキスト見返しておいてね~」では、確かに誰も見ないと思います。本人たちが研修の振り返りを定期的に行えるようにするために、できるだけ動画を見たくなるような仕掛けをつくるという点がポイントだそうです。

このようにできることはたくさんありますので、自社でできることをあらかじめ作っておくと良いでしょう。


ビジネスマナーは、ネットや本ではわからないこともたくさんあります。
新卒社員の不安を解消するためにも、現場の社員たちの不安や不満を減らしていくためにも、
ビジネスマナー研修や新卒社員の入社時研修を考えられる際は、3つのポイントを意識して、作り込んでいただけると効果が高まっていきます。
ぜひ参考にしてみてください。


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「マナーの達人」

【執筆者情報】
ビジネスゲーム研究所 米澤徳晃
研修会社に入社後、研修営業、研修講師業に従事。その後、社会保険労務士法人で人事評価制度の構築やキャリアコンサルティング活動に従事。その後、独立。講師登壇は年間50登壇を超え、講師としてのモットーは、「仕事に情熱を持って、楽しめる人たちを増やし続けたい」という想いで、企業研修を行っている。

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